表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/63

私は吹っ切れた

吹っ切れたと言うかちょっと壊れた感じ?



 無一文とは何とも虚しいものである。朝御飯は食べられたが、お昼は抜くことになる。


 それもこれも、貴族であることを捨てることにお金が掛かるからだ。私にとってはすがり付く物でもないのに、捨てるには金が掛かるなんて……彼らとの縁が切れるのは有り難いが、無一文はキツイ。


 でも、後悔はない。貴族だった私はもういないし、家族でもない。お金さえ出せば絶縁できる法に文句を言ってくれ。ま、文句は無いんじゃない?役立たずが居なくなって、清々してるだろう。後妻として売り付けて金を得られなくはなったけどな。



 言い訳として述べておくが、お婆ちゃん侍女さんは手続きをしても余る金額を遺してくれていた。だが、私が使ってしまったのだ。


 何に使ったか? 薬代につかったのだ。勿論お婆ちゃん侍女さんのだ。この世界━━とは言ってもこの村周辺ではだ━━では、たかが風邪薬でも高い。平民の1日分生活費が10ギル位だとして、薬代は100ギルだ。ね?高いでしょ?


 お婆ちゃん侍女さん━━もうお婆ちゃんで良いよね。本当の祖母おばあちゃんみたいなものだし━━は要らないって拒否したけど、買ってしまったからには飲むしかないと宥めて、薬を飲んで貰った。まぁ、大して効果無かったんだけどね。


 しかも、この世界のお墓は家族共有ではなく個人のものなので━━土葬だからスペースが要るのです━━墓石が必要になった。場所代という概念が無くて良かった。

 そんな訳で墓石代とお爺さん━━私は会ったことがないがお婆ちゃんの旦那さんならお爺さん━━のお墓の修繕もついでにしたので結構な出費になったのだ。お人好しと言われるだろうが、後悔はない。ちなみにお婆ちゃんは「墓石なんて要らないよ。木でいいよ」と言っていた。無縁仏でも良いとか言っていたので亡くなってからの私の独断だ。これが私にできる恩返しだと思った。


 ……でも元はお婆ちゃんのお金なのだから、この使い道で良いと思うのだ。




 だが、先立つものがなければどうにもならない。


 後ろ髪を引かれる思いで市場から離れる。買えないなら居る必要はない。村に居ても何もならないので、一旦村から出て少し大きな木の下に座り込む。


 さて、どうしたものか。所持品は、日持ちのする干し肉1週間分と、少し古いが丈夫な水筒に入った飲み水。薬草学の本に、切れ味はソコソコだが丈夫な解体用のナイフ。少し端が破れている地図と、お婆ちゃん直伝ハチミツの飴。あ、モンスター図鑑もあった。



 私は見たことがないが、この世界にはモンスターが存在する。流石は剣と魔法の世界。生活環境は中世あたりかな?


 そして、今のところ役に立ちそうもないステータス画面……ステータス画面?


 あれ?ステータス画面なんて、今まで出たか?



 ステータスとは、この世界の生き物の能力を数値化したものだ。普通なら専用の装置で、生まれて直ぐに計る。そして、書類にして、役所に提出するのだ。だから、私は生まれて直ぐに見捨てられたのだが。今はどうでも良いことだ。


 そう、ステータス画面など、普通なら無いものである。


 まるでゲーム画面に出るような感じで、HP・MPなどの表示と数値が並んでいる。



 名前 なし


 種族 人間


 性別 女


 レベル 1


 状態 正常


 HP:97/100 MP:1437/1450


 物理攻撃 20 魔法攻撃 50

 物理防御 30 魔法防御 40

 速さ 10 回避 5 命中率 10 運 100


 称号 『転生者』「天涯孤独」


 スキル  『ドレスコレクション+』




 へー、回避一桁かぁ。これは戦闘になったら終わりだな。それにしても運が100って嘘でしょ。運が有ればこんな事にはなってないよ。


 まぁ、ネグレクトされた赤ん坊が生きてこれたのも、この運のお陰かな。お世話してくれる人が居なければ死んでたもの。



 自分のステータスについて、言いたいことは色々とある。例えばMPