百香と呉羽のスパルタ勉強会①
あれから近くにいた呉羽も巻き込み、うららと百香の3人は常春家にやって来ていた。
しかし、見事道連れとなった呉羽は意外にも乗り気なようで、隣でにこにこと笑っている。
「さっ、お二人ともどうぞどうぞ~!!」
「⋯⋯⋯⋯」
「うららの家に来るの久しぶりだな~!」
未だに不服そうな顔をしている百香とは対照的に呉羽は良い笑顔を浮かべており、これから勉強をするというのに実に楽しそうである。
「あっ、百香さん。靴はあたしが揃えますのでそのままお上がりくださいませ」
「えっ、うらら⋯⋯俺は?」
「呉羽は自分でやって!」
百香に対する媚びへつらった声から、呉羽に対しては幾分か語気を強めたうらら。
呉羽はしゅんと項垂れながらも素直に自身のスニーカーを揃える。その背中にはどこか哀愁が漂っていた。
(呉羽は多少放っておいても大丈夫だよね。問題はももちぃ⋯⋯!!)
うららはこれ以上百香の機嫌を損ねるわけにはいかないと、全力でゴマをする。
ここで帰られてしまえばせっかくの苦労が水の泡だ。彼女の些細な表情の機微でさえ逃すわけにはいかない。
「先生方にはお菓子とお茶を用意しますんで、先に部屋でお待ちください~⋯⋯!!」
へこへこと頭を下げ低姿勢のうららは先生方をもてなす菓子類を調達する為、一人リビングへと向かった。
✳︎✳︎✳︎
「⋯⋯アンタの頭じゃ今から良い点数取るのは諦めるしかない。とりあえず、最低限赤点を回避する方法は教える」
テーブルの上で手を組んだ百香は、神妙な面持ちでそう言った。
いざ勉強会が始まれば百香も思いのほか協力的だ。やはり持つべきものはノリの良い親友だとうららは思った。
(なんだかんだ言ってもやっぱりももちぃは優しいなぁ)
真っ赤なイチゴが乗ったショートケーキとふわりと上品なバラが香る紅茶には碌に手をつける事なく、3人はテーブルの上に教科書とノートを広げる。
「俺は数学と理科」
「んで、ウチが国語と英語、社会」
「時間も無いし、効率重視で絶対に出題されるところだけを詰め込むよ」
「はいっ!」
「今夜は寝かせないから」
「えっ⋯⋯ももちぃ、それって⋯⋯ ♡」
うららはポッと頬を染める。
「ふざけるなら今すぐ帰るけど」
「ごめんなさいっ!! もうふざけません!」
ついいつものノリでボケてしまったものの、百香からじとりと咎めるような視線を向けられたうららはすぐさま許しを乞う。
「今回だけだからね」
「ありがとう、ももちぃ⋯⋯!!」
感極まったうららはギュッと抱きつく。
「2人とも仲良いなぁ~!」
こんな状況でも相変わらず呑気な呉羽は笑顔でそう言った。
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