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第87話 水着姿とプール

 水着に着替え終えて、反対側の扉から外に出る。

 なんと、縁側だ。上にはタープが張られていて、日除けになっている。

 そして庭先には……あった、プールだ。



「すげぇ……」



 そんなに大きくないけど、四人で遊ぶなら十分すぎるほど大きい。

 ひょうたん型のプールで、傍にはリクライニングチェアまで用意されている。

 周囲を壁で囲われているから、覗かれる心配もない。

 こんないいプールが庭についてるって……改めて、経済格差を感じる。いやありがたいことだけど。



「三人はまだか……」



 先に準備運動でもしてようかな。

 縁側でストレッチをする。いっちにーさんしー。

 そのまま待つこと数分。

 背後の扉が開き、三人の声が聞こえてきた。



「カイ君、お待たせっす!」

「ふぉー! プールすげー!」

「二人とも、はしゃがないの」

「おー、みんな。待ってた……ぞ!?」



 振り返ると……とんでもない水着を着た三人がいた。

 まずソーニャ。

 いわゆるハイレグと呼ばれる、青い水着だ。鼠径部も出てるし、公共の場じゃギリギリアウト感がある。絶対男に見せたらダメ。

 次に天内さん。

 私服のときの露出控えめと違って、ローライズの黒いビキニ。これも、男の目に触れさせちゃダメなやつ。

 最後に純夏。

 マイクロビキニまでは行かないけど、際どすぎる白い水着だ。多分肌面積で言えば、三人で断トツ。もちろん、これも男の目に以下略。

 …………。

 って、ここに男いるんだけど! バリバリの! 思春期の! 男!



「どーよ、ヨッシー。私らかわいーでしょ?」

「へいへい海斗くん。ちゃんと見てよ」

「ほらほら、カイく〜ん」



 ちょ、三人ともっ。そんな近づかないで……!

 俺だって健全な男なんだから、普通にやばいから! いろいろと見せられない状況になるから!

 極めて冷静を装って、深呼吸をする。



「か、からかうなよ。それより今日の目的はプールなんだから、そっちを楽しもう」

「プール!」

「そうでした!」



 純夏と天内さんは庭先に出ると、目を輝かせてプールに飛び込んだ。



「ちょ、二人とも!」

「まーまー、いーじゃん。私もたまに思いっきり飛び込んでるし」

「確かに人はいないけど、準備運動くらいしないと体に悪いだろ……」

「それもそーか。じゃ、私は準備うんどーしてから入ろ」



 と、ソーニャが俺の横で準備運動を始めた。

 ……やっぱ目のやり場に困るな。

 ソーニャから目を逸らして、プールではしゃいでいる純夏と天内さんに目を向けた。

 大きい円は腰までの高さみたいで、二人とも楽しそうに水を掛け合っている。



「おりゃりゃりゃぁ!」

「あはは! 深冬、水掛けすぎ! えい!」

「えうっ!?」



 ……楽しそうだなぁ。

 そのはしゃぎようが、体の一部によく現れてる。揺れすぎじゃねとは思うけど。



「ヨッシーは行かないの?」

「俺はしばらく縁側でいいです」



 立てないので。……立てないので!

 ソーニャは首を傾げ、庭先に降りた。



「じゃ、私は先に楽しませてもらうよ。早くきなよ、ヨッシー」

「わ、わかってる」



 動けるようになったら行くから。

 ……動けるようになるのかなぁ……?

 ソーニャは小さい円の方から足を踏み入れる。どうやらそっちは浅いみたいで、足首くらいの浅さしかない。

 そこから傾斜になっていて、二人の方へと歩いていった。



「おじょーさんたち。私も混ぜてくれないかな?」

「む、来ましたねツキクラ先輩!」

「今こそ決着のときだよ、ツキクラパイセン!」



 おぉ……なんかバチバチしてる。そんなバチバチすることないのに。

 てか今日くらい仲良くしなさいよ。

 そんな三人を眺めながら。体育座りでぼーっとする。

 うーん……そろそろ収まってきたかな?

 というか、プールの中の方がバレなさそう。よし。

 俺は立ち上がると、三人の視線がこっちに向く前にプールへと足を踏み入れた。



「……はひぃ〜……気持ちいい……」

「あ、カイ君も来たんすね!」

「海斗くん、じじくさ〜」

「ヨッシーはちゅーがくのときから変わらないからねぇ〜。とーじからジジくさいというか」

「やかましい」



 俺のどこがジジくさいっていうんだ。こんな立派な好青年他にいないだろう。

 ……自分で言うのもなんだけどね!

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