テストお疲れ様パーティー
「「「乾杯!」」」
お決まりの掛け声の後、カチンとグラスの打つかる小気味の良い音がする。
————互いに中間テストの健闘を讃えあうその集まりは夜、常春家で行われた。
テーブルの上には所狭しと並べられた料理たち。ピザやローストビーフ、パエリアなどどれもうららお手製のものだ。
「うおっ!? もしかして、これも手作りなのか⋯⋯!?」
呉羽はまだ湯気を放っているピザを見ながら嬉しそうに言った。
「もちろん! 発酵時間も短く調整出来るし、意外と家でも簡単に作れるんだよ。それに、手作りなら好きな具も乗せ放題!」
うららは胸を張り誇らしげに答える。
「すげー! 早速食べても良いか?」
キラキラと赤い瞳を輝かせる呉羽は、待ち切れないようすだ。
「どうぞ。呉羽のために作ったんだから」
「! ⋯⋯いただきます」
呉羽は驚いた後、少し照れ臭そうな面持ちで皿の上に置かれたピザから一切れを持ち上げる。
とろりと溢れそうなほどに載せられたうらら特製ブレンドの数種類のチーズ。その中には、豚肉や挽き肉などの肉類を照り焼きソースと絡めてマヨネーズをこれでもかとかけたものが入っている。
育ち盛りの男子高校生が喜びそうなものをふんだんに盛り付けたピザからは、焦がし醤油とマヨネーズの芳ばしい香りがしてうららの食欲をも刺激した。
ぱくりと照り焼きピザを一口齧るなり、呉羽はぱあっと顔を輝かせた。
「うまっ! うららは料理の天才だな!!」
「え、天才? そんなことはあるかもしれないけど⋯⋯そんなに褒められても何も出ないよぉ~⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯これがもし、毎日食べられたら幸せだろうなあ」
「まあ、こんなものならいつでも作ってあげるよ」
「ほ、本当か⋯⋯!?」
呉羽は嬉しそうにそう言ってはにかんだ。
ジャンクフードを好む呉羽には ピザやフライドチキン、ハンバーガーを拵えた。
一方、魚介類が大好物である百香にはパエリアやカルパッチョ、アヒージョなどを作った。
トマトベースで大きなエビやイカ、あさりなどの魚介類が載せられたそれに、百香はいち早く食いつく。
「うわっ⋯⋯うっま⋯⋯!!」
ほうっと息を吐き出した百香は独り言のようにポツリと呟いた。
「美味しい?」
「⋯⋯! うらら」
「ももちぃの為にいーっぱい作ったからたっくさん食べてね! あっ、もちろんテイクアウトもおけだよっ♡」
「じゃあ遠慮無く」
うららと話している間にも、パエリアを口に運ぶ百香の手は止まらなかった。
(2人とも、喜んでくれてるみたいで良かった!)
うららは満足げに頷く。
パーティーに備えてスーパーに買い出しに行き、それからずっと料理をしていたうららは今日もほとんど寝ていない。
そのため、元気をもらおうと今日も栄養ドリンクのお世話になった。人生で初めての経験から、2度目は意外と早く訪れた。
今は徹夜明けでハイになっている為、元気が漲っているが、きっとパーティーが終わればうららも2人も泥のように眠りにつくだろう。
「「「かんぱ~い!!」」」
3人は本日、何度目か分からないくらいの言葉を交わす。
酒類などは摂取していない筈なのに、酩酊状態である。何故だか頬が熱いし、特に何も無いのにウズウズと楽しい気持ちが湧き上がってくるのだから不思議なものだ。
「うえ~イ! もっと飲め飲め~ィ!」
「何言ってんの、うらら~。アンタはしゃぎ過ぎ。酒でも呑んでんの?」
そう言う百香も、普段は滅多にお目にかかれないにっこにこの笑顔だった。
「な~んか楽しいぞ~??」
虚な瞳の呉羽はよたよたと覚束無い足取りでリビングを歩き回る。
夜通しはしゃぎまくった3人は、いつの間にかリビングで大の字になって寝ていた。
そして、そのまま朝まで一度も目覚めることなく爆睡し、カーテンの隙間から漏れる眩い光と鳥の囀りでようやっと目を覚ますのだった。
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