私は決心した
決心したかな?
毛玉ことクーちゃんを頭に乗せて街を歩くと人の目線が辛い。行き交う人が二度見をしていく。うん、私もそんなのが居たら二度以上に何度も見直すよね。今の私はいつものマントを被った格好をしていてその上にクーちゃんが乗って居るのだが、何故かご年配の方々に拝まれている。
クーちゃん?君ってもしかして神獣だったりします? え、違うの。そっかぁ、なら何で拝まれているんだろうねぇー。
あ、そうそう。クーちゃんの主食は何と何でも食べる雑食でした。食費に困らないようで安心した。とはいえ、変なものを食べさせるわけにはいかないので今のところは果物やナッツ類を食べてもらってます。この街の良いところの1つが森が近いから果物やナッツ類が年中安いことだね。しかも年中品が揃っているから助かる。それにね、前世では高くて中々食べれなかったものまであるんだよ。いやっほーい。機嫌も良くなるってもんですよね。
そんなわけで、私は今クーちゃんのご飯を買いに来たところです。
一人で来ているのかって? 勿論護衛?もいますよ。しかもベルさんは「ライトちゃんを守ってね二人とも」ですってよ。え、生後1日未満のクーちゃんに守ってもらうの?
ひ、否定できない。いろんな事に巻き込まれてきた私には自信がありません。スキルで防御力は高いけどそれも危機回避にはあまり役立ってない気もするし。やっぱり使う人によって役立つかどうか変わるのかなぁ。まぁ私だしね。使いこなせてないんでしょうな。
「きゅーん(たしたし)」
どうしたのクーちゃん
「きゅー(くいくい)」
「ん?・・・あれかな?」
クーちゃんが何かを伝えたかった様で私の頭を短い前足でてしてししていた。それに気がついたリンクさんが何を伝えたかったのか見抜いたらしく、クーちゃんに合っているか聞いている。
私よりクーちゃんと仲良くなっている気がする。名付け親だからかな? それにしても、クーちゃんになつかれているとは・・・・リンクさんに嫉妬である。
私もクーちゃんに頼られたい!
奇しくも私の保護者二人と同じ考えに至っていた。何故だ?
クーちゃんが興味を持ったものはナッツの詰め合わせ。しかも好きに何を入れるのか選べるタイプ。しかも安い。炒ったナッツの良い匂いに私も興味を持つ。
ナッツの匂いって何で魅力的なんだろう。香ばしくて大好きだ。
「おや、ベルさんとこの子だね。いらっしゃい、何が欲しいんだい?」
「クゥーン」
「・・あははは、ウチのナッツは幻獣にも人気だとは」
「ちょ、クーちゃん」
「勝手に商品に手を付けない」
「キュ?」
クーちゃんは私の頭から突然飛び降りて商品棚に飛び乗った。頭に乗られても全く重さを感じないクーちゃんはやはり相当軽いのだろう、商品を落とさずにお目当てのナッツの場所に移動してナッツの入っている袋に手を入れた。子供がやってしまう失敗の1つ、買っていないのに袋を開けてしまうに等しい行為だ。これは怒らないとダメかと思うと、
「あれはまだお前のものじゃない」
そう言ってクーちゃんを棚から降ろすと鼻をデコピンの様に少し優しく弾いた。クーちゃんもそれほど痛くないのか「ダメだった?」と頭を傾げて見つめていた。
ウチの子可愛すぎやしませんか! 何あのあざとさ。わざとじゃないとかウチの子の可愛さは最終兵器並みです。
しかし、一応親は私なのでここは心を鬼にして悪いことと教えないと。リンクさんが言ってしまったが私も言わないと。
「クーちゃん、お店のものとか他人の物は触ったらダメだよ。特に食べ物はダメ。分かった?」
「キューン(こくこく)」
私の言っていることを理解しているのか頷く。もうホントにクーちゃん可愛すぎ!
