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クレーンゲームの匠と、小さくてカワイイうさぎさん。





 うららがケバブサンドとチーズハットグをぺろりと平らげた後、腹ごなしにとゲームセンターへ訪れた二人。

 その頃には呉羽もいつもの調子に戻り、楽しむようすを見せる。

 天井から止め処なく降り注ぐBGMに不思議と耳に残る機械音、騒めく人々の声————。この場所特有の喧騒が、非日常さをより一層掻き立てうららと呉羽の気分を高揚させていた。



「わっ! これかわいい~~っ!!」


 ぺたりとクレーンゲームのクリアガラスに両手を張り付けるようにして、碧い瞳をキラキラと輝かせるうらら。その中には小さくてカワイイと評判のキャラクターのぬいぐるみが所狭しと詰め込まれていた。



「欲しいの?」

「⋯⋯うん」


 うららの視線は黄色いうさぎへと一心に注がれている。


「取ってやるよ」

「えっ、呉羽取れんの!?」

「うん、多分」


 そう言った呉羽は制服のポケットから財布を取り出し、コイン投入口に100円玉を入れて真剣な表情でターゲットへと視線を落とす。


 1回目、アームが落とし口から遠く離れたところに鎮座している黄色いうさぎを捉え、ゆっくりと落とし口に向かって運ぶ。

 しかし、順調に進んでいるかと思えば、不意に揺れた衝撃で絶妙な表情を浮かべるうさぎはポトリと落下してしまった。

 

「あー! 惜しいっ!!」


 興奮したうららが思わず身を乗り出すと、コツンと呉羽の肩に触れてしまう。

 それにより集中力が切れてしまった呉羽は、真っ赤な顔で声を荒げた。


「ちょ、うらら!? ちっ近いって!!」

「何を今更⋯⋯。この前はこれ以上近付いて来たくせに」


 うららは先日の呉羽の部屋での一件を思い出し、目を細める。あの時とはまるで別人のように動揺の色を見せる呉羽に、うららの中の悪魔がキシキシと笑い『揶揄ってやろう』と囁いた。



「あ、あれはその場の勢いで⋯⋯なんというか、その⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯ふうん? 誰にでもああいう事するんだ? 呉羽も大人になったなぁ~」

「そっ、それは違っ————」


 もごもごと口籠る呉羽は動揺して手元が狂ったのか、2回目の挑戦では落とし口に近付いたと思ったうさぎが反対側に倒れてしまった。


「あ~~っ!! ⋯⋯あたしのうさぎ、が⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯取ってやるからちょっと静かにして」

「はあい⋯⋯」


 少しだけ揶揄うという目標を達成したうららは想像以上の呉羽の反応に満足し了承の返事をした。

 再び真面目な顔付きになった呉羽は危なげない手つきでボタンを操作する。



 うららが固唾を呑んで見守る中、3回目、4回目と少しずつだが落とし口までの距離を詰めていく。

 そして遂に、5回目の挑戦————。

 地道に押し出した結果、グラリと傾いたうさぎは吸い込まれるように取り出し口へと落下した。


「わっ! マジで取れた! これはモテるよ、呉羽⋯⋯」


 うららはわっと声を上げてぴょんぴょんと飛び跳ねた後、感慨深い表情で今回の功労者である呉羽を見やる。

 呉羽は屈んで取り出し口から黄色いうさぎのぬいぐるみを優しく抱き上げてうららの前に差し出した。


「はい、どうぞ」

「⋯⋯っ! ありがと!!」


 念願のうさぎのぬいぐるみを受け取り、満面の笑みを見せたうららは今にも奇声を上げて動き出しそうなうさぎを両手で持ち上げて、足取り軽くステップを踏みクルクルと踊りだす。

 そして、一頻り騒いだ後、大切そうにうさぎのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。


「もふもふかわいいーっ! 呉羽最高! 大好きっ!!」

「⋯⋯うん」


 呉羽はそんなうららを蕩けるような笑顔を浮かべて見つめていた。







小さくてカワイイうさぎさん、そのままですが元ネタを分かってくだされば嬉しいです。




貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

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