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35.相星桔平と坂野ゆりの本音。

 俺はとんだ悪魔と契約してしまった。

 いくら雫にずっと片想いをしていたからってあの女の話に乗るなんて。


「桔平、どうしたの浮かない顔して」

 ぽんと後ろから肩を叩かれて全身に雷に打たれたように電気が走る。


「なんだ、ゆりか……」

「なんだとは何よ。化け物見るみたいな目をして……失礼しちゃう」


 ゆりはもちろん知ってるんだろうな、雫と来栖が付き合い出した事。

 そもそも本当なのか、その話は。


「あのさ、雫と来栖って……」

「付き合ってるよ」


 せめて最後まで言わせてくれよ。

 1%の否定に賭けていたのに。


「桔平がもたもたしてるからだよ」

「何がだよ」


 こいつ、もしかして俺の気持ち知っていたのか?

 一度もそんな色恋話になった事なんてないのに。


「何が? しらばっくれちゃって。バレバレなのよ、桔平が雫の事好きだったのなんて幼稚園の頃から知ってるわ」

「よ、幼稚園?!」


 衝撃すぎる……。

 確かに初めて砂場で一緒に遊んだ時以来、俺はずーっと雫の事が好きだった。

 きっかけなんて些細な事だ。

 俺が頑張って作っていた砂山を意地の悪い友達にぶち壊されて心折れた時、天使のように現れた雫が『一緒にもう一度作ろう』そうニコッと微笑みかけてくれたところから俺の恋は始まった。

 そういえばあの時ゆりは人の不幸を腹抱えて笑ってたな。

 今だって覚えてるんだぜ。


「桔平、雫といる時はいつも目がハートだったじゃん」

「は? んなわけねぇだろ」

「本当に自分のことって分かんないものね。怖い怖い」


 もしかしてそんなに顔に出てたのか?

 いやいや、そんなに出てたら雫だって気が付いてただろう。


「せっかくあの時チャンスあげたのに」

「あの時?」

「そう、カラオケの時」


 ……だから誘われたのか。

 今だったら納得いく。

 思い返せば、俺と雫が二人でいられるように相当アシストしてくれてたもんな。


 でもまさか、雫と来栖がそんな関係になろうとしてるなんて俺は想像もしていなかったんだ。

 大体、カラオケの時だってアイツのそばにはいつも秋森が居たし、ゆりに『最近雫、イケメンの転校生と仲がいいんだ』って話をたまに顔を合わせた時に聞かされていたくらいで、危機感の『危』の字もなかった。


「俺の気持ち知ってたんなら、何であの二人付き合うかもって言ってくれなかったんだよ」

「は? そんなの自分で気が付きなさいよ。私は桔平の気持ちも分かるけど、雫の気持ちが最優先なの!」


 まぁ、ずっと雫とゆりは一緒だったもんな。

 俺の雫に対する気持ちよりも、もしかしたらコイツの方が愛情がデカいかもしれない。


「私はさ、ずっと雫の事見てきたけど、あの子には幸せになって欲しいのよ。桔平の気持ちも知ってたし。でもさ、雫は来栖君といる方が笑ってる」

「………」


 そんなきつい事言われたら、流石の俺も堪えるわ。

 全く言葉が出てこないよ。


「……ごめん、言いすぎた」

「あぁ……」


 雫を思っての言葉だもんな。

 素直に受け止めるしかねぇよな。


「桔平さ、私だっていっぱい我慢してるんだから」

「我慢?」


 なに、今になって励ますと見せかけての我慢自慢?

 俺の長年の片想いをお前に超えられるとでも思ってんのか?


「私だって桔平の事好きだったの!」

「……え? んん??」


 なんだ?

 何が起こってる?

 今告白のような言葉が聞こえたが……

 でも目の前で顔を真っ赤にしているゆりを見ているとどうやら現実のようだ。


「だから、私も桔平と同じ。幼稚園の時から自分の友達がずっと好きなあんたに片想いしてたの! どう考えても私の我慢のがすごくない?」

「いやいや……凄いとかじゃなくって……」


 ゆりは幼稚園の頃から雫と俺の前ではずっと笑ってる。

 俺はあの二人が付き合い出したのを聞いた途端顔が上げられなくなったのに。


「お前、やっぱり凄いな」

「でしょ? 」

「その打たれ強さ、カッコいいよ」

「バカにしてんの?」


 あははとまた笑っている。

 ゆりはそうやって、いつも自分の事より俺たちの事を一番に考えて来てくれたんだな。


「なぁ、ゆり。お前を馬鹿にしてるんじゃなくて、俺が大馬鹿なことに今気がついたんだよ」

「今更?」


 そうじゃない。

 それだけじゃないんだ。

 本当に馬鹿なのは……


「ごめん、告白の返事は追ってする。今は、俺の話を聞いてくれないか?」

「話?」


 あの秋森との保健室での出来事。

 いつも笑顔でいてくれるゆりの驚く顔をちゃんと受け止めながら……打ち明けた。

サブタイトルが一部被ってたので変更しました(汗)

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