私、成長した
新章突入
やぁ、どうも皆さん。お久しぶりです。
え? 誰に話しかけてるのか? 何で久しぶりなのかって?
それは聞いたらいけない事ですよ。
唐突ですが私がこの街に来てから4年が経ちました。本当に唐突ですよね。
私も16歳になりましたよ。リンクさんは1つ年上なのでもう17歳になるんですよね。月日が過ぎるのはこんなにも早いものなんですね。
そのリンクさんですが、やっぱりと言うか、流石あの二人の息子といった実力をお持ちで。
私よりも先にDランクに上がるのは決まっていたことなのですが(年齢的に上がれなかったからね)、Dに上がってからとんでもないスピードでCに上がってしまいました。
その為今ではDランクの依頼を1人でこなしています。クーちゃんもいるから私1人でも大丈夫何ですけどね。
Cに上がる時にギルドとひと悶着あったそうですがその内容は何故か私には聞かせてもらえない(ベルさんが「あの子も心配なのよ」と言って笑って誤魔化されました)ので知りません。
私の実力はというと、何て事はない一般人より少し弱い程度でございます。
あれだよね、変に力を持っていても何かに巻き込まれる位ならこのくらいでいいんだよ。
私にはチートじみたスキルが有るだろうって?
いや、あれって諸刃の剣だから。私が使っても体が追い付かないから。無理。
それにこの4年でクーちゃんは大きくなった。
身長が伸びたリンクさんと同じくらい大きくなりました。リンクさん160cm位なのに対してクーちゃんは高さだけでも150cmはあるのだ。もうね、この二人(1人と一匹)の側に立ってると余計にチビに見えるんですよね。
ぐぬぬ
私の身長が伸び悩んでいることは置いといて。因みに145cm位です。ぐぬぬ
この世界の人が大きいのがデフォなのだ。そのせいで私が余計にチビに・・・
話がそれました。戻そう。
そんな訳で、今日はEランクからDランクに昇格するための試験日。試験の内容は時間内に決められた物を納品することです。
今日のために準備はしていた。クーちゃんは私以上に気合いが入っている。
そうそう。実はクーちゃんは私が使役していると言うことになっています。つまり私は書類上はテイマーということになってます。
たまに居るそうです。幻獣を使役する人が。だからそんなに目立たないらしい。実際そんなに騒がれなかった。長命なエルフ等の種族が存在するこの世界なので幻獣を使役している人がいっぱい居るのです。
何で領主は私を引き入れようとしたんでしょうね。私はそんなにチョロく見えたのかな?
場所が広いという理由で私達16歳になったDランクは訓練所に集められた。
「(なんだか雰囲気的に学校の朝会みたい)」
ざわざわとみんな思い思いに誰かと話すが、私にはこれと言って親しい人がいない。リンクさんと行動していた弊害だ。
女の子ってのは(特に今の思春期真っ盛りな)イケメンの近くに居る同性には厳しいものだ。そうでもない人も居るが、この少し危険な世界では基本的にみんな肉食だ。
あの一見大人しそうな美人さんのベルさん(目はちょっとつり目だけど優しそうな雰囲気だから)もジンさんを巡ってバトルを繰り広げたとかなんとか。
基本力がある方が有利なのです。
そんな肉食だらけの同年代の女の子がリンクさん(いつも眠そうな目だが)は、顔よし、実力十分、両親も凄腕の冒険者と金の卵だ。
そんな優良物件に知らない内現れたポッと出の私が目障りでないと思うか?
