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私はテイマーではありません 6

なかなか思うように進みません


 物凄い音を経ててゴブリンや狼系の魔物やらが飛んでいく。そしてついでに木々も薙ぎ倒していくのは仕方ないと思う。今手加減が非常に難しいのだ。手に持つ武器は丸太だった。槍を壊すのは憚られたのだ。丸太なら折れても現地調達出来るためのチョイスだ。


 クーちゃんは得意の体当たりでモンスター達を撃破している。その姿はとっても頼もしい。



 ジンさんとベルさんは怪我人の3人を担いで後ろからついてくる。リンクさんはその二人の護衛だ。


 私? 私は退路を切り開いているところです。


 森の木々も一緒に倒しているが、後で森の管理人の森エルフの皆さんには頭を下げないといけない気がする。多分直接会いにはいかない。だってスキルの説明が面倒だからね。


 薙ぎ倒したモンスターはリンクさんが片っ端からリュックにしまっている。ギルドに報告するためと原因究明のためもあるので確りと持ち帰らないと。


 行きよりも時間をかけて進み出口付近に着く。私は直ぐ様持っていた丸太を放り投げて私が無双したことを隠す。実はマップに街からこちらへ向かってくる▼があるのだ。勿論敵意がない青い表示だ。



 直ぐそこまで来ていたので私も慌てていた。リンクさんが私の前に出て多分ギルドの人達との間に入って壁になってくれた。しかし倒したモンスターがまだ数体そこら辺に転がっている。


 しまった!バレる。


 そう思ったが後の祭り。ギルドの人達はこの惨状を見て私たちを凝視する。そりゃそうだろう。子供が居たら驚くだろうし、このモンスターがゴロゴロ死んでいるのだが驚きを通り越して逆に冷静になるだろう。


 何か言いたそうにする彼等にどう言い訳をしようかと考え悩んでいると



「あら、遅かったわね」



 男性一人を俵を担ぐように担いだベルさんが朗らかにいつもの調子で話しかけた。勇ましいと思っているとニッコリと微笑んだのでもうこれ以上は心の中でも思わないようにしようと思う。心を読むなんて流石リンクさんと親子だと思った。



「あぁ、これね。これはクーちゃんが暴れたのよ」



 スゴいわよねぇ。そう言って怪我人をギルドの人に引き渡す。後からやって来たジンさんも二人の怪我人を引き渡していた。ジンさんも力あるなぁ。自分よりも重そうな人を二人も担いで重くなかったのかな。



「流石幻獣だよな。ウチの子供たちを護りつつ、俺達の所まで連れてきたんだからな」


「本当にクーちゃん(とライトちゃん)は凄いわね。勿論ウチの子供たちの度胸も凄いけどね」



 勿論後でお説教よ。そう言われてウインクするベルさんは私のスキルを隠すことに全力で協力してくれる。そして少しギルドに嫌味を言っていた。喧嘩を売るのはよした方が良いと思うんどけどなぁ。


 続けてジンさんもチクリとキツいことを彼等に言っていたので少し何かあったのかと勘ぐってしまうが、それは私が知らなくても良いことだろう。


 クーちゃんは「スゴいでしょ!」と胸を張ってアピールしている。でも私と目が合うと「まかせて!話をはぐらかすから!」とでも言っているかのようににこりと笑ったように見えた。クーちゃんかわいい。



 彼等も幻獣という理由から大して不審がってはいない。それにベルさんとジンさんは上位冒険者だ。手間取って時間はかかったが出口近くまで自力で戻ってきたのだと勝手に勘違いしていたので私は知らんぷりをした。


 話を聞いているとどうやらこの人達はギルドと領主様の私兵達だと分かった。何か後から次々と重そうな鎧を着込んだ兵士たちがやって来た。正直遅いと思う。私たちがベルさん達に合流した時点でも危なかったかもしれないのに(実はポーションも残りわずかで危険だったと後に判明)、この人達は今から森に入るつもりで来たのだ。救出目的なら間に合わない。


 先に調査に入った人達が行方不明になった時点で救出に乗り出すべきなんだ。でも色々と彼等も制限があるのだろう。貴族のあれこれなんて私には分からない。



「━━━である。我々は救出と調査を仰せつかったのだ。これを」


「はいはい。では今後の調査は任せるわ。私たちもうクタクタなのよ。何せ2日も森の中で右往左往していたから」


「そ、それは確かに。だがこちらも情報が━━」


「ギルドの方に倒したモンスターを提出しておくわ。後、毒に気を付けてとしかアドバイスは出来ないわね」


「これだけの部隊なら毒消しもポーションも潤沢だろうから大丈夫だろうとは思うけどな。でも気を付けろよ」


「む?」



 ベルさんのアドバイスには付け足す



「毒消しは予防はしてくれないぞ。使えば減るし、人数が多ければ被弾も多いだろうし・・・油断すると全滅するぞ」



 ジンさんは含みを持たせて忠告した。この人達は領主様の私兵なのだろう?ならそこまで心配しなくてもと思いかけて、そういえばあの後継者問題で詰めが甘いと言われていたのを思い出して納得した。うん、主の詰めが甘いと仕える人も詰めが甘い事だってあるよね。違うと思いたいがどうしてもあの騒動が頭を過る。



