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婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢  作者: 綴つづか
番外編

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31.ほわん① ステラリア



 園遊会での公開告白の翌日、ややびくびくしていたステラリアは、結果として拍子抜けする羽目になった。

 あちらこちらで遠巻きにひそひそと噂されるかと思いきや、うらはらに好意的な視線がほとんどだったためだ。むしろクラスメイトたちを筆頭に、見知らぬ生徒も含めて、みんなから「良かったね」とか、「末永くお幸せに!」とか、「レイル様のあの姿が意外だった」とか、温かく迎え入れられた。

 ステラリアは、肩の力を抜いてほっと安堵のため息をついた。

 この事態を予測していたのだろう。レイルは、ほらね、と言わんばかりに眼鏡のブリッジを得意げに押し上げた。

 もちろん、多少白い眼を向けられることもあったが、そういう不躾な視線は、レイルが宣言した通り黙らせてステラリアを守ってくれた。頼もしい。

 こうして、アイリが起こした魅了事件も往々に落ち着きを見せ、ピリピリギスギスしていた学園にも、すっかり平和が訪れた。

 想いをしっかりと通い合わせたステラリアとレイルも、互いに愛称で呼び合うようになり、二人の間には以前以上に穏やかで信頼感溢れる空気が流れていた。

 だから、ステラリアもちょっとばかり浮き足立っていたのだ。




「まぁ、レイがびっくりしているわ。随分珍しいこと。だけど、あそこまで綺麗さっぱり書類をばらまかれたら、驚きもするわよね。見て、ジーナ様。レイの頭の上にまで、書類がのってる……ふふっ」


 ある時には、廊下で向かいから足早に歩いてきた男子生徒が突如盛大につまづき、レイルの目の前で抱えていた書類をひらひらと巻き散らして、大惨事になっているのを目撃したり。

 因みに、転んだ生徒は、レイルの静かな威圧に震え(レイルは単純に茫然としていただけなのだが)、その場に土下座していた。


「随分白熱しているわね。レイも凄く気合が入っているわ。好戦的だけど、そんなレイもかっこいい……」


 ある時には、実践魔法の授業において、一対一の模擬戦が盛り上がりを見せ、レイルも見事なまでの魔法を構築して対戦相手に圧勝しているのを、黄色い悲鳴混じりの中見惚れていたり。


「まあ……レイったら、殿下と楽しそうに何を話しているのかしら」


 そして、またある時には、ふと差し掛かった二階の廊下の窓から、中庭で談笑するクリストファーとレイルをたまたま見かけて、優しく瞳を細めたり。


 ステラリアがにこにこしながら、ぽつぽつとレイルの有様を口ずさむの耳にしながら、隣を歩く友人である子爵令嬢ジーナは小首を傾げた。


「……以前から気になっていたのですが、ステラリア様はレイル様の感情がわかるのですか?」


 ジーナからの問いかけに、今度はステラリアがきょとんとなる番だった。


「え、やはりわかりませんか? さっきのとか、レイにしては結構わかりやすかったかなと思うのですが……」

「申し訳ありませんが、さっぱりわかりません。私には、いつも通り、生真面目で感情をみだりに表に出さない、冷静沈着なレイル様にしか見えなかったものですから……」

「ううーん、そうですか」


 未だ、ステラリアとマクベス以外には、レイルの相貌はピクリともしないように映るらしい。

 どうやら、氷の貴公子の通り名返上には、まだまだ至りそうになさげだ。

 自分とマクベスだけが独占しているレイルの変化は、優越感をもたらしてくれるけれども。園遊会の件も相まって、だいぶ周囲とも打ち解けてきたとはいえ、とかくレイルは誤解を受けやすいから。ステラリアとしては、冷たくてクールな印象だけの人間ではないのだと、もっと知れ渡って欲しくもある。

 がっかりするような、残念なような、嬉しいような、複雑な気分だ。


「って、すみません、ジーナ様。私ってば、ここのところはしゃいでいますよね。独り言をぺらぺらとお聞かせしてしまって、お恥ずかしいです」

「いいえ。お二人がとても仲良しなのは、見ていてよくわかりますから。羨ましい限りですよ」

「へへ……ありがとうございます」

「でも、さすがはステラリア様です。微動だにしないと評判のレイル様の感情ですら、ステラリア様にはお見通しなのですね! ああ、愛があればこそなせる技! 溺愛を見守る会としても、大変美味しいです! ご馳走様です!」

「…………んん? 今、何と?」


 嬉しい言葉に混ざって、どことなく不穏な単語が耳を掠めた。

 ステラリアが訝しむと、ジーナはにっこりといい笑顔を見せた。


「クリストファー殿下とレイル様による婚約者の溺愛っぷりを影から見守る会、略して溺愛を見守る会です」

「できあいをみまもるかい????」


 やたらと心がぴょんぴょんしているらしいジーナの言葉の意味を咀嚼するのに、ステラリアの脳はゆうに時間を要した。

 混乱しきりなステラリアをよそに、恍惚混じりのジーナは、薔薇色に染まった頬へと手を当て、キラキラと目を輝かせた。


「ええ! 園遊会であの男爵令嬢に魅了されていると思わせておきながら真実の愛を見せつけんばかりの公開告白……! まるで物語を見ているかのようで殿下のもレイル様のも甲乙つけがたく大変素敵でございました。おかげでうっとりとため息をつく女生徒が続出し婚約者への揺るぎない愛情を持つ殿下方に男子生徒も憧れを抱きみなさまのファンになる生徒が続出したのです。そしてそれぞれカップルのイチャイチャっぷりをもっと見たい! 応援したい! と発足した会でございますわ」


 凄い早口な上に、一息で噛まずに言い切った辺り、狂気を感じなくもない。が、ジーナの熱意だけは否応にも伝わってきた。

 遠い目をしつつも、ステラリアは、うっすらと口元を緩めた。





続きは明日の同じくらいの時間に投稿します。次回完結です!


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