強引な情報収集
これまで18年間、生きてきて感じた事のないほどの屈辱と激しい怒りから、時間も忘れて廊下のど真ん中で呆然と立ち尽くすうらら。
誰もがうららを遠巻きに見つめ、近付いたとしても避けて廊下の端を歩く中、至たちが去った方向からこちらに向かって歩いてくる男子生徒たちの会話が耳に入る。
「うっわ~!! さっきすれ違った時めっちゃ良い匂いしたぜ!? 陽葵ちゃんってやっぱめちゃくちゃかわいーよな!」
「そうそう、童顔なのにおっぱいめっちゃ大っきいしなっ!!」
ニヤニヤとだらしなく顔を緩ませ、下品極まりない話に花を咲かせてうららのすぐ横を通り過ぎようとする見知らぬ2人の男子生徒。彼らが話す『陽葵』という女性の特徴は、あの憎き女の特徴と合致していた。
(ヒマリ⋯⋯? もしかして、あの女の事?)
そう思った時には既に、うららは男子生徒2人に声をかけていた。
「⋯⋯⋯⋯おい」
咄嗟に出たのは地の底を這うような低い声。
うららは自分より身長も高く、体格も良い男子生徒の肩をガシリと掴んだ。ネイルを施した長い爪が彼の肩にギリギリと食い込む。
「⋯⋯は? なんだよ、お前————ってうわァ!!?」
そして、うららは無言のまま長身の男子生徒の胸ぐらを掴み、勢いのままに壁に追いやる。怒りから力加減を見誤り、ダンッと廊下中に響くような衝撃で体を強く壁に打ち付けられた男子生徒は、何がなんだか分からないといったようすだ。
「え? えっ⋯⋯!?」
混乱し、言葉の出ない男子生徒はうららの鬼のような形相を目の当たりにしてヒィッとか細い悲鳴をあげる。
「⋯⋯ねェ、あの女だァれ⋯⋯⋯⋯?」
「ハ、ハイ⋯⋯!?!?」
「だ~か~らァ! ⋯⋯あの真っ白でいけ好かないクソ女の事だよっ!!」
そう言いながら、うららは大分小さくなった憎き夏川の後ろ姿を指さす。
漸くうららの質問の意図を理解した男子生徒は、大分ワイルドな壁ドンの姿勢に戸惑いながらも話し始めた。
「あ、ああ⋯⋯あの人はす、数学の夏川陽葵先生ですっ!!」
「⋯⋯数学の、夏川陽葵ィ?」
うららの並々ならぬ気迫に怯える男子生徒に、その光景を立ち止まり遠巻きに見守る多数の生徒たち。
その光景はちょっとした騒ぎになっていたが、切羽詰まった今のうららに気にしている余裕は無かった。
「他には⋯⋯?」
「⋯⋯へ?」
「知ってる事を全て話せ」
「は、はいィっ!!」
先程までの威勢はどこへやら、今ではうららの顔色を伺いビクビクと怯える男子生徒へと更に追い討ちをかけるように、うららは右足を彼の股座にダンッと叩きつけるのだった。
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