表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/121

第56話 ハプニングオブハプニング

『にゃははー、せーかい!』



 せーかい、じゃないわ!



「お、おまっ、何考えて……!」

『だいじょーぶだよ。こうなると思って、ちゃんとタオル巻いてるから』



 え、タオル?

 よく見ると、確かにお湯の中でタオルを巻いていた。

 でもいつもより肌色面積が広いし、控えめだが谷間も見える。それに脚も組んでるから、いけないところまで見えちゃいそうだ。



『ね? だいじょーぶだから、このまま話そうよ』

「解けるんじゃないの?」

『そんなドジ踏みませーん』



 本当かよ。ソーニャの自信ってマジで根拠がないんだよな……。

 まあ、ソーニャがそれでいいって言うなら、俺もこのまま会話させてもらうけど。



「というか、なんで風呂場から電話してんの?」

『ゆーわく』

「は?」

『ゆーわくだよ。今ヨッシーって、キヨサカさんたちと一緒でしょ? そんなのふこーへいだと思うんだよね。だから私は私で、ヨッシーをゆーわくしよーと思って』



 なるほど、そういうこと……いやなるほどってなんだ。何を納得してるんだ、俺は。

 ソーニャが手で水を弾いているのか、画面の向こうからちゃぷちゃぷという音が聞こえてくる。

 見てはいけないとわかっていつつも、思わずチラ見。



『そんなチラ見しなくても、ヨッシーになら全部見られてもいいよ』

「ば、馬鹿言うな。女子高生なんだから、恥じらいを持て」

『恥ずかしいよ』



 ソーニャはむっとした顔でインカメラに顔を近付けた。

 風呂に入ってるから火照ってるのか、それとも羞恥なのか。顔が赤らんでいて、目の奥も少し揺れている。



『スキな男の子に裸を見られて、恥ずかしくないとでも?』

「じゃあ風呂場からビデオ通話はやめてくれ……」

『いやよ。お風呂場じゃないとゆーわく出来ないじゃない。私は私のやり方で、ヨッシーをゆーわくするわ』



 ダメだ、話が通じない。頭がくらくらして来たぞ。

 眉間を指で押さえていると、ソーニャはスマホを浴槽の縁に置いた。

 しかも真正面に。全身が映るから、その角度は止めてほしいんだけども。



『でも恥ずかしいのはほんとーだから、あんま見ないでよ』

「じゃあそこ置くなよ……」

『ダメよ。ゆーわくするって言ったでしょ』



 言ったけども。

 ……あ、そうか。俺がスマホを──。



『言っておくけど、スマホを伏せたらあんたらのことがっこー中に広めるからね』

「HAHAHA! そんなことするはずないじゃないか!」

『そ? ならいーわ』



 あ、あぶねぇ。ギリギリセーフ。

 なんで俺、社会的信用の生殺与奪の権をこいつに握られてるんだ。ソーニャの癖に。



『ね、ヨッシーって二人とどんな風に生活してるの?』

「ど、どんな風にって……まあ普通に。居候だし、互いに干渉しすぎないように……かな」

『ほんとー? 男女が一つ屋根の下で暮らしてて、何もないって逆に不健全じゃない?』

「そ、そうか? 意外と普通だぞ」

『そーかな』

「ソーニャの常識に何でもかんでも当てはめるなよ」

『むー、わかったよ』



 納得はしてないみたいだけど、渋々頷いた。

 まあ、普通納得しないよな。絶対言わないけど。



『いーなー。私もヨッシーとどーせーしたいなー』

「無茶言うなよ。あと同棲じゃなくて同居な」

『似たよーなもんじゃん。それに、スキな子と一緒に住みたいってよっきゅーは誰もがあると思うし』



 そんなもんかね。

 好きな人と同棲……ダメだ、想像出来ん。

 そもそも、俺は誰かを好きなのかどうかって所から考えないといけない。

 清坂さんが好きなのか。天内さんが好きなのか。それともソーニャが好きなのか。

 少なくとも三人は、俺に対して不快な感情は持ってないと思う。

 ソーニャには告白された訳だし。

 清坂さんと天内さんも、不快だったらソフレやハフレにはならないはずだ。

 なら俺は……俺は……。


 ガラッ。



「センパーイ、まだ電話してるっすか?」

「女の声が聞こえるけど、パイセン」



 あ。

 しまったぁ! ビデオ通話はスピーカー! 扉一枚隔ててるだけだと外に漏れるんだ!!



「まままままだ電話中だから少し待っててくれると──」

『! カイト君、そんな所まで見たいの? やーん、えっちなんだからぁ〜』

「ちょーーーーー!?!?!?」



 おまおまおま何考えてんのお前はアァ!?



「んなっ!? センパイ何してるっすか!? ナニしてるんすか!?」

「今の声、ツキクラパイセンでしょ! 二人で何してたの!?」

「何もしてない! してないから!!」

『あぁんっ。カイト君のゆびぃ〜』

「テメェ黙れマジで!!」

「センパイ、ナニしてるっすかぁ!!」

「パイセンのケダモノぉ!!」

「俺ここにいるのにナニも出来ないからな!?」



 何このカオスな空間。どうしてこうなった。



「パイセン、スマホよこせー!」

「通話切って下さいっすー!」



 そんな中、二人がスマホを奪おうと迫ってくる。

 ちょっ、二人ともやめっ……!



『くおるぁ! ソーニャ、風呂で盛るんじゃねぇー!!』

『げっ、ポーリャ入ってくんなし!』

『アンタが風呂場で盛ってるからでしょーが!』



 えっ、ポーリャって……確か、ソーニャのお姉さんだったか?

 た、助かった。よし、向こうはポーリャさんに任せて──。



「えい!」

「あ」



 清坂さんのジャンプと同時に、スマホが手から弾かれた。

 宙を舞うスマホ。

 運良くか運悪くか、画面が俺の方を向くと。


 そこに映し出されていたのは──慌てて浴槽から立ち上がった拍子に、タオルがはだけたソーニャの姿だった。


 俺の脳が無駄にフル回転し、目に映るものがスロー再生される。

 ソーニャの全てが見え、脳に焼き付く。

 ソーニャも目を見開いて俺を見て固まった表情を最後に、通話が切れた。


 ……ナイス(バッド)タイミング。






 それからソーニャは、三日ほど学校を休んだ。

 いや、なんかごめん……。

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