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グウィネビア様、頑張り過ぎてオーバースペック気味になる

「随分、頑張ってるんだって? あんまりやり過ぎると学園で学ぶものがなくなるんじゃないかな」


 夕食は家族が揃う。お父様、お母様、そして6歳の弟クラーク。何事もなければクラークがエバンズ家を継ぐはずだ。この子のためにも姉の私が失態を犯すわけにはいかない。


「まだまだ未熟ですわ。古語を自由に読むことはできませんし、バール語などは日常会話も覚束ない状態です。剣術は基礎の反復のみ、馬術も人馬一体とはいいがたい状態ですし、魔法学などは……。」


「まってグウィネビア、あなた、何になるつもりなの?」


お母様が堪らず声をあげる。


「旅人だ、旅人になるんだ」


 クラークが唐突にしゃべりだす。子供が大人の会話に入ってくるのはマナー違反なのだがなんとなく許されているのは、まだ幼いためかクラークの個性ゆえか。


「旅人、素敵ね。外国語をならっても外国に行けないのはつまらないことですわ」


 弟はともかく私の言葉にお母様はずいぶん驚いたようだ。


「あなたって人は……いったい」


 ちょっと弟の言葉にのって「外国」について話しただけでこの反応である。


「外国、いいんじゃないかな。もうこの際だから留学でも大学でも魔術棟でも好きなところに行きなさい。それとも女騎士にでもなるのかな」


 お父様までのってきた。お母様、孤立無縁である。

 何やら後ろから不穏な気配が漂ってきた。多分お母様に忠実な侍女頭が殺気を放っているのだろう。多方面にごめんなさい状態である。


「君がなにをしようと、君の自由だ。これまで私たちは君を縛りすぎていたし、君も皆の期待に真面目に応えようと必死だったんじゃないかな」


 なるほど婚約話を断ったのを、こんな風に解釈したわけか。


 未来の王妃、完璧な貴婦人たる薔薇の君。そんなまわりの期待に応えようとして押し潰されそうな心を守るための決断。

 なんとなく合ってるような気がしないでもない。


 というかお母様のまわりの空気がさきほどよりさらに重くなっている。

 娘の1.5倍くらい真面目な彼女はきっと心の中で「ああ、私……娘に重圧をかけて追い詰めていたんだわ、なんてことを……」とか脳内反省会絶賛実施中だと思う。


 お父様、あとのフォローはお願いしますね。


「あ、そうそう。今度のお茶会の席で殿下には自分から話をしなさい。将来どうなるにしても殿下にも君にもよい友人が必要だよ。」



 お茶会!!!!

 いや、うそ、知らなかった。

 いや、知ってた。


 そういえば衣装も選んだし、必要なマナーも確認したし、招待客の情報も分かるかぎりチェックした。なのに殿下のことはまるっと抜けていた。王妃様主宰のお茶会にもかかわらず……。


 大ポカである。

 前世がポンコツなせいなのか、いや、前からこの手のやらかしはあったような気がする。いつもしれっとした顔で切り抜けていただけだ。


「なんだか少し怖いような気がします。何を話したらよいのか、どのように振る舞えばよいのか、なにもかも忘れてしまったようですわ」


 グウィネビアには相応しくない言葉である。ここは「承知いたしました。お父様のお手を煩わせるようなことはしません」が正解だろう。

 でも家族の前くらい弱音を吐いてもいいんじゃないかな。これまでが完璧すぎたのだ。


「グウィネビア、次のお茶会にはトリスタンもくるでしょ。あの子、王室のお茶会は今回が初めてなのよ。あなた、側にいてあげてね。」


 お母様、助け船のつもりなのか従兄弟の名前をだしてきた。


 トリスタン?


 思い出した攻略対象の1人だ。

 グウィネビアの従兄弟だったのか。

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