中間テストの終了とお誘い
2日目は理科、社会、英語の3教科。
数時間の仮眠を取り、再び常春家にやって来た先生方を迎え勉強を始める。
因みに、今回も百香の分単位のスケジュール表を突き付けられ、昨日よりも1科目多いために過密さを増したそれがさらにうららを苦しめた。
「うらら、寝るな! 寝たら人生詰むぞッ」
集中力の枯渇と寝不足から、うららはうつらうつらと船を漕ぐ。しかし、直ぐに一喝する百香の声で現実に引き戻された。
「は⋯⋯っ! あたし、もしかして寝てた?」
「そりゃあもう、ぐっすりと。気持ちよさそうに寝てたわ」
「あはは、ごめんごめん」
そう言いながらふと視線を落とすと、百香の手にはギュッとキツく丸めたノートが握られていた。声をかけても起きなかった場合には、それで容赦なく叩くつもりだったのだろう。
(あ、危なかった⋯⋯)
うららは安堵から小さく息を吐き、再び机に向き直る。
それからは昨日と同じくスパルタ指導の百香と、やたらと甘い呉羽の文字通り飴と鞭に挟まれながら、たまの休憩を取りつつほどほどにスケジュールをこなしていく。
そしてその日、うららは人生で初めての栄養ドリンクを飲んだ。呉羽が差し入れにと深夜、コンビニで購入したものだ。
うららは一息に飲み干す。
(うっわ、あっま⋯⋯!!)
不自然な甘ったるさが舌に残り、無理矢理水で流し込む。しかしながら、疲労回復と栄養補給を謳っている通りに飲んだ瞬間、なんだか身体の奥底からエネルギーが満ち溢れてくる気がした。
「さ、飲んだら勉強再開するよ」
「あと一踏ん張りだ。頑張ろうな、うらら!」
「うんっ!!」
こうして、夜は更けていく———。
ほとんど一睡もしていない一行は、寝不足と勉強で酷使した目には痛いほどの朝日を浴びながら覚束無い足取りで通学路を進むのだった。
✳︎✳︎✳︎
3時限目終了のチャイムが鳴り、シャープペンシルを机の上に置く。テスト用紙を回収し、試験監督の先生が教室を出ると『全てが終わった』ことを実感する。
「おっ、終わったあぁ⋯⋯!!」
思わず、そう声に出していた。
並々ならない達成感からグッと伸びをして、すうっと肺いっぱいに空気を取り込む。うららはようやっと、生きた心地がした。
「お疲れ」
「ももちぃ、2日間ほんっとーにありがとう! どうにかやり切ったよ~!!」
百香から声をかけられ、パッと満面の笑みを浮かべながらお礼の言葉を述べる。
「別に。このままじゃアンタが留年すると思ったから。⋯⋯でも、流石に疲れたあァ⋯⋯⋯⋯」
「あたしがバカなせいで⋯⋯ごめんね、ももちぃ」
「うん、今回のことで改めてアンタの馬鹿さ加減を思い知らされたわ」
「うぐ⋯⋯ッ」
「うららは馬鹿なんじゃない。人よりちょっとだけモノを知らない純粋なヤツなんだよ」
うららが言葉に詰まっていると、横から会話に入ってきた呉羽がフォローを入れる。
「く、呉羽⋯⋯ッ!!」
「⋯⋯感動してるとこ悪いけど、秋月もウチと言ってる事そんな変わらないからね」
「え!! 2人とも酷い⋯⋯」
幼なじみの優しさを痛感した途端、どん底まで落とされたうららはガックリと肩を落として項垂れる。
しかし、それも一瞬のことで妙案を思い付いたうららは直ぐに顔を上げた。
「そうだ!! 2人とも、今日も夜にうち来ない?」
「「え?」」
百香と呉羽は声を揃えて言った。
「うちは今日もどうせ親居ないし、お礼も兼ねて打ち上げしようよ! 2人さえ良ければ⋯⋯だけど」
「それってアンタの手料理付き?」
僅かに期待の色を含んだ瞳で見つめられる。
「もっちろん! ももちぃと呉羽の好きなものなんでも作るよ」
「なら行く」
即答だった。
「呉羽はどうする?」
「行く!!」
呉羽は若干、食い気味に返事をした。
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