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うららの下着事情と固い決意





 うららは暫くの間、自宅前でぼうっと突っ立って至が消えた方向を見つめていた。

 びゅうと夜の冷たい風が吹きつけ、ぶるりとひとつ身震いする。



「はっ⋯⋯!」


(そういえば、あたしのパンツ⋯⋯!!)


 冷気により冴えた思考は、ふっと先程までの気掛かりを蘇らせる。

 そして、再び思い出して仕舞えば、もう我慢など出来なかった。


 碌に街灯の光が照らさない閑散とした住宅街であることと、深夜で人通りが無いのを良い事に、うららは大胆にもその場でワンピースの裾をたくし上げる。

 薄いブルーの膝上ワンピースを一息に捲ってみれば、露わになる白い太ももと待ちに待ったパンツ————。


「!!」


 薄暗さにも大分慣れてきた目をジッと凝らして確認するなり、うららはがくりと項垂れる。

 その光景はさぞや不審極まりなかっただろうが、意気消沈の最中である今のうららには些末なことだった。


(完ッ全に、やらかしたっ⋯⋯!!)


 何度見てみても、うららのパンツは白のフリルがふんだんにあしらわれたシルク生地のもので、現在進行形でうららの絶壁を覆っている淡いブルーのブラジャーとは似ても似つかないものだった。


(いや⋯⋯白も水色も暗闇じゃパッと見同じに見えない事もないし、ワンチャンある、か⋯⋯?)


 うららがどうにか自分を納得させようとしていた時、背後から聞き覚えのある声が聴こえる。


「⋯⋯うらら?」

「っ⋯⋯!」


 不意に呼ばれた自分の名前にぎくりと肩を跳ねさせ、咄嗟にワンピースを摘んでいた指から力を抜いた。

 はらり、とワンピースが定位置に戻るのと同時に背後の気配が近付く。



「くっ、呉羽⋯⋯!」


 大慌てで振り返る。

 声の主は家の前で棒立ちするうららを訝しげな視線で見やる幼なじみだった。スウェット姿で手にビニール袋をげているのを見るに、どうやらコンビニ帰りのようだ。


「何してるんだ?」


 狼狽えるうららを見た呉羽は、不思議そうな顔をしている。

 何故だか彼の赤い瞳に見つめられると、夜闇に紛れて自らのスカートを捲し上げ下着を露出するという変態同然の行為を見透かされている気がした。

 うららは大慌てで握り締めてくしゃくしゃになったワンピースを伸ばし、挙動不審な自分を見て首を傾げる呉羽に、咄嗟に思い浮かんだ言い訳を早口で捲し立てた。


「なっ、何でもないっ! 夜風に当たりたかっただけ!」

「⋯⋯?」

「ほんっとーーに何でもないから! じゃっ、おやすみっ!!」


 うららは吐き捨てるようにそう言って、急いで自宅の扉を開けて玄関に駆け込んだ。

 そして、後ろ手に扉を閉めて一息吐く。


「あ、危なかった⋯⋯。さっきの、呉羽に見られてないよね⋯⋯?」



 しかし、うららにとって今回の出来事は良い人生経験となり今後に活かせるものとなった。


 恋をしたら、何が起きるか分からない。不測の事態に備え、いついかなる場合でも気を抜いてはならないと————。



(これからは何があっても良いように、下着は上下しっかり揃えておかないと⋯⋯!!)


 うららは近い将来に来たる至との一世一代の大勝負に備え、拳をキツく握り締め決意を固めるのだった。






下着ネタは一先ず終わりです。ご不快な思いをされた方がいらっしゃれば申し訳ございません。

リアルさに欠けるとのお声もありそうですが、今回の出来事は割とあるあるだと思います。







貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

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