今日の下着、何だっけ⋯⋯!?
あの後、至の厚意でうららは家まで送って貰うことになった。
二人はアーケード商店街まで戻り、先生たちの歓迎会が行われている居酒屋近くのベンチ前で立ち止まる。
「それでは僕は直ぐに戻って来るので、君はここで待っていてください。いいですか、常春さん。決して、知らない人には着いて行かないように」
「もうっ、センセーはあたしの事を何だと思ってんのっ! そんなの言われなくても大丈夫だよっ!!」
すっかり調子を取り戻したうららは、子ども扱いをする至に食ってかかる。
そして、大袈裟なほどの不満げな顔を作り、心配そうな表情を浮かべて立ち止まる至の背中を軽く押した。
至が店の暖簾をくぐったのを確認したうららは、空を仰いで思い耽る。
(センセーと一緒に帰れるなんて夢みたい⋯⋯)
うららはベンチに座って緊張を紛らわせる為にブラブラと足を遊ばせる。そして、はたと思い当たった。
(こっ、これはもしかしたら、もしかするのでは⋯⋯!? あたし、至センセーとついに今日⋯⋯っ!!)
うららは至のあられもない姿を想像し、足をジタバタさせて悶える。一頻り妄想の中の至を堪能した後、ハッと我に返った。
「下着、大丈夫かな⋯⋯⋯⋯」
頬を染めたうららはボソリと呟き、ワンピースの胸元を引っ張って本日の下着を確認する。通行人を気にしつつも盗み見た下着は、淡いブルーにワンポイントで小さな青いリボンのついた控えめで可愛らしいものだった。
(よしっ、かわいい! 取り敢えず、これなら至センセーに見せても大丈夫! あっ⋯⋯そういえば、パンツの柄って同じだったっけ!?)
安心したのも束の間、自身が身に付けているパンツの柄をすっかり失念したうららは、至に上下バラバラの下着は見せられないと途端に真っ青になる。
(今すぐ確認したい、でも————)
ちらりと周囲の様子を窺う。
夜も更けたとはいえ、まだまだ人通りが多く賑わう商店街。大抵の事は気にしないうららでも、この場でいきなりスカートをたくし上げ、パンツを確認する勇気は無かった。
「どっ、どうしよう⋯⋯っ!?」
(この下着は確か、セットで買ったはず!? それなのに、上下バラバラなのは格好が付かない⋯⋯っ! あたしの大事なハジメテがっ!!)
思わず声を上げたうららは、立ち上がってわなわなと震える。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも無いよっ! あたしのパン————」
パンツが、と言いかけて声の主を確認したうららは慌てて口をつぐむ。声をかけて来たのは、僅かに息を切らした至だったからだ。
「パン⋯⋯がどうかしたんですか?」
「せっ、センセー! 早かったね⋯⋯!?」
「ああ、はい。皆さんもう直ぐお開きにするみたいでしたから。⋯⋯それよりも、パンとは? 大分焦っていたみたいですが大丈夫なんですか?」
「あっ、あはは~⋯⋯。え~っと、明日の朝ご飯のパン買ったかなっていきなり不安になっちゃって⋯⋯?」
うららは瞳をうろうろと彷徨わせながら苦し紛れの言い訳を並べる。
「? それなら良いのですが⋯⋯」
至は挙動不審なうららに些か訝しげな視線を向けながらも納得したようだ。うららは安堵からホッと息を吐く。
(⋯⋯ってか、下着もそうだけどあたし汗臭くないかな!? それに、あたしはももちぃみたいな巨乳じゃないし、脱いでガッカリされたらどうしよう⋯⋯? なんか急に不安になってきた⋯⋯⋯⋯)
人心地付いたかと思えば、次から次へと新たな不安が芽生える。
うららは目下の不安を解消するため、至に気付かれないようさりげなく匂いを確認した。
(う~ん⋯⋯臭く無いよね? 念のため、香水しとこうかな)
これまでの経験から杞憂だと頭では理解していても、ほんの僅かな期待と無限に繰り広げられる妄想をやめる事は出来なかった。
「では、帰りましょうか」
「う、うん⋯⋯っ!」
至の声に弾かれるようにして、うららは緊張の面持ちでベンチから立ち上がる。
その時のうららは、さながら死地へと赴く武士の如し佇まいで覚悟の炎をゆらゆらと碧の瞳に携えていた。
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