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私は恐怖した

 ちょっと考えすぎて迷走する。


 村に入れなかった私は干し肉をかじりながらカタログを見ていた。何か身を守るような機能が付いた物を身に付けた方が良いだろうと思ったのだ。


 野宿と言っても火を付ける道具もないので焚き火もない。だからと言って木上に登って眠るなんて器用さも腕力もない。試しに割り箸2本分の木の枝も折れなかった。12歳ってここまで非力だったのだろうか?


「(敵や危険な動物やモンスター何かの接近が分かる様な効果のある装備が欲しいなぁ)」


 そんな都合の良いものがある訳が━━━



「あ、あった」



 あったのである。その名も「鷹の目の腕輪」である。


 「鷹の目の腕輪」の効果は生き物や動くものが装備者の半径5K圏内に入ると報せてくれるというものだった。つまりセ○ムか。でも報せてくれるってどんな風に?

 見た目は黄色い宝石のような石が一つ填まったシンプルな腕輪だが、純金ではないと思うが値打ちものに見えるので「絶対領域」で隠しておこう。「絶対領域」の使い方を間違っている気もするが、気にしないでね。


 もう一つ良いものを見つけた。「狩人のマント」だ。


 「狩人のマント」は森や林などの草木がある場所で装備すると声を出さない限り見つからないというチートじみたものだった。まあ、森や林以外では印象が薄くなる程度の隠密になるようだがとっても欲しいものだった。

 見た目は深緑で頭を隠せるフード付き。これは普通のマントの下に「重ね着上手」で隠しておこう。上に羽織るマントは同じ色と見た目のものにした。



 もう一つ何かないかとパラパラとページを捲っていく。このカタログの不便なところは項目がバラバラというところだろうか。この指環の隣にブーツが載っているのは何か法則性が有るのだろうか?


 カタログの本自体がスキルだからなのか暗くなっても気にせずに読めるのは便利だ。だがそろそろ暗くなってきたので木上に登る術を探そうと思った時、開いていたページが勝手に数ページ捲れた。


 止まったページに目が止まる。そこに書かれていた物は「曲芸の指輪」と言うものだった。


 「曲芸の指輪」は身軽な身のこなしが出来る様になる指輪らしく、木登り程度なら私でも出来るかと思ったので急いで装備して木上に登ってみた。


 すると非力な私がいとも簡単に電柱を軽く越すほどの高さの木に登ってしまったではないか。なにこれ楽しい。



 スルスル登り丁度良さそうな枝を見つけてマントで体を隠すように丸くなる。気分は猿だ。眠ったあとで落ちないように祈ろう。指輪のお陰で落ちないかもしれないし、ダメかもしれないのはもう運に任せるしかない。


 そう思って目をつぶると思ったよりも疲れていたのか直ぐに眠気はやって来た。




 ━━━夜も深くなった頃、何かが頭の中で警鐘をならすような感覚がした。急いで、でも静かになるべく動かないように目を開けると・・・



「(何あれ)」



 豚のような頭に太ったビールっ腹の胴体に丸太のような短い手足を持つ何かが木の下で3匹?もたむろっていた。まるでゲームで敵として出てくるモンスターの様な見た目に思わず喉の奥が吊る様な感覚に息が詰まる。

 敵?それともファンタジーではよく見掛ける獣人族の方ですか?


 しきりに周りの臭いを嗅いでいる3匹?はどう見ても話が通じそうにない見た目だ。いや、見た目で判断するものじゃないぞ、私。もしかしたら文明的な種族━━━


「ピギャァァァ!」

「フゴ、ゴフ!」

「グフグフ」


 ・・・前言を撤回しても良いかな?


 凄い叫び声だった。心臓が鷲掴みにされるとあんな感じかと思うような威圧感。対峙している訳でもないのに死を悟った。もしかして私を探しているのかと思い咄嗟に口を手で押さえる。


 3匹はフゴフゴと鼻を鳴らしながら周囲を見ていたが暫くすると何処かへと立ち去っていった。


 気がつくと朝になったのか辺りは明るくなっていた。冷や汗もいつの間にかいていた。まるでホラー体験談の様なオチだが、ホラーよりも命に直結している分今回の体験の方がよっぽど怖かった。


 あれは多分何かスキルでも発動していたのではないかと考えるほどには未だに震える体とは正反対に頭は冴えていた。多分あのフゴフゴ言っていた3匹は威圧系のスキルを使っていたと思うのだ。あれで錯乱したものならアイツ等の餌食になっていただろう。恐ろしい。やり過ごせてよかった。


 それにしてもこのマントは気配は消せるが匂いまでは消せないのか・・・それとも私が臭かったか?


 お風呂にはこの人生では入って無いが、ちゃんと濡れた布で拭いている。もしかしてそれだけだと体臭キツいのかな?


 先程の恐怖体験も忘れて私はお風呂の重要性を心に刻んだのでした。お風呂入りたいなぁ。




 朝御飯の干し肉をかじりながら今日もカタログとにらめっこをしているとまた良い物を見つけた。どうやらこのカタログは「こんなのが欲しいなぁ」と思うと勝手にピックアップされる機能があるらしい。まだ慣れないけれどコツは掴めそう。


 新たに自分の臭いを消す「無臭の指輪」、マップを標準させる「千里眼の腕輪」と2つほど頭と胴体の防御率を高めるために高そうな物を追加した。ゴツい防具を着ても全く感じないのはありがたい。


 そして昨夜の恐怖体験から精神的に落ち着く様な装備が無いかと探しても見た。乗り気はしないが。



 精神面の強化に気が乗らない理由は装備に頼りすぎていざ装備を外す事になれば反動かなにかで灰人になったら嫌だからだ。ならないかもしれないが、装備で抑えてどんな副作用があるか分からないなんて恐い。だから同じ理由でHPとMPの補正は出来ることならしない方向で行こうと思う。杞憂なら良いのだけれど。


 良さそうな物は結果的には見つかった。「安らぎの首飾り」というものだ。効果は「装備者に少しの安らぎを与える。上がり症に少しの効果あり」。中々危なくなくて良さそう?でも普段は付けないでおこうかな。


 お金が無いから食べられる物を見付ける為の装備の装備も追加した。どうせあの村にはもう行けないだろう。疑われたくはない。どちらにしろ銀貨5枚は無理だ。何か売れるものでも見つけて売るか?でもどこで?あの村に入る行列の中から商人でも見付ける?身元不明の子供の持っているものを買い取ってくれるとは思えない。買い取ってくれたとしても適正価格で買い取ってくれるか?考えすぎだろうか?


 でも売れたとして銀貨5枚になるまでには何日かかる?



 ・・・もういっそのこと野生で生きていこうか?



 でも外には敵性生物がいる。あんな経験はもう二度とごめんだ。やっぱり屋内で安全に眠りたい。ではどうするか。




 稼ぐしかない。地道にでも稼ぐしかない。



 私はとある決心をするとまたカタログのページを捲るのだった。



 これは安全に眠りたい私が足掻く話だが、ちょっと意固地になりかけている私の話。



 問題は直ぐに解決した。




 この世界は主人公が考えるほど恐い世界ではない。ただし、モンスターは恐い。

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