グウィネビア様、お茶会の途中で拉致られる
少し短いです。
どうやらランスロットは、食堂の反対側、個室の前の廊下から、テラスにやってきたようだ。
しかし、突然の王子登場にみな固まっている。
いつも親しくしているはずのジョフリーさえも。
今日のランスロットはやんごとなき貴人オーラが3割増しなかんじだ。学園という本来きらびやかではない場所では、かえって輝きが増してしまうのかも知れない。
「あら、ランスロット、いつから聞いてたの」
仕方がないから私が話しかける。
「うん、君の自己紹介あたりかな」
ランスロットがにこやかな笑顔で答える。
「なら最初からじゃないの」
盗み聞きか!
さわやかに答えてるけど普通に下衆な行為じゃないの、これ。
「ああ、驚かせてすまないね、グウィネビア嬢。邪魔しちゃ、悪いかと思ってだまって聞いてたんだよ」
そう言ったのは、式典の時に在校生として挨拶をした学生だ。
ランスロットの少し後ろに控えめに佇んでいるのだが、さすが3年生、背が高い。
さらにもう一人女子学生が前の二人に隠れるように立っている。彼女は制服を着ていた。
「今日の式典で挨拶をされた、3年のオスカーさんですね。私はグウィネビアです。どうぞよろしくお願いします。ところで、後ろにいらっしゃるのは3年の方ですか」
私が尋ねるとオスカーが口を開こうとしたが、それを制するように、制服の女子学生が話しはじめた。
「3年のノーラです。主に平民の学生の面倒を見ています。学園のことで分からないことがあればオスカーさんや私に聞いてください」
ノーラの顔には表情がなく、どんな感情も見えてこない。
緊張しているのか、貴族を恐れ嫌っているのか、あるいは友好的な関係を望んでいるのか。
「よろしくお願いします。本当に分からないことだらけで皆で途方にくれていたところですの」
私が答えるとオスカーが入ってきた。
「ああ、そのことを正に話していたところなんだ。できたら君と話したいと思っててね」
「私、ですか?」
周りでは突然現れた3人のために席を用意しようと給仕たちがテーブルや椅子を準備しようとしていたが、ランスロットがそれを制し、オスカーが口を開いた。
「僕らは別に1年の交流会を邪魔する気はなくてね。ただグウィネビア嬢に用があったんだ」
「グウィネビア、どうする」
トリスタンが尋ねる。
「行くわ。みんなとも少しは話せたしね」
こうして私の学園初お茶会はあっさり終了したのである。




