ライバル登場!?
4時限目終了のチャイムが鳴った瞬間、2人分のお弁当箱を持ったうららは急ぎ足で教室を出た。至の背中をピンク色の派手な髪を靡かせ頭につけた青い大きなリボンを揺らして追いかける。
追い付いたところで、彼の肩をポンっと軽く叩いた。
「セ~ンセーっ♡今日の授業もすっごく良かったよ!」
「はあ⋯⋯良かった、ですか。それにしては授業中、うんうんと唸る君の声が聞こえたような気がするのですが⋯⋯」
授業が終わり、眼鏡を外した至は訝しげな視線でうららを見やる。
「え!? き、聞こえてたの!? ⋯⋯じゃなくて、えーっと⋯⋯センセーの授業が唸るほど分かりやす過ぎたの! 美味しすぎて唸るとかってあるでしょ? それと同じ事だよっ!!」
全てを見透かすような至の透き通った瞳に、うららはギクリと肩を揺らし苦しい言い訳を並べる。
「それは教師冥利に尽きますね」
「うんうんっ! あたし、センセーの授業が一番好きだよ!」
(良かった! 誤魔化せたみたい⋯⋯? これまでの事は諦めるとしても、これからは不真面目な生徒って思われたくないし⋯⋯ここは勤勉な生徒って印象付けなきゃっ!)
「受け持つ生徒が古典の素晴らしさに気付いてくれるとは嬉しいものですね」
「うん! ちょー素晴らしいよ、古典って!!」
古典自体には未だ興味を見出せていないうららであったが、とりあえず至の言葉には賛同しておく。
うららと至が昼休みで賑わう廊下の隅で立ち止まり話をしていると、コツコツとこちらに向かってくるヒールの音が聞こえて来た。その音は徐々に2人に近付き、そして目の前でピタリと止まる。
「あら⋯⋯? お取り込み中かしら、冬木先生」
鈴の音のように凛とした声が廊下に響く。
「ああ、夏川先生」
「⋯⋯!?」
突然、至との会話に横槍を入れてきた夏川と呼ばれる女性。うららはその女の姿を確認する為に勢い良く後ろを振り返る。
そこには、生まれてから今まで一度も染めた事がないであろう痛みひとつない腰まで伸びた艶やかな黒髪に、新緑を思わせる摘みたての若葉のような緑の瞳。そして、淡い黄色のリボンブラウスに白のマキシスカート、強く掴めば壊れてしまいそうなほどの華奢な肩に薄手の白いカーディガンを羽織った男好きしそうな小柄な女性が立っていた。
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