呉羽への相談
「すっ、好きな人ぉお!?」
「うん♡」
うららはポッと頰を染めてごろんとベッドに寝転がる。そして、至の顔を思い出しながら抱えていたクッションを強く抱きしめた。
「そ、それってもしかして————」
尻もちをついた体勢から起き上がった呉羽は、寝転ぶうららの顔の横に手をついて覆い被さるような姿勢になる。ギシリとベッドの軋む音が、何故だか先程よりも生々しく感じた。
気まずさを感じ、呉羽の瞳を直視しないようにしていると不意に彼の鮮やかな金髪が目に入る。窓から差し込む光が呉羽の金色の髪を夕焼け色に染め、うららの瞳でチカチカと瞬いた。
「それって⋯⋯お、おr————」
「え? 誰かわかるの? ⋯⋯てか、なんで呉羽まで赤くなってんの」
「べっ、別に良いだろ! そんな事より、名前は⋯⋯いや、ソイツのイニシャルは『K』だったりする?」
「いや? 『I』だけど。それが何?」
「⋯⋯⋯⋯」
「てか、近くない?」
「⋯⋯⋯⋯」
ジッと憂いを帯びた赤い瞳で見つめられると何となく居心地が悪くなったうららは、幾分か語気を強めてそう言った。
✳︎✳︎✳︎
うららと呉羽はお互いの母親同士の仲が良かったため、幼い2人は必然的に一緒に遊ぶ事が多かった。
昔の呉羽は年齢の割に背も小さく気が弱かった。更には今よりも髪が長く、まるで少女のような外見でいつも悪ガキたちに揶揄われており、小さい頃から気も力も強かったうららがよく追い返していたものだ。
チョロチョロとうららの後をついて回っていた呉羽だったが、今では疾うにうららの背を超えてしまい、いつからか涙を見ることも無くなってしまった。
同い年だが、弟のように思っていた呉羽が遠い存在になってしまったようでそれが少しだけ寂しいと感じるうららであった。
今では幼い頃の面影は微塵もなく、学校で一二を争うほどの美少年へと成長を遂げた呉羽は中学の頃から始めたバスケットボールで将来を期待される選手だ。
スポーツを嗜むにしては長めの金髪に、切長の真っ赤な瞳、左耳にシルバーのフープピアス。一見軽薄な印象を受ける外見であるが女の影は無く、学業も優秀な文武両道と来れば女子が放っておく筈も無い。
しかし、あの頃と比べて見た目は大きく変わってしまったものの、彼の優しく困っている人を放って置けないところまでは変わっていないようだった。暴走すると話を聞かないのは玉に瑕だが今でもうららの事を心配してくれる。
✳︎✳︎✳︎
「う、うらら⋯⋯実は俺————」
「⋯⋯⋯⋯?」
うららが追想にふけっていると、真剣な顔をした呉羽が口を開いた。
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