表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/76

呉羽の想い①




「う、うらら⋯⋯実は、俺————」

「⋯⋯⋯⋯?」


 うららが追想にふけっていると、真剣な顔をした呉羽が口を開いた。



「————す、す⋯⋯すすす」

「⋯⋯すすす? 何なの?」


 真面目な話かと思いきや、真っ赤な顔をして『す』以外の言語を失ってしまった呉羽。一向に進まない話に痺れを切らしたうららは続きを催促する。

 その間にも熱に浮かされた瞳で見つめられ、居た堪れない心地になったうららはふいっとあからさまに呉羽から視線を逸らした。



「す、す————⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯いや、何でもない⋯⋯⋯⋯」


 赤くなったかと思えば途端にさあっと青ざめた呉羽はガックリと肩を落としてそう言った。



「なんか今日の呉羽可笑しくない?」

「⋯⋯⋯⋯うららには言われたくない」

「はぁ!? あたしが可笑しかった事なんて一度も無いんだけどっ」

「はいはい⋯⋯」


 幾分かいつもの調子を取り戻した呉羽は、ベッドから降りて絨毯が敷かれた床へと腰掛ける。うららもむくりと起き上がり、漸く呉羽が離れた事に密かに息を吐いた。



「⋯⋯⋯⋯それで? うららが好きな奴って誰?」

「え~♡⋯⋯聞きたい?」

「⋯⋯聞いて欲しいんだろ?」

「それはそうだけどっ! 心の準備ってのがあるじゃん?」


 そう言いながらもここに来た本来の目的を果たす為、うららは深呼吸をしてから口を開く。


「あたしが好きなのは————」

「⋯⋯⋯⋯」


 静まり返った部屋に、ごくりと呉羽が唾を呑む音が響いた。



「冬木⋯⋯至センセー、だよ⋯⋯」

「っ!!」


 至の名を耳にした瞬間、呉羽は大きく目を見開いた。

 百香の事もあり、ある程度予想はしていた事だが想い人を打ち明けた途端にフリーズしピクリとも動かなくなった呉羽をじとりと見やる。


「驚きすぎ。⋯⋯そんなに可笑しい?」

「⋯⋯いや、まあ⋯⋯確かに驚きはしたけど⋯⋯何で冬木なんだ?」

「それは至センセーが————」


 言いかけて、うららはハッと口をつぐんだ。


(そう言えば、パパ活の事は呉羽にも言ってないんだった⋯⋯!)



「えーっと⋯⋯偶然? いや、運命的な!? 兎に角、出会った瞬間にビビッときたのっ!!」

「それじゃ、入学した時から好きだったって事か?」

「いや⋯⋯好きになったのは最近⋯⋯⋯⋯」


 呉羽は不思議そうに首を傾げる。


「冬木って1年の時から居なかったか?」

「う、うーん⋯⋯至センセーの存在を認識したのは最近だから⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」


 運命だと大見えを切ったものの、尤もな事を指摘されたうららは気まずそうに答える。

 ダラダラと冷や汗をかくうららを呆れ顔で見つめる呉羽の視線が痛かった。






貴重なお時間をいただきありがとうございました!

ここまで読んでいただけて嬉しいです!

ブックマークや評価、感想などいただけましたら、やる気が出ます(^^)

よろしければお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