私は検査した
ぐだぐだしております
筋肉痛もマシになった筋肉痛4日目。
今日はギルドの偉い人が来るらしくちょっと緊張して水を飲み過ぎてトイレには何度も行って━━━等と言うことはなく、何事もなくリビングで待っていた。
他の三人も何事もなく普通に過ごしている。保護者二人がこの時間帯に揃って家に居るのは珍しいけどね。
「ねえ、ライトちゃん。嫌なら断っても良いのよ」
どうやらベルさんもジンさんも勝手に決めてしまった事を悔いているらしく始終この調子で聞いてくるのだ。
「私は構いませんよ。だって持っているスキルはハズレスキルで有名なスキルだから」
そう、確かにおかしいチートじみたスキルではあるけれど世間一般的な認識は何の役にもたたないスキルなのだ。それに多分あちら側の狙いは私ではなくクーちゃんではないかと思っている。
私にテイマー系のスキルがあれば珍しいスキルと理由をつけて引き込む積もりらしい。しかし私はそんなスキルは持っていない。相変わらず『ドレスコレクション』だけだ。
それにもしもテイマー系のスキルがあったとしても、幻獣を使役するなんて不可能である。自分より強い相手を支配出来ると思うか?できるわけがない。ちなみにテイマー系のスキルはそれほど珍しくはない。
つまり、何かしらの理由が欲しいだけなのだ。
そこに私の意思は関係なく、クーちゃんさえ手に入れればそれで良いのだろう。
もしかしたら本当に善意からの提案なのかもしれない。だとしても私からしたらそれは善意でも提案でもない。無慈悲な命令でしかない。絶対にお断りだ。折角貴族との縁も切れたはずなのに、また逆戻りなど絶対に嫌だ。
「今回の検査で貴女のスキルが1つだけだとギルドも知ることになる。本当はこんなこと暴挙なのよ」
本来ならスキルとは本人の意思で黙秘することもできるものだ。ギルドとはいえそれを強制的に提示させる事はできない。貴族であっても同じだが、今回のように珍しいスキルを持つ可能性がある者を囲うのは珍しくなく、よくあることだそうだ。特にここよりも殺伐とした地域━━この街よりも難易度の高いダンジョンを持つ地域━━等ではもっと酷いらしいです。怖い。
ベルさんは検査結果で相手が諦めない場合でも何とかするから気にしないでと言っていました。が、何をどうするのかは教えてはくれなかった。ちょっと知りたいような怖くて知りたくないような・・・
それにしてもどうしてベルさんもジンさんも貴族に対して強気でいられるのだろう?
こうして私の疑問は晴れることなくギルドの偉い人が訪問するのでした。
そしてギルドの偉い人が来た。
「フォッフォッフォッ」
「(すごい髭)」
見た目がサンタさんのギルドの偉い人が見た目通りの笑い声を上げている。髪と髭が同じ緑色なのでどこか髪か髭か分からない風貌に少し「どこまでが髪?」と考えてしまったのは仕方ないと思う。
「今回の検査は勿論拒否権はある。どうしても嫌ならば断っても良いのじゃぞ?」
「受けます」
「ふむ」
だって受けないといつまでもちょっかい出されるんでしょ? だったら受けますよ。対して珍しくもないスキルしか持ってないんですし。・・・スキル名の後ろに+ってついてるけど、検査で表示されるのはスキル名までなので気にしなくても良いそうだ。
そして聞こえは悪いけどギルドマスターもグルです。勿論こちら側の。
ギルドとしても貴族に力が集中するのは避けたいそうで、この検査も予めどんな装置を使うかを教えてくれたそうだ。良いのかと聞いてみると「だってあちらも何か仕掛けてくるんだもの」と何かあったのか毒を含んだ笑みで返された。何をしたんだあちらは。
「では、この誓約書にサインを」
勿論しっかり読むんじゃよ。そう言って差し出された誓約書をゆっくり内容を噛み砕きながら読んで確認をしてから丁寧にサインした。内容は省く。要は「スキルが平凡なものであった場合、誓約事項をキチンと守ります。絶対に守ります。守れなかった場合は罰則で━━今後ギルドを利用できなくなる」と難しい言葉で書かれていた。ベルさん達がちゃんと傍で訳してくれたので簡単に理解できた。ありがとうございますホント。
その間にクーちゃんがギルドの偉い人に「何々?何してるの?」とちょっかいを出していたが、頭を撫でられて大人しくなった。ちょっと待っててねクーちゃん、今終わるからね。
しかし、ギルドを利用できなくなるってのは大変だと思う。特に領主側は手痛い事だろう。それだけ必死なのか。
