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公爵令嬢グウィネビア様、異世界平民の記憶を思い出す

悪役令嬢物です。

恋愛要素ありますが少なめになる予定です。



 残酷なほどまばゆい光に包囲された。

 絶望の光。

 そして、暗黒。


 薄目を開けると先ほどとは違う柔らかな光が頬をなでるように私を包む。


 暖かい。


 どうやら私は横向きに寝ていたようだ。視線の先には私の忠実な侍女……ソフィア。


「グウィネビア様……」


 ソフィアは私をそう呼んだ。そして何か声をかけたあと、「先生を呼びに行く」といって部屋から去った。


 彼女は正しい。でも違う。違うのだ。


 私、いや、俺は……。

   


○○○



 唐突に前世の記憶(異世界転生の古典的アイテム、大型トラックに轢かれて死ぬ)を思い出してしまった。


 いや、きっかけはあった。

 乗馬中、急に眩暈がしてそのまま落馬したのだ。

 ぐらりと世界が一周して地面が視界いっぱいに広がった瞬間、地面に重なり合うようにトラックの映像があらわれた。トラックのライトのまぶしさに目を瞑ったそのとき、記憶が奔流のようにあふれかえった。


 竹中れいじ、27歳。新卒としてそこそこ名の知れた企業に就職したもののあっさり退職した俺は地元のリサイクル会社の営業となった。


 未知の業種、田舎独特のルール。トライ&エラーの日々の中、年下にして先輩である総務の吉田さんに恋をした。


 話しかけて話しかけて、吉田さんのプライベートがちょっぴりわかった。

 明るくて行動的な吉田さんは今、あるゲームにハマりすぎてすっかりインドア派になっているらしい。そして職場でも女子社員に薦めている。いわゆる布教活動である。


 俺は速攻でそのゲームを始めた。女子ならともかく職場のちょっと仲がいいくらいの男の行動に吉田さんはドン引き……しなかった。仲間に餓えていた彼女はがんがん食らいついてきた。


「最初はできるだけまんべんなくステイタス上げてくださいね」


「✕✕はビジュアルいまいちだけどイベント進むとどんどん好きになっちゃいますよ」


「ハーレムエンドはないんで浮気は厳禁。でもある程度全員の親密度あげないとイベントが起きないんですよ」


 そう彼女がハマっているゲームとは、ヒロインになりキラキライケメンを攻略する、いわゆる乙女ゲーというやつだった。


 あの日、残業帰りコンビニで缶コーヒーとピーナッツバターサンドを買い、今日こそあのゲーム、『キャロット学園~恋のダイハード』を少しは進めようと考えていた。

 いや、タイトルが違うような気がする。

 ダイイングメッセージ……それは死ぬやつ。

 そもそもキャロットでもなかっような。

 あ、思い出した『キャットファイト~恋のダイレクトアタック』


 違うっ! と、脳内ひとりボケ突っ込みをしている最中、クラクションととともにきつい光につつまれ物理的ダイレクトアタックをくらった竹中れいじは昇天したのだった。


 たぶん。



○○◯



 先生とともに数人の使用人がやってきた。しばらくすると侍女頭を伴ったお母様までやってきて私の部屋はずいぶんにぎやかになった。


「心配をおかけしました。もう大丈夫です。すぐに元の生活に戻れますでしょう」 と、お母様に言うと「それを判断するのは先生ですよ」と、たしなめられた。まあ、その通りである。


 その後一通りの診察があり、私の受け答えに問題のないことが分かると、今日と明日2日の安静を言い渡された。



◯◯◯



 そう、何も問題はない。


 でも私……俺は知っている。


 私の名はグウィネビア。


 エバンズ公爵の一人娘のグウィネビア。


 吉田さんがハマっているゲーム『キャメロット学園恋愛日記~ときめきのdistance』のヒロイン……のライバル。

 主人公に婚約者をとられて破滅する悪役令嬢である。


 ちなみに竹中れいじのプレイ時間は2時間弱。オープニングと学園生活の説明を聞いたところで終了している。


 ゲームプレイヤーとしてのアドバンテージは、ほぼ、ない。

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