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百香と呉羽のスパルタ勉強会③






「ゔわーん⋯⋯!! ももちぃ作のテスト難しすぎぃ⋯⋯っ!」


 やっとのことで数学の公式の暗記を終えたうららは、今度は半泣きで百香が作った小テストに取り組んでいた。

 中間テストで出題される英語の要点を押さえたそれは、授業にほとんど参加していないうららには難し過ぎる。


「終わる気がしないっ⋯⋯!」


 気付けば太陽はすっかり顔を隠してしまい、辺りは薄暗くなっていた。タイムリミットは刻一刻と迫って来ている。

 頭上で煌々と輝きを放つ蛍光灯。その下で泣き言ばかり漏らすうららに百香はぴしゃりと言い放つ。


「終わる終わる。やってれば終わらない課題なんてないから」

「でっ、でもぉ⋯⋯一問目から分からないんだもん⋯⋯!」

「え、そこから?」

「3人称単数って何!? 聞いた事も見た事も無いんですけどっ!?」

「あるある。ってか、泣きごと言ってる暇なんて無いから。アンタはこれからウチが組んだ完璧なスケジュールを分刻みでこなして貰うんだからね」

「ふ、分刻み!? ヒィッ⋯⋯!!」


 百香はぺらりと一枚の紙をうららの目の前に突き付けた。いつの間にか作成されていたA4サイズの用紙にビッシリと書き込まれたスケジュール表。

 あまりの恐ろしさにうららは思わず逃げ腰になる。


「たっ助けて呉羽っ! 呉羽⋯⋯!?」


 すぐ近くにいる筈の幼なじみに助けを求めるが返事は無かった。部屋の中を見回しても彼の姿は見えない。


「呉羽どこ行っちゃったの!?」


 うららが悲痛な叫び声をあげる。

 すると、その時部屋の扉が静かに開いた。


「あれ、うらら。どうしたんだ?」

「呉羽ッ!!」


 探し求めた人物の登場に、うららは思わず飛びつく。



「うっ、うららッ!?」


 自らの脚に巻き付くうららを見た呉羽は顔を真っ赤にして後退る。


「ちょっと呉羽っ! あたしを捨てて逃げる気!?」


 ジロリと睨み付けながらますます力を強めるうらら。呉羽は上擦った声で答えた。


「おっ、俺がうららを捨てる筈無いだろ!? 俺はただ⋯⋯コンビニに行ってたんだ」

「コンビニ?」

「ああ。そろそろ腹減る頃だろ?」


 その言葉でハッと時計を見やる。


(もう8時⋯⋯)


 意識した途端、腹の虫がぐうぅっと鳴る。


「お腹空いた⋯⋯」

「だろ? とりあえず一旦休憩しようぜ」

「うん⋯⋯。ももちぃ⋯⋯」


 うららは百香の名前を呼び、潤んだ瞳で見つめる。

 先ほど、一通り目を通したスケジュール表には休憩はもちろんの事、食事の時間などは一切記載されていなかった。


(お願い、ももちぃ⋯⋯!)


 うららは必死に目で訴えかける。


「⋯⋯⋯⋯」


 無言の百香にも負けず、更に目力を強めてジッと見つめる。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 (おねがい、おねがいっ!!)


 本日一番の集中力を発揮し、百香の顔を凝視する。



「分かった⋯⋯。食べたらすぐ、勉強再開だからね」


 うららの並々ならぬ熱意に根負けした百香はため息を吐きながらそう言った。




✳︎✳︎✳︎




「ももちぃ、呉羽応援してっ!!」

「⋯⋯がんばれ~」

「頑張れっ!!」


 生返事の百香と全力で叫ぶ呉羽。

 対照的な2人を前にして、うららはシャープペンシルを握り締め目の前のプリントと格闘している。



 食事を終えた3人は再びテーブルの上に教科書を広げ、勉強を再開した。

 相変わらずうららには到底理解出来ないような難解な謎の数列に言語、記号が並ぶプリント。


(至センセーの為にも、頑張らなきゃ!!)


 想い人から与えられるであろうご褒美を想像し、うららは今一度気合いを入れる。


 こうして、テスト前日の夜は更けていくのであった。






貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

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