「普通のゴブリンには無い知恵がある。大所帯で遭遇すれば逆に危険かもな」



 その言葉に成る程と妙に納得する。ゴブリン達はベルさん達の周りを囲っていた。囲っていたが、何かを待つかのように攻撃しようとはしていなかった。最初はジンさんが何か結界的な物を張っているのかと思ったがそんなことはなかった。後から聞いたがリンクさん曰く、ジンさんは魔法の類いを使うところは見たことがないそうだ。まさに物理で殴る系の御方らしい。


 そう、ゴブリン達はベルさんや怪我人達が力尽きるのを待っていたのだ。待っていれば勝手に相手が自滅すると分かっていたから囲うだけで攻撃を仕掛けていなかったのだ。賢い。



「ならば尚の事助力を」


「だから、疲れているんだって。聞いてなかったのか」


「2日も森の中に居たのよ。見えないでしょうけどこっちはもうフラフラよ。明日に出来ないかしら」



 ベルさん達は断るも兵士達も引き下がらない。それもそうか。だって彼等も命が惜しい。危険だと分かっているならその危険を少しでも減らしたいのは当たり前だ。必死にベルさん達に協力を頼むその様子を見て私はなんて無謀だったのだろうと改めて思った。後悔はしていないが。だってベルさん達を助けられたのだ。



「ならばその幻獣に協力を頼みたい」


「あら、それは私たちに言っても仕方無いわよ」


「俺たちは飼い主でもない。家族の一員ではあるけどな」


「キャン!」



 わーい、家族って認められた! クーちゃんは私にかけ寄って来て嬉しそうに吠えた。うん、良かったねクーちゃん。私も君は家族だと思ってるよ!


 そのしぐさが可愛くて思わずクーちゃんを持ち上げて頬擦りすると「キャー♪」と恥ずかしがりながら尻尾を振っていた。益々可愛い。・・・あれ?クーちゃんの尻尾ってこんなに大きなまん丸だった?


 クーちゃんの尻尾は見えないほど毛並みに埋もれていた。しかし今はもうひとつ体があるように見える程のまん丸尻尾が存在した。いつの間に育ったの?



「もしやこの子供が幻獣の飼い主か」


「・・・」


「・・・・(飼い主じゃないです。親代わりです)」



 口に出して言いたかったが口は動いてくれなかった。結果的に良かったのだろう。私の横でクーちゃんを撫でていたリンクさんはもう一度私の前に出て兵士との間で壁になった。すると兵士は少しムッとしたが私が人見知りだと思って咎めることはしなかった。


 しかし私がクーちゃんの飼い主であるということは彼の中でも決定してしまったらしく、リンクさんに遮られている状況でも私に協力を要請してきた。困ったぞ。


 そんな返事に困る私にベルさんが助け船を出してくれた。



「あら、それはできないわよ」


「な、何故だ? 幻獣だけの派遣ならば子供は安全であろう」


「そうじゃないわ。だって出来ないもの」


「(あ、もしかして)」


「上位冒険者の私達なら兎も角、この子はまだEランクよ。ギルドの依頼も出来ないもの。それに━━」


「依頼ではなく要請だと」


「話は最後まで聞きなさい。それにね、この子は貴方の雇い主に関わらないという誓約をたてているのよ。無理なの根本的に」



 そう。私はあの件でここの領主様の家に関わらない事を誓った。そしてそれは彼方も同じ。お互いに関われないのだ。

 しかし緊急事態でもそれは有効なのかと聞かれれば怪しいところだ。



「勿論「如何なる事でも」という文言を使っているのよ。その「如何なる事」は適応されるわ」



 だから無理なの。さあ帰りましょうか。そう言って私は気が付くとジンさんにおぶられ家に帰るのでした。後ろでは未だに何か言っていたがベルさんもジンさんも無視して歩みを止めず帰路についた。リンクさんはクーちゃんを抱っこして横を歩いているところを見るに多分兵士の誰かにクーちゃんを近付けさせない為だろう。


 こうして今回の件は一応解決したのでした。



 そして私はまたもやベットに臥せる事になるとは思いもしなかったのである。




 これは蛮勇を振りかざし救出に乗り出して成功するも、体の限界を知らずスキルを使った為に再び臥せる私の話。



 やっぱり実力以上の事を無理矢理すると体に悪いと改めて思い知った私であった。全身筋肉痛は辛いね。




 丸太を振り回したのだから当たり前である。






 

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