私、ドン引きする
無事に指定された品を持ち帰ることに成功した私はそれをくわえるクーちゃんと一緒にギルドに入った。
するともう半数は戻ってきていた私と同じEランクの子達が目を見開いたり大口をあけて驚いている。ゴメンね、でもリュックに入らなかったのよ。
「は?え?ナニアレ」
「ちょ、あれって」
「嘘だろ、ホントに持ってきたぞ」
みんな私が「夜行鹿の尖った角」を持ってくるとは思っていなかったのだろう。しかもちゃんと「尖った角」だ。
「・・・・」
新ギルマスは無言で私を睨む。
二十歳は越えたと思われる見た目は如何にも気が強いですと気の強さを表している。髪はストロベリーブロンドというやつか。サイドにドリルというわけではないが、カールした髪はとってもゴージャスですね。艶々な髪が羨ましい。
目はきつめのゴールド。こうして睨まれると虎やライオンにでも睨まれているような感じがする。
始終睨まれているがそのまま声を掛けないわけにもいかないので、指定された「夜行鹿の尖った角」を提出しようとクーちゃんと一緒に近づいた。
「納品にきまし」
「あら、私は本物を持ってくるように言ったのよ。こんな偽物を持ってこいなんて言ってないわ」
・・・そうきたか。
「では鑑定をよう」
「私が偽物と言ったら偽物よ。しつこいわね。無能はそこら辺に転がってなさいよ」
取りつく島もない。だが、このオバ・・・新ギルマスは意地でも私に納品させない気か。そうか、そうなのかぁー。
もう一度納品するために自分で角を持ち上げる。重い。そして腕かプルプルしそうになるのを堪える。槍より重ってどうなってるのさこの角。
「もう一度言います。指定された「夜行鹿の尖った角」を納品しま」
「五月蝿いってのよ! 偽物だから受け付けないっていってるでしょ!!」
「なら鑑定を」
「私の言うことが聞けないの! 偽物に使う時間はないのよ!!」
・・・なるほどね。
「すいません、鑑定士の方を呼んでもらえませんか?」
「はぁ? 何偉そうに・・あのね、アンタの保護者がいくらギルドでも一目置いてるって言ってもアンタみたいな無能にそんな対応するわけないでしょ。さっさと帰りなさいよこの無能!!」
え~。何このオバサン。おっと失礼。この大人げない新ギルマス(笑)はここまで言っても取り合わないそうだ。何か疲れてきた。ここまで話が通じない人って今世の元両親以来だよね。領主代行様も話は通じていたもんね。
あんまりな対応にドン引きする。
はぁ、何かどうでもよくなってきたぞ。いやでも、ここまで頑張ったのだからここで諦めるのもなぁ。
だが、無情にも鐘が鳴った。夕方の鐘が鳴ったのだ。
「ふん。アンタのせいで後ろがつっかえてるでしょ退きなさい。さっさと帰りなさいよ無能」
あーあ。鳴ったか。はぁ・・・何か疲れた。
私はクーちゃんの首辺りを撫でて言われた通りに訓練所から出ていく。後ろで何かを言われたが今の私には何も聞きたくなかった。
その時あの場に居たものは一人を除き顔が青ざめていた。それに気がつかないのは新ギルマスだけであった。
帰り道をトボトボと歩きながらベルさん達に何て言おうかと考えた。不思議と昇格出来なかったことよりも、応援してくれたベルさん達に落胆されることの方が辛かった。
クーちゃんは私の頭に顎を軽く乗せた。もう私の頭に乗れないクーちゃんなりの甘えかたなのだ。うん、大丈夫だよ。
家に着いて昇格できなかったことを報告して部屋に入る。ベルさん達の顔をまともに見れなかった。落胆してるかなぁ。優しいからあからさまには態度に出さないだろうなぁ。
そう思ってベッドに入り眠りに付いた。
晩御飯を食べなかった事をすっかり忘れて。




