第51話 告白と宣戦布告
◆海斗side◆
「せせせセンパイセンパイセンパイ! 不審者っす! ふほーしんにゅーっす!」
「ぱ、パイセン! 何膝枕で爆睡してんの!?」
「かかかかかかか!? か!? かいかいかい海斗!? え、海斗これ、え!?」
「ヨッシーこらこらこら! 女二人が鍵開けて入って来たわよ!? あれこそふほーしんにゅーじゃない!? 犯罪よこれ!?」
ちょちょちょちょちょ!? 何っ、え、揺らすな揺らすな!
ソーニャに肩を揺さぶられて一気に目が覚めた。まあまだ眠いけどさ。
眠い目を擦って起き上がる。
……あれ、なんか人数が増えたような。
えっと、海斗にソーニャ。それに……清坂さんと天内さん?
……ん? んん? えっと……え?
「あー……お帰り?」
「あ、ただいまっす……じゃないっす!」
ですよね。わかってます。だってどう考えても修羅場ですもんね。
さて、どう言い訳しようか。
なんて考えていると、悠大が俺の肩に手を置いて……って痛い痛いっ。肩めっちゃ握られとる!
「海斗。言い訳しようだなんて考えない方がいいよ。今僕は冷静さを欠こうとしているからね」
「ひぇっ」
悠大の顔、今まで見たことないくらい怖い。
鬼の形相ってこういうことを言うんだろうか。
「えーっと……お、怒らないか?」
「この顔が怒ってないように見える?」
「見えないっす」
そうなるよなぁ……ソフレとハフレに関しては、触れないで説明するしかないか。
うーん、どこから説明しようか。
取り合えず誠意を見せるために正座をし、言葉を選んで説明していく。
雨の日に清坂さんを拾って、家庭の事情で帰れないこと。
行く当てもなく、仕方なくここに居候していること。
天内さんは、清坂さんの幼馴染かつ親友で、いつの間にかここに入り浸るようになっていたこと。
清坂さんも天内さんも空気を読んだのか、黙って頷いていた。
いや、悠大の鬼の形相が怖くて黙ってるだけか。でも今はそれがありがたいけど。
「と、いうわけだ」
「ふーーーーーーん。つまり、僕が二人のファンだって知ってて同棲してたってわけね」
「いや、同棲というより同居というか」
「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
怖い。圧が怖い。それにソーニャまで、悠大の隣で腕を組んで俺を見下ろしてるし。
やっぱ理解してくれないよなぁ……高校生で、美少女と同居なんてなぁ。
むすっとしていた悠大は、力が抜けたように肩を落とした。
「はぁ。そりゃ、海斗の様子がおかしかったわけだよ」
「う……ごめん」
「それは何に対しての謝罪?」
「そ、それは、お前の気持ちを知ってたのに同居してたことで……」
悠大はきょとんとすると、さっきよりもふかーく、ながーいため息をついた。
え、なんですか?
「いいかい海斗。僕は別に清坂さんと天内さんを好きってわけじゃないんだ。ファンではあるけど、ファンクラブはガチ恋勢は入会禁止だから」
「じゃあなんでだ……?」
「女の子との同居なんて、色々大変だったろう。それなのに海斗が僕にまーったく相談してくれなかったのに怒ってます。僕ら親友だろ」
……そっか、悠大はそれに怒ってるのか。
確かに、俺も悠大が何かで悩んでいたりして、それを秘密にされたら……多分、怒る。
相談してくれなかった寂しさもあるしな。
「まあ、一年生の二大美女といつの間にか仲良くなった件に関しては、ラーメン十回奢ってくれたらそれでいいよ。ファンクラブのみんなにも、このことは内緒にしてあげる」
「……悪い、ありがとう」
「お礼を言うのは早いよ。ほら」
「え? あ」
隣に佇むソーニャ。
何故かわからないけど、ずっとむすーっとした顔をしている。
そういえばこいつ、なんでこんなに不機嫌なんだろう。
俺が女の子と同居してて、不健全に映ったとか? 別に不健全なことはしてないぞ。ただ添い寝とハグを日常的にしてるだけだ。
……あー、十分不健全か? でもそのことは説明してないしな。
「そ、ソーニャ?」
「ふん。どーせヨッシーは、若い子の方が好きなんでしょ」
「いや、別にそんなことはないけど……」
相手が白百合さんや花本さんでも、勿論ソーニャでも、多分俺は同じことをしてたと思う。
というか若い子って言うけど、ソーニャと清坂さんたち、一個しか違わないじゃん。
「てか、ヨッシーってキヨサカさんとアマナイさんのこと、どー思ってんの? 好きなの?」
「は?」
「「え!?」」
ソーニャの問いに、清坂さんと天内さんの顔は真っ赤になった。
そりゃあ、二人からしたらただのソフレとハフレだ。添い寝とハグするだけの関係で、俺なんかに好意を持つはずがない。
顔を赤くして怒るのは当然だ。
「おいソーニャ。同居してるからって、そんな簡単に恋愛に結び付けるなよ」
「じゃあ好きじゃないの?」
「「え!?」」
今度は顔を真っ青にした二人。
意中じゃない男にしろ、もしここで俺が「好きじゃない」って言ったら、今後の関係がやりづらくなるのは確かだ。
二人は優しい。もしかしたら、俺に気を使って出て行ってしまうかもしれない。
そんなの嫌だし、余りにも悲しすぎる。
「そーれーはーだーなー……」
「……ごめん、意地悪した。どっちの答えでも、二人の関係が悪くなるのは当たり前なのにな」
「お、お前は……」
「別にいいでしょ? だって……」
ソーニャは俺の胸倉を掴んでチークキスをすると――。
「私はアンタのこと……スキだよ」
「――――ぇ?」
俺にしか聞こえない小さな声だった。
聞き間違いかと思ったけど……多分、聞き間違いじゃない。
「それじゃ、私は帰るわ」
「ぇ……お、おい……?」
ソーニャは何事もなかったかのように部屋を出て行こうとする。
が、靴を履いてから少しだけこっちを振りむいた。
「キヨサカさんと、アマナイさん。これは宣戦布告。……いつまでも現状に甘えてると、全部私が掻っ攫うから」
そう言い残し、部屋の扉は音を立てて閉じられた。
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