一人脳内でクーちゃんの可愛さに悶えていると、お店のおじさんが
「あー、良いの良いの。幻獣ってのは綺麗好きだから。存在自体が綺麗なもんなのさ」
おじさんが言うには友人の一人が幻獣研究をしていて良く話を聞いていたらしい。幻獣とは生き物とは違い、獣の姿をした精霊ではないかと研究者は考えているそうだ。確かに生まれて直ぐにふわモコだったねクーちゃん。
それでも商品に勝手に触るのはダメなんですけどね。
幻獣とは謎がまだ多く、不思議な存在なのだ。
気を取り直して、ナッツを買う。クーちゃんが選んだのはマカダミアナッツだった。君ってけっこうグルメかい? 私は自分用にもカシューナッツとピスタチオを買った。カシューナッツとピスタチオは大好物なのだ。もうこれがあれば大体は満足。勿論他にも好きなものはいっぱいあるが。
リンクさんはピーナッツと胡桃とヘーゼルナッツを少量ずつ買っていた。後、ベルさんからの頼まれもののアーモンドを買っていた。お菓子に使うそうだ。楽しみだ。
クーちゃんは他にも他にも要らないのかと違う種類も聞いてみるも要らないのか首を横に振る。私も本人が要らないならそれで良いかと多目に買っておく。まだどれくらい食べるのかハッキリとは分かってないからだ。果物は結構食べていたけれど、ナッツは果たしてどれ程食べるのだろう。
受け取った袋は重くてとてもじゃないけど家まで持って帰るなんて無理だが、私たちにはアイテムポーチがある。重さなんて容量さえ気を付ければへっちゃらだ。
家に帰ってナッツを食べるのが楽しみ。
そして私たちはギルドに来た。実は幻獣や魔獣を飼育する場合、ギルドに届けなければならないのだ。特に大きい街では必須である。住民を守るためと幻獣・魔獣を悪質な者から守るためでもある。
クーちゃんはスキルで取り出した卵から生まれた子だけれど、ベルさんとジンさんがギルドに取り成してくれて森で見つけた卵から生まれた事にした。勿論ギルドにも私のスキルは知らせてはいない。保護者曰く「ギルドも一枚岩ではないから信用しすぎるのは危険」らしいです。ギルドマスターも人ですからね。間違うことはあるでしょう。
そしてクーちゃんは来て早々ギルドの皆さんをメロメロにしてしまいました。この子の魔性か?いえ、天使です。
顔を手で覆い天を仰ぐ人、悶えて床を転がる人、鼻血を出してダイイングメッセージを残す人(ナニコレカワイイと書いてました)、気絶して動かない人、固まる人。本当にこのギルドが大丈夫かと心配になった。
いち早く正気に戻った受付さんが登録の手続きを物凄い早さで終えてクーちゃんを撫でても良いかと聞いてくる。
「クゥ?・・・・・キューン!」
え?何? と言っているクーちゃんはちょっと躊躇してから受付さんの顔を見てから元気にうん、いいよ! と返事をした。うん、可愛い。もう可愛いしか言ってないかもしれないが本当可愛いからしかたない。
クーちゃんは前足に特別製のリングを填めてもらった。これは登録証といって誰に飼育されている何という幻獣・魔獣かという証明とギルドが身柄を保障しているという証だ。取ることは出来ないが付けているものに合わせて大きさを変えるので今後大きくなっても絞まることはない優れもの。幻獣側にとっても不利な事は無いので安心してねクーちゃん。
ちゃんと鑑定もして確めたよ。説明の通りでした。
こうしてクーちゃんは晴れてウチの子に正式になりました。ギルドの説明では例え国が幻獣を欲しがっても横暴なことが出来ない様にもなっているので安心してほしいと聞いた。昔大変な事をしでかした王族がいて、多大な損害を出した事でここまでするのだとか。
その王族がどうなったかは考えるまでもない。この世からおさらばしましたよ。
毛並みで埋もれた前足を必死に見せて「どう?似合う?」と聞いてきたので似合っていると答えるととっても嬉しそうに跳び跳ねて私たちの足元をクルクル回る。
ホントに~~~~~~可愛い!!
また尊すぎて倒れる人を作るクーちゃんでしたとさ。
足元を駆け回るクーちゃんを抱き上げて目線を合わせる。首を傾げるクーちゃんは可愛い。「なぁに?」と聞いてくるクーちゃんに話しかけた。
「まだまだ自分の事も守れていない私だけど」
「クーン」
「私は君を守ってみせるよクーちゃん」
「キュウ!」
例えモンスターに殴られても、痛くて泣きたくなっても、君を守るからね。クーちゃん。
これは私がクーちゃんを守ると決心する話。
だけどクーちゃんは見た目は可愛いが幻獣であることをすっかり忘れている私なのでした。
あ、ギルドマスターが鼻血出して倒れた。