そう。私は遠巻きにされてます。虐めとかではない。ただ、私にちょっかいでも掛けようものなら保護者とお守りが怖いのです。だから誰も私には難癖つけたりはしないが、同じくらい誰も寄り付かない。
そして極めつけにクーちゃんが巨大化したので見た目的にも近寄れない。
ま、別に気が楽だよね。そう心に言い聞かせる。人に関わると良いことないしね私。
「これよりDランク昇格の試験の内容を説明するわ。よく聞きなさい」
ちょっと神経質な高い声が訓練所に響く。
彼女は新しいギルドマスター。前任のギルドマスターはぎっくり腰で引退してしまった。実はあのサンタさんみたいなお爺さんがギルドマスターだった。知ったのはつい最近だ。
ちょっと神経質な人でよく誰かを怒鳴っている。こないだも何でか絡まれて一時間位私が如何に無能かを聞かされるはめに・・・
「今回の試験はわかってると思うけど決められた時間内に指定された物を納品することよ。馬鹿でも出来る内容は・・・」
新しいギルドマスター(以下新ギルマス)は顎をしゃくりギルド員に何かを指示するとくじ引きでもするような箱を持って来た。ギルド員が机の上に箱を置く。
「説明なんて必要ないからさっさと引きなさい」
・・・つまり、くじ引きで指定物を決めるってことなのかな?
ベルさんたちに聞いた話では皆同じだったって聞いたけど。過去の試験とは違う事に周りもざわついている。
「五月蝿いっ! 文句あるの!!」
・・・ないです。皆内心(あんたの方が煩いよ)と思っていただろう。
「さっさと引きなさいよのろま!」
その言葉にDランクの冒険者は次々と並んでくじを引き始めた。私も並びながら新ギルマスを観察する。
あの人は何かイライラしてる。その側に控えているギルド員は何だか困惑しているように見えた。もしかすると今回のくじは新ギルマスの独断だったのかなと考えていると私の番が来た。
何故か私はめっちゃ睨まれて引く。引いた紙を開こうとすると横から引ったくられた。
「見せないよ・・・あら、ご愁傷さま。見なさい、このコは運が悪いわねぇー」
勝手に引ったくった紙を皆に見せるように掲げる新ギルマスに若干ドン引きした。貴女いい歳(多分二十歳は越えてる)なのに16歳の小娘を晒し者みたいにしないでよ。私でなかったなら恥ずかしさと新ギルマスへの憎悪とか諸々で大変なことになってたよ。
隣でクーちゃんがその見た目に相応しい低い唸り声で新ギルマスに飛びかからんばかりの態度で睨む。
落ち着きなよクーちゃん。あれはきっと子供騙しの嫌がらせだよ。気にしちゃこっちが馬鹿を見る。
「ふふふふ。ギルド始まって以来の無能なあなたに出来るかしら」
分かりやすい煽りを聞き流して紙に書かれた文字を読む。
「(えーっと、何々)」
紙には「夜行鹿の尖った角」と書いてあった。
「・・・・」
無言で新ギルマスを見ると、勝ち誇った顔で嗤われた。何の勝負を独りでしているのこの人。
仕方ない。私は運が悪かったのだ。
さて、夜行鹿の事を調べようか。
え? 諦めないのかって?
何で?
だって私は別に必ず今日昇格しなければいけない訳ではないのだもの。焦ったって仕方ない。だからドヤ顔の新ギルマスを通りすぎて訓練所を出る。
ギルド員が慌てて何かを取り出して何か話していたけど・・ま、いいか。
さて、静かな大きな木下で私はモンスター図鑑を開く。ここは最近の私のお気に入りの何故か人が寄り付かない公園だ。
ここならクーちゃんの大きさを気にせず落ち着ける。
図鑑をパラパラと捲る。夜行・・熊。夜行・・うーんと、夜行・・鹿、あった。
夜行鹿
ナイトディーアとも呼ばれている鹿系のモンスター。その地方の強い魔力の属性で体毛の色が異なる。その毛皮と角は美しく、角は宝石のように輝き、解熱剤の薬にもなるとされる。
角の先が丸く硬い。臆病な性格なので人前に現れることは稀である。
稀に凶暴な性格の個体が居るがその個体は珍しい尖った角を持つ。
夜行と名の付く通りに夜にしか現れない。
以上、夜行鹿の説明でした。
ナニコレ。Dランクの昇格試験に稀って、夜行の物を指定するって・・・嵌められた?
誰がこんな無理難題を仕込んだかというと1人しか心当たりがない。そう、あの新ギルマスだ。でも1つ腑に落ちない。
私はあの人に何かしただろうか。
人に関わらないをモットーにしている私は極力あの新ギルマスにも関わらなかったというのに・・・何故?
疑問は尽きない私だった。




