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第14話 ギャルと本音

   ◆



「……ん……ぁれ、俺……」



 あぁ、そうか。清坂さんにマッサージされて、寝落ちしちゃったのか、俺。


 部屋の時計は、18時半を指している。寝落ちして、丁度30分くらい経ったみたいだ。

 流石、俺の体内時計。グッジョブ。


 さて、起きて続きを……ん、あれ? 右腕が動かない。

 待て、これ前にもあったな。あったよな。


 ゆっくり顔を右側に動かす。

 ……いた、清坂さんだ。

 しかも前より近い。というか近すぎ。え、やば、こら普通にキスできるんだけど。いやしないけどね。


 しかもこの腕の極上の感触は何度抱き着かれても慣れない。これが高校生? マジ?



「んんぅ……ぅゅ……?」

「あ、起き──」

「ぁ、せんぱぁぃ……むぎゅー」



 ちょっ!?

 寝惚けているのか、更に力を入れて抱き着いてきた……!

 その拍子に鼻先と鼻先の当たるエスキモーキスッ! それほどの近さッ!


 し、心臓がうるさいっ……! いやでもこれはわかるでしょ! この状況は心臓が持たない……!


 何とか反対側を向き、とりあえず寝たフリをする。

 モゾモゾとした動きで、ダイレクトに柔らかさが伝わってくる。というか腕が挟まれてやばい。

 俺の腕、決して太くはないけど細くもないんだけど。それを挟むって何? 何ごと?



「むゅ……? ふあぁ〜……ゎっ。ま、また私……!」



 お、起きたか。よかった、早く離れてください……!



「センパイ、起きてるっすか?」

「すぅ……すぅ……」

「センパーイ? まだ寝てるっすか?」

「すぅ……すぅ……」



 寝てまーす。寝てますからー。



「……つんつん」

「ぅ……すぅ、すぅ……」

「……つんつんつーん」



 頬つんつんしてくるのマジでやめてくれないかな。

 と、つんつんが止まった。そのまま頭をゆっくり撫でてきた。



「……センパイって、本当に優しいっすよね……こんな私を家に置いて、事情も深く聞かないでくれてて」



 ……別に、深い意味はない。

 深く踏み込んで、相手がそれで傷付くのが嫌だから。面倒事に巻き込まれたくないから。

 本当、それだけなんだ。

 だから俺は、優しくもなんともない。ただ面倒事が嫌いな、普通の男なんだよ。



「でも、こんなえっちな体の私と添い寝して手を出さないの、人としてどうかと思うっす。もしかして不能?」



 おいコラ。



「冗談っす。センパイのセンパイが元気なことは、もう確認済みっすから」



 いつ!? いつ確認したの!? ねえいつ!?



「ふふ。でもそんな優しいセンパイだから、私もソフレを提案したんす。安心して傍にいれて、安心して熟睡出来る……ふふ。こんなこと、本当に初めてっす」



 清坂さんの手が止まり、ゆっくり体から温もりが離れていった。

 よ、よかった、起きてるのに気付かれなくて。


 が、ベッドの傍に清坂さんが立ったのを感じた。

 目は開けられないからわからないけど、多分、顔の近くに跪いていると思う。



「でも、センパイは頑張りすぎっす。私の前では、あんまり気負わないでくださいっす。……頑張らなすぎの私が言っても、説得力はないと思うっすけど」



 そんなことはない。清坂さんが頑張ろうとしてるのは、俺がよくわかってる。

 だから、そんな悲しそうな声をしないでくれ。



「私、もっともっと頑張るっす。お料理も、可愛さも。……勉強も、ちょっと頑張るっす。それで、センパイを安心させて、私がセンパイを沢山甘やかしてあげるっす」



 そんなことはない。今も俺は、清坂さんに助けられてる。清坂さんがいつも笑顔だから、俺も笑顔でいられる。



「それじゃ、私行きますね。起きたら美味しいご飯が待ってるっすよ、センパイ♪」



 とたとたとた、ぱたん。



「……ぶはっ……!」



 た、助かった……本当に助かった。

 あそこで我慢出来ずに起きてたら、気まずいどころの話じゃなかった。


 色んな所の圧迫感を逃がすべく、横向きになってそのまま寝続ける。

 さっきまで清坂さんのいた場所、暖かいな……って、俺は変態か。


 とりあえず、今は色んなところの血流が収まるまで、もう少しこのままでいさせてもらいます、はい。

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