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卑劣! 勇者パーティに追い出されたので盗賊ギルドで成り上がることにした!  作者: 久我拓人


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~卑劣! 裏の占い屋さんへ~

 その路地は決して目立たない物ではなかった。

 むしろ人通りがある方で、今も商人が前を歩いている。

 露店なんかもあり、床に布を敷いて売っている者もいて、賑やかさすら感じるほどだ。

 そんな中で占い屋がいた。

 まさに名は体を表すとでも言わんばかりに黒いローブをすっぽりと頭までかぶって、小さく四角い台を前にしてこじんまりと座っている。

 かぶっているフードからはオレンジ色のふわふわした髪が見えていた。そして、ドワーフらしいずんぐりとした指には黒い革手袋をはめている。

 表情は見えないが、老婆のようにも思えた。

 しかしドワーフの寿命は人間のおよそ2倍らしいので、実際の年齢となると人生経験の浅い俺では分からない。

 もっとも。

 俺からすれば12歳以上の年齢は等しく同価値である。


「――いらっしゃい旅人さん。何を占いますか?」


 占い屋の前に座ると、そう聞かれる。声は老婆という雰囲気ではなく、だからといって子どもでもないほどの低い声。下手をすれば男性にも思えるような声でもあった。


「今後の旅の安全を占ってくれ。骨を埋めるべき場所も分かるといいんだが」

「そこまでは占えないかもしれないね」


 まぁ、占いはあくまで占いだ。

 自分にとっての安息地が分かるのなら、それはもう占いではなく神の啓示だろう。

 それはともかく、俺は周囲の視線を確かめた後、小さな四角い椅子のような机の上に上級銀貨を置いた。

 占い師はそれを素早く隠すでもなく淡々と受け取り、ローブの中に仕舞い込む。


「さて、占おうか」

「お願いします」


 革手袋をしたまま老婆はいくつかの宝石を取り出し、手の中で転がし始めた。カットしていない原石のままで、それを机の上に落とす。

 カツン、カチンと原石たちは跳ね返るように転がって、机の上に落ち着いた。


「ふむ」


 その原石たちの並びや場所で占うようで、占い師は指で辿るように原石の位置を確かめていく。


「この先、多難が待っているね。ただし、栄光も約束されている」

「苦労はするが、成功する。みたいな意味だろうか」

「そうさね。ただ安全が保障されているわけではないから、気をつけることだ。安息の地は、ここからは通そうだよ。旅を続けるのが良さそうだね」

「なるほど。ありがとうございます」

「他に何か聞きたいことはないかい?」

「では、『本』について聞きたい。いや、『神官』でもいいかな」


 本命はこっち、と言わんばかりに聞いてみると占い師のローブの奥に瞳が見えた。

 なるほど。

 ドワーフでも老婆でもなかったか。

 彼女はニンゲン種だ。

 ドワーフに変装しているらしい。

 ずんぐりむっくりな指に見えるのは革手袋に細工でもしてあるんだろう。あとは、もともと身長が低いのかもしれないな。

 裏情報を扱う時だけの姿かもしれない。

 これならパルにも出来そうなので、後で教えてやるのも良さそうだ。


「最近出てる面妖本を燃やしてる神官だね」


 盗賊スキル『妖精の歌声』で話してくる占い師。

 俺は、こくん、とうなずいた。


「あまりそちらの情報は無いが、『本』に関しての情報ならあるよ。本を買い占めてる連中はいるようだ」

「買い占め……」


 なるほど?


「後は、どこかのお貴族さまが本を高く買い取っているそうだよ」

「……」


 なんだそりゃ?

 と、口から出てきそうになったのを、何とか我慢した。


「神官に関しては売れる情報はないね。ごめんよ」

「いや、問題ない。こちらで調べた限りでは、『本を司る神』は、存在しない」

「つまりニセ神官ということかい?」


 今のところ、と付け加えておいた。


「情報提供感謝するよ、盗賊さん」


 バレてたか。

 いや、バレるよなぁ。

 恐らく占い師の表の姿は盗賊だろう。

 こづかい稼ぎかねぇ。

 あんまり裏に足を突っ込み過ぎると、表に返って来られなくなるので注意してもらいたいものだ。

 やべぇ情報は知らないに限る。

 王族やら貴族やらの話は、平民には無縁でいたいものだ。


「ありがとう。助かった」

「いえ、良い旅を」


 俺は立ち上がりかけたのを途中でやめた。


「どうされました?」

「ひとつ、情報を追加で」

「ほう」

「共通語を喋る魔物種を見た」

「……狂言ではなく」

「会話ができるレベルで、だ」

「それはちょっと……恐ろしい話で、飲み込むのが大変そうだ」

「まぁ、眉唾物と思ってくれていいが。嘘ではないよ」

「……そのようだ」


 視線を合わせて、一応の信用はしてくれたようだ。

 まぁ、狂人の戯言と思われてもおかしくはないが……

 魔王を倒した後のことを、少しでも緩和させておいて損はない。

 裏情報から流しておけば……そのうち、盗賊ギルドまで流れてくるかもしれない。

 流れてこない可能性の方が高そうだが。

 まぁ、それはそれ、だ。

 ゼロよりは、少しはマシだろう。


「では、失礼する。占って頂き、ありがとうございます」

「良い旅を」


 ずんぐりむっくりな革手袋をあげて挨拶する老婆ドワーフ風の女性に別れを告げて、その場を後にする。


「……」


 尾行者は無し。

 特に問題はなさそうなので、宿に戻るとしよう。

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― 新着の感想 ―
面妖本って表現久々にみたなあ その昔90年代の同人誌業界で使われてた記憶
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