伝わらない想い①
(泣いてる暇なんてない⋯⋯っ! 至センセーが堅物で、しかも超が付くほど鈍感なのはとっくに分かってた事だし⋯⋯。挫けんな、うららっ!!)
うららはついつい弱気になってしまう自らを奮い立たせる為、パンっと強く両頬を叩いた。衝撃で熱を持った頬がジンジンと痛い。
気合いを入れたうららは、何としても至の勘違いを正そうと意を決して口を開いた。
「く、呉羽の事はそういう意味の好きじゃないの! ていうかあたし、他に好きな人⋯⋯い、いるし⋯⋯⋯⋯」
そう言いながらも、気恥ずかしさからもじもじと膝を擦り寄せる。うららは至の顔を直視出来ず、視線を外して潤んだ碧の瞳をうろうろと彷徨わせた。
しかし、うららが決死の覚悟の弁明をするも、至の反応は想像以上にあっさりとしたものであった。
「へえ、そうなんですか」
「⋯⋯って! センセー、あたしに全っ然興味無いじゃんっ!?」
「そんな事は無いですよ。生徒の恋愛相談に乗る⋯⋯僕には未だ経験の無い事ですが、大切な教え子————常春さんがお望みでしたら努力いたしましょう」
「えっ!? あ、やっ⋯⋯それはまだ早いというか⋯⋯何と言うか⋯⋯⋯⋯」
(本人前にして言えるわけ無いって⋯⋯!! ただの告白になっちゃうし、現時点では100%振られるしっ)
羞恥心に耐えきれなくなったうららは真っ赤に染まった顔を両手で覆う。
そんなうららの奇行を至は不思議そうな顔で見ていた。
「⋯⋯っていうか、早くあたしの自信作食べてよ、センセー!」
「恋愛相談は良いのですか?」
「っ⋯⋯それはまた今度ね!!」
(悔しいけど、まだまだ告るには早過ぎるもん。もっと、もーっとセンセーがあたしの事を意識してからじゃないとっ!!)
無理矢理話を逸らし、どうにか意中の相手本人への恋愛相談を回避したうららは至に弁当を食べるよう促す。
「悩みがあればいつでも相談に乗りますよ。頼りないかも知れませんが、これでも僕は君よりも歳上で教師なのですから」
「何言ってんのっ! センセーは頼り甲斐ありまくりに決まってんじゃん!? 何てったって、2度もあたしを助けてくれたんだから!!」
興奮したうららは思わず立ち上がる。いくら想い人本人であるとはいえ、至自身が自らの良いところを理解していないのは許せなかった。
「⋯⋯⋯⋯そうですか」
「⋯⋯!」
うららの熱弁に対し、至は相変わらずの素っ気ない返答であった。
しかし、うららの瞳にはその時の彼の表情が僅かに柔らいだように見えたのだった。
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