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私は警戒した

主人公が抱える闇は結構深い



 油断した。目まぐるしく過ぎていく風景が面白くて調子に乗った。だからバテた。


 当たり前だ。どんなに良い装備を着けていても中身は平均以下の私なのだ。身体能力を補正したところで体力は元のままなのだ。


 ステータス画面で確認するとHPが半分無くなっていた。バテて良かったのかも知れない。そうでなければ知らないうちにバタンと倒れてそのまま死んでいたかもしれない。このブーツ結構危険だな。これからは緊急の時以外は全力で走らないようにしよう。



 さて、ここは今どこら辺だろうか?



 地図を取り出してみても目印になるものは何もないので良くわからなかった。迷子である。



「(まあ、迷子って言っても道なりに行けばいつかは村にでも着くよね)」



 くよくよするよりポジティブに行こう。



 実はこの時、予定よりも何個も村を通り過ぎていたのだが。とある街に着くまで気が付くことはなかった。





 現在地を特定する事を諦めて道なりに進み村を目指そうと歩き始めて一時間程。道幅が徐々に広がり始め石畳に舗装された道に変わった。歩きやすいが、道が固くて少し膝が痛くなった。やっぱり私は平均以下なのかと内心凹んだがそんな考えを吹き飛ばしてこの舗装された道を見て考えた。


 まだ村は見えないが、それにしてもここら辺はもう目的の隣の隣の領地なのだろうか?端っこの道まで石畳とは。とても裕福な領地なのだろうか?

 私の出身地周辺の村では村内でも土剥き出しであったし、元我が家の道も土だった。


 期待できるだろう。今のところは。



 しかし、懸念はある。



 そう、キチンと整備された道が有るのなら村に入るにも制限やら厳しい審査が有るかもしれない。そうなれば怪しさ満点な私ははたして村に入れるだろうか?


 現在の私は親もなく、住所もない。保証人など居るわけもない。そんな私が入れるか?


 まあ、行ってみないとわからないか。




 そして私は第一の村に着いたのだった。



 その村は大きな石材で出来た壁に周囲を囲まれた村だった。この領地は本当に栄えている様だ。村でこれなら街はどんな規模なのか。ちょっと田舎育ちな上に人間不振に片足突っ込んでる私に耐えられるだろうか。


 村の入り口はとても大きな門があり、村に入るために長い行列が出来ていた。と言っても行列は馬車が殆どで私のように徒歩は居ないようだ。馬車の近くで歩く人も居るけれどそれは多分馬車に乗ってた人か護衛の人達だと思う。鎧来てたし。



 それにしても気持ち悪い。自分で走ったのに少し酔ったみたいだ。つくづく私って弱いなぁ。

 フラフラと最後尾の馬車の後ろに並ぶとその馬車の護衛?の人に話し掛けられた。


 あ、これ怪しまれてる?



「徒歩の者はあっちの門からだぞ」



 あれ?親切?



「たまに居るんだよ。馬車の方に並ぶ徒歩の旅人」



 と言って馬車の列が続く門よりも一周り小さい門を指差した。


 その護衛?の人に小さくお辞儀をして指示された門に向かう。



 小さな門の横には警備員の詰所があり、徒歩で村に入る人達をチェックしているようだ。強面の警備がこちらを睨んでいる。何だか行きたくないが、行かないと怪しまれるだろうし、腹を括って行くとしよう。女は度胸ってお婆ちゃんが言ってた!



 ・・・お婆ちゃん、私は早くも心が折れそうです。


「身分証か通行書を提示してください」



 持ってないよそんなの。やっぱり警備体制は厳重なのね。



「無いです」


「何か何のか?自分を証明するものは?」



 無いですねぇー。免許証何で前世でも持ってなかったし、今なんて車のくの字もねぇーですよ。どうしよう。最悪野宿でもしようかと考えていると



「無いなら仕方ないな。身分証も通行書も無いのなら銀貨5枚になる。役所で身分証を発行してもらうか、冒険者ギルドでギルドカードを発行してもらい申告すればこの銀貨5枚は返却される」



 えっと、そんなこと言われても無一文何ですよわたし。


「・・・出直してきます」



 強面警備員の眉間に皺が寄るのが見えたので早々に門から離れる。若干焦って素早すぎる移動をした気もするがそんなとこを気にする余裕は今の私にはない。

 何故って怖いから。二重の意味で怖かったのです。


 流石村の警備を任されている人である。睨まれたらめっちゃ怖かった。



 後ろから低く地を這うような声で止まるように言われた気がした。でも止まることなく私は近くの林まで走って行ったのだった。



 そして、大きな木の根元でしゃがみこんで暫く動けなかったのだった。



 情けないことに本当に怖くて、動けなくなっていたのだ。落ち着くまで多分30分はかかった。その間に追手は無かったので一安心。何も悪いことはしていないが、疑いの目を向けられると無性に誰もいない場所に行きたくて仕方無いのだ。


 貴族籍を抜ける手続きもお婆ちゃんが一緒に下見や下準備を手伝ってくれたから出来たのだ。もしも一発本番で行ったものなら、まともにサインできたかも疑わしい。

 うん、私は人見知りなのだろう。しかも結構深刻な人見知り。


 役所でしっかりと対応出来たので自信を持てたのだが強面はダメだった。ごめんなさい強面の警備員さん。仕事をしていただけだろう彼の人に心のなかで謝った。面と向かっては当分無理だが。




 こうして私は村には入れずに野宿するのでした。



 これは自分の人見知りを改めて自覚する私の話。










 深刻なコミュ症だがそこまで深刻とは本人は思っていない。

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