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グウィネビア様、当日になっていろいろヤバイことに気がつく

 グウィネビア様、当日になっていろいろヤバイことに気がつく


 売店は3日間、授業終了後、教職員棟を利用して行われる。

 教職員棟は出席確認のために、全ての学生が朝一で訪れる場所であり、手紙の受け渡しにも利用されている。

 おまけに先生の目も届くので安心、というわけだ。

 今回、利用できるのは1年のみである。

 とにかく、全ての1年生が学用品と実技衣装を揃え、安心して授業を受けることが出来るようにするのが目標だ。



 教職員棟の庭にテントが設置され、文房具等が置かれている。新品ばかりだが、街で買うより安価になっている。

 セスによると、ここでの利益より『学園に商品を卸している』、という実積が大事らしい。

 一応、新品の教本、楽器なども置いてはあるが売れることは想定していないという。

 ここは商人まかせだ。


 少し離れた所には古い教本や楽器、石板などがならんでいる。寄付で集まったものだ。これらは貸与や無償ではなく、かなり安価ではあるがお金を払って購入ということになった。

 学生たちからの聞き取りで、無料に抵抗感を示す者が多いことが分かったのだ。

 ここには、平民学生と貴族学生をスタッフとしてつける。学生がお金を扱うことになるので教師が1人つく。


 実技衣装は建物内にある。こちらもどう扱うかでけっこう揉めた。

 文房具より遥かに値がはるので、学生が売買するのは難しい。

 集まった古着の中で、剣術、馬術関係は古着屋に引き取って貰い、格安で売ることにした。よごれや痛みが、激しくなるのが分かっているので貸与には向かないのだ。

 古布も同様の扱いだ。ここも、商人に任せる。

 ダンス、作法の衣装、そして制服で、こちらで集めた物は貸与とした。スタッフとして、裁縫に強い学生と、ソフィア、アニタなど使用人も動員している。

 古着商が別途、自前のドレスを売り出すが、果たして売れるのかどうか未知数だ。



 昼休憩、売店の前に集まった実行委員会&手伝い(ボランティアスタッフ)の面々は、さっそく予想外の事態に遭遇していた。

 人が集まっている。

 準備をしている商人だけじゃない。学生たちだ。1年生だけではない。2年や3年たちもいる。

 さらに、教師、学園職員、魔術棟の魔術師たち。

 早い話が野次馬だ。


 ちなみに、この3日間は舞踏譜を書くのを免除されている。


「我々、教師も売店に興味があるのだ」


 と、ロビン先生が言っていたが、なるほど野次馬がやりたかったわけか。


「オスカーさん、これ、まずいかもしれませんね」


「そう? なんで?」


 私の懸念を、オスカーは理解できないようだ。

 これだけ野次馬が集まると、肝心の1年が萎縮して近付けないかもしれない。

 一見、盛況に見えたとしても、1年生に商品が渡らなければ失敗だ。


「見本市や貴族の集まりでもさ、人や関心が集まっても、商品が動かないってあるからね」


 セスは私の懸念が理解できるようだった。


「売店が始まったら、積極的に1年生に声をかけていきましょう。貴族、平民、どちらにも案内係が必要でしょうね。オスカーさん、人員の配置はどうなっていますか?」


「寄付の教本のあたりに貴族と平民を何人かいれて、衣装にも何人かいるかんじかな」


「いえ、『誰を、何日に、どこに』、配置するか、ですけど」


「ん? 別に決めてないけど? リリアは裁縫が得意だっていうからさ、衣装を見てもらうつもりだよ」


「待ってください、リリアやビビアンは真っ先に必要な物を、買わなければいけない学生ですよ」


「ああ、そうか」


「初日は、2、3年が入りましょう。リリアさんたちは自分の買い物が済んでから、手伝って貰ったらどうでしょうか」


 ノーラの提案である。


「それはありがたいのですが……。1年しか買えない今回の売店で、そこまでやって貰ってもいいのでしょうか」


「今回の売店が成功すれば、全学年向けの売店も開けるかもしれないでしょう? 私たちの為でもあるんです」


「自分は買い物はありませんので、男子の衣装の方にいます」


 ガウェイン他、数人の1年生男子が主張する。

 彼らは騎士の家系の学生で、全員簡単な裁縫なら出来るということで、男子の衣装を担当してもらうことになった。

 そうはいっても3日間、働かせるのも気がひけるので、1日は空きが出来るように調整する。


 私が、配置人員を石板に書き込んでいると、それを覗き込んだ、オスカーが、「へー、細かいね」と、しきりに関心する。


「必ずしもこの通りには、行かないとは思いますが、ざっくりとは決めておいた方がいいと思います」


 と、いいながら私は、舞踏譜なんて作ってる場合じゃなかったと、心の中で後悔していた。


 まだまだ何かが起こる……、私は嫌な予感に震えた。


 そして予感は当たるのだ。

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