そしてその日は何事もなく終わったのだった。検査は2日後に行われるそうだ。場所はギルド会議室にて行う。領主側からは領主代理の次期当主と側近の3人。私の方は保護者二人とリンクさんとなった。どうしてリンクさんがいるかと言うと、
「暇だから」
だそうです。リンクさんも留守番には辟易していたもよう。
そして検査日同日
ギルド会議室の巨大な円卓の真ん中に私は座っている。目の前には仰々しい機械が鎮座している。例えるなら色んな形のパイプやら何やらを1つにまとめたものと言ったところか。色は7色?色んな色の部品が法則性もなく繋がっている。そしてその真ん中には緑の石盤が填まっていた。
皆が見つめる中、私は黙っていた。視線を領主代理側から感じたが一切視線を向けたりなどしない。目を合わせれば何か話しかけてくるのではと思うと向けられなかった。私って実は結構貴族が嫌いなようだ。改めてそうだと自覚した。
検査方法はいたって簡単。採血も要らない。方法は仰々しい検査装置の石盤に手を乗せるだけ。ね、簡単でしょ。
とは言ってもちょっとだけ時間が掛かる。手を乗せた瞬間ピッ! はい終了とはいかないのだ。大体50秒位で計測が終わり10秒後に結果が石盤に表示される。どんな仕組みなのかすごい気になるが、理解できる自信はないので聞いたりはしなかった。
皆が固唾を呑んで見守る中、結果が出た。
“検出結果、スキル数1、スキル名『ドレスコレクション』”
予想通りの結果である。
何か細工でもしているだろうと思われるから一応言っておくが、一切の細工等しておりません。誤魔化す事など『+』が付いているかどうかの違いだけ。しかもそこまで表示しないのなら私の完全勝利確定である。
領主代理側はその結果を見てがっかりしているだろうとそちらを見れば・・・
「(あれ? なんか予想通りって言いたそうな顔をしている?)」
何故かそんなに悔しくなさそう。え、もしかして他に何か策でもあるの? 私が家を家から出すことが目的だなんて言わないよね?
話し掛けられただけで従うような可愛らしい性格してはおりませんことよ?
クーちゃんが私の足元にお座りしながら前足をちょこんと私の靴に乗せてきた。なにこの可愛い生き物。
居ても立ってもいられずクーちゃんを抱き上げると何やら背後から気配が・・
「そちらが件の幻獣かい?」
おぉっと! 領主代理様が話し掛けてきた!
ライトは「無言」と「アイコンタクト」を使った!
結果、秒で保護者が飛んできた。うん、横に居たからね。飛んで来ると言うより横で待ち構えていたと言った方が正しいからね。
そんな「然り気無く話し掛けて気を引こう」作戦は通用しません。ナンパじゃないのだよ。
━━━まぁ、顔が良いそうなので若い女の子はコロッと騙されそうだが。
でも残念。何せ私は精神年齢ウン十歳だからね。基本的に色恋沙汰には疎くて枯れておりますから。それに見目麗しいさなら保護者二人+αで鍛えられてますから。目の保養通り越して最早普通に見えてくるレベルでなれてますから。
さて話しかけたは良いものの、保護者二人に早々に阻まれ何も出来ずに離された領主代理様はちょっと残念そうな顔で苦笑いだ。逆に凄いなこの人。見るからに保護者二人が許さない様な事を平然とやってのけた。ここまで来ると尊敬します。
だからと言って仲良くはなりたくないけどな!
あと、そこの護衛と側近! ハズレとか無能って聞こえてるからな!
検査前にお互いにサインした誓約書をギルドの偉い人が読み上げ無事にお互いがこれ以関わらない事が正式に決まった。
読み上げられた時点でお互いに干渉出来ないらしくお互いに無言のまま一礼をしてその場から出ていった。
重苦しい会議室から出ると肌を刺す冷たい風が頬を刺激した。うーん、暖かい場所から一気に冷たい場所に出ると辛いね。
っと、そうじゃなくて。
私はベルさんに伝えようと思っていたことがあるのだ。
ギルドから要請があればクーちゃん次第で協力に同意するという考えだ。最初は二人は渋った。しかしジンさんが
「クーちゃんの同意があれば良いんじゃないか?」
「ん~、そうねぇ━━━クーちゃんだけなら良いのかも知れないわね」
とのこと。
私込みでないのならと条件はついたが森の原因究明に協力することになった。
別に彼等に歩み寄ろうとか、ちょっと可哀想だとかこれっぽっちも思ってませんから。
ただ、私の収入源でもある森の異変は解決しないとダメだと思っただけですから。
と言い訳をしてみる私であった。
これは名実ともに能無しと証明された私の話。
影口で無能呼ばわりされたことに少し悲しかったなんて死んでも言わないぞ!
そう決心した私の頭をリンクさんが優しく撫でるのでした。
続く




