偶然の演出
思惑通りに至と2人きりの時間を過ごしたうららは、これにより更に大胆な行動に出ることになる。
昨日、帰り道の何気ない会話から聞き出した情報によると、至は週に2~3回歓楽街近辺の見回りをしているらしい。
(センセーの話によると今日もこの辺りを巡回するらしいし、ここに居れば会えるはず⋯⋯!)
幾度かの成功体験によってすっかり調子づいたうららは、今日も至の姿を求めて夜の街を彷徨い歩く。
そんなうららの頭からはテストのことなどはまだ始まってもいないのに、既に遥か彼方の遠い記憶となっていた。
夜も深まり、ネオンの光が一層眩く感じる頃————。うららはようやく探し人を見つけた。
そして、彼の黒色の背中に向かって声をかける。
「あっ! センセー、こんなところで奇遇だね!!」
ビクリと肩を震わせた至はゆっくりと振り返った。
「⋯⋯ああ、常春さんでしたか。まさか声をかけられるとは思ってなかったもので、少々驚きました」
「センセーは今日も見回り? 大変だねぇ~⋯⋯」
「そうですが⋯⋯君はまたこんなところで何をしているのです?」
「あたしは買い物に来てたんだ~! それでぐーぜん⋯⋯それはもう偶然! センセーの後ろ姿を見つけたから声をかけちゃった」
うららはまるでこの出会いが偶然だと主張するように、早口で言葉を紡いでいく。
(ちょっとワザとらしすぎるか⋯⋯? でもでもっ、偽装のためにショッパーも持ってきたし騙し通せるはず!!)
「こんな時間まで買い物、ですか⋯⋯」
そう言いながら、至はうららの手元を見やる。その視線は抱えられている幾つかのブランド物の袋に向けられていた。
「学外での時間の使い方にとやかく言いたくはありませんが、君はトラブルに巻き込まれやすい。頻繁にこんなところを歩き回るのはおすすめ出来ませんね」
「えっ♡センセー、心配してくれるの?」
「当然です。うちの学校の生徒が危険な目に遭わないようにと、僕たち教師が夜間の見回りをしているのですから」
(あたしだけじゃないんかい⋯⋯ッ! まあ、分かってた事だけどね!!)
うららは至の言葉に幾度となく振り回されているものの、今回も懲りずに淡い期待を抱いてしまう。
しかし、此度もそれがお約束だというように期待を裏切られ、一人肩を落とした。
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