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グウィネビア様、親子で悪人になる

短いです。

 掲示板に貼り出された意見書への回答と、『1年の流れと、必要な学用品と衣装』は1年生に衝撃を与えた。


 まずは、食堂の改善がなされることを知った学生たちは喜んだ。別にこの意見書のお陰ではないのだが。

 もう1つの意見書、教師への不満も、ただちに解決できるものでなくても、意見を取り上げて貰えることのアピールにはなったようだ。


 そして『1年の流れと、必要な学用品と衣装』は、分かりやすいと評判もよかったが、もっと早く知らせろ、という声が相次いだ。まあ、そのとおりではあるが、今のとりまとめ役に言われても困る。


 そして、準備物の多さに頭を抱える学生たちは、ちょっとしたパニックになってしまったようだ。

 十分な準備をしてきた富裕層や貴族でさえ、不安を囁くようになってしまったのだ。




「グウィネビア、やったよ。理事全員から了承を取り付けたよ」


「お父様も理事の方々の説得に回ってくださったの」


「ロビン先生も、モルガン先生も大分、動いてくれたみたいだ」


 ランスロットと、セシルの報告で事態は一気に動いた。

 場所は例によって、医務室の隣。メンバーはランスロット、セシル、トリスタン、モルガン先生。

 モルガン先生と話すために、私(と、何故かついてくるトリスタン)が医務室に向かい、私を探してランスロットとセシルが来たのだ。


 さっそくセスのお祖父様と相談して、日にちを決めなければならない。学生への周知も急がねば。エバンス家で集めている古着や教本の整理も必用だ。準備はとりまとめ役だけでは不十分だ、準備委員会を立ち上げねば。理事、学園長、先生方に御礼状を書かねば……。


 などとつらつら考えていると、ランスロットがとんでもないことを言い出した。


「でも決め手になったのはエバンス公の恫喝だったみたいだね」


 はい?

 お父様?!


「父上がおっしゃるには、エバンス公爵がね、理事たちの家で『お願い』をしたらしいんだ。」


「……」


「もしも臨時の売店が開けなかった場合、娘のグウィネビアは、エバンス邸に学生らを招き入れて、古着、教本などの貸付をやるつもりでいるって」


「グウィネビア、あなたほんとにやる気だったの? その、自分の家で」


 セシルが呆れたように尋ねる。


「ええ、確かにお父様にそう言ったわ」


 手紙を書いていた日、父に呼び出された私は、理事説得に失敗したらどうするのかと尋ねられた。

 その時は私が主導で集めた古着や教本を学生らに渡す、と言ったのだ。学園の一室を借りるか、許可が降りないならエバンスでやる、と。


「『本来学園がするべき学びの保証を、一学生がするなど、全く情けない事態ですわ』って君が言ったそうじゃないか」


「嫌だわ、お父様ったら、私、そんなこと……言ったけど」


 そう、言ったのだ。


『それでエバンス公は、『学生たちのために娘が個人で動くなら、私は娘を助けねばなりませんな。学園への援助は娘にこそ、回したい』って言ったらしいよ。理事は、そりゃあ、慌てふためいたらしい。ああ、父上もね」


 父は私が入学する以前から多額の寄付を行っている。それを止めるというのだ。

 公爵が寄付を取り止めるとなると、学園にとっては痛恨の痛手となる。金額的にも、もちろんだが評判に響くのだ。


 立派な恫喝である。

 しかも親子で。

 国王陛下も被害者……。


「恐いなあ。こんな人たちと一緒に暮らしてるなんて、僕、心臓が、持たないよ」


 トリスタンが大袈裟におびえてみせる。


「まあ、大人たちが独自に動いてくれたところに、エバンズ公爵の最後の一撃……ひと押し、が効いたみたいだね」


 ランスロットが崖の手前で支えるふりして、突き落とす、嫌な攻撃を仕掛けてくる。


「ねえ、ランスロット、あなた少し人が悪くなったんじゃないかしら」


 私の問いに「鍛えられてるからね」と、ランスロットは答えた。

 やはり、以前より強かというか、図太くなったような気がする。トリスタンの影響だろうか。


「いそがしくなるわね。まずは日にちを決めて学生たちに、周知しないと。みんな、すっかり不安になってるわ」


「うん、さっそく、とりまとめ役の集合と販売の実行委員を決めないと」


「ねえ、とりまとめ役だけじゃ足りないでしょ。私もお手伝いさせてよね」


「あー、じゃ、僕も。グウィネビアのフォローをするよ」


 トリスタンやセシルが好き勝手に喋り始める。

 私とランスロットも興奮が隠せない。


「みんな、ちょっといいかしら。グウィネビアさん、昼休憩に教職員棟に行ってちょうだい」


 ボルテージがいい感じに上がってきたところで、私はロビン先生の呼び出しを喰らったのだ。

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