うららの背後のヤバい奴。
「は~な~し~て~~っ!!」
うららは教室に入ってからも尚、握った手を離さない呉羽の顔をもう片方の手で押し退ける。クラスメイト(主に女子)の視線がグサグサと刺さり、一刻も早く呉羽から離れたかった。
しかし、呉羽はムッと顔を顰めて首を振る。
「嫌だ。うららが俺の話を聞いてくれないから行動で示すしかないんだろ?」
「⋯⋯なんていうか、流石幼なじみ。似たもの同士だよね⋯⋯⋯⋯」
うららと呉羽の顔を見比べながら百香はげんなりした顔で言った。心外極まりないと、うららはその言葉にすかさず反論する。
「ちょっと、ももちぃ!? どういう事!? あたし、こんなにしつこくないんだけどっ!!」
「⋯⋯側から見ればこんなモンよ、うららも」
「そっ、そんなあ~⋯⋯」
✳︎✳︎✳︎
「あっ! 至センセー!!」
授業の合間の休み時間、うららは教材を抱えて国語準備室に向かう至の姿を見つけた。
(久しぶりの至センセーだっ! 呉羽の作戦が失敗して以来、なんか気不味くて昼休みに会いに行けなかったんだよね⋯⋯。でも、このままじゃセンセーとの距離は縮まんないし⋯⋯。頑張れ、あたしっ!!)
うららは腰が引ける気持ちをどうにか奮い立たせ、至を追いかける為に教室を出る。
そして、乱れる髪もお構い無しに早足で歩く至の背中に向かって声を張り上げた。
「いっ⋯⋯至センセーっ!!」
うららの声に気付いた至は足を止めて振り返る。
「! ああ、常春さん」
「はぁっ、はあ⋯⋯⋯⋯」
一年に一度有るか無いかの全力疾走をお披露目したうららは、息を切らしながら立ち止まる至の前で膝に手をつき、必死に肺に酸素を取り込む。至はそんなうららを心配そうに覗き込んでいる。
「常春さん⋯⋯? そんなに急いでどうしたんですか?」
「ちょ、ちょっと待って⋯⋯!」
咄嗟に引き留めたは良いものの特に用がある訳では無い為、うららは酸欠でぼうっとした頭を必死に働かせる。
「あっ、えっと⋯⋯⋯⋯」
とりあえず時間を稼ごうと顔を上げて口を開く。
しかし、久しぶりの至の顔を直視出来ず、うららは視線を彷徨わせる。走ったせいなのか、至のせいなのかは分からなかったが、頬が上気し今にも顔から火が出そうだった。
(ど、どうしよう!? あっ、そうだ⋯⋯!!)
「あのっ、あのね! あたし、また————」
(また、昼休みに準備室行ってもいい?)
うららが意を決してそう言いかけた、その時————
「⋯⋯うらら?」
あと一息、というところで今一番聞きたく無い人物の声が聞こえて来る。ぎこちない動作で振り返ると、そこにはうららの予想通り、呉羽が立っていた。
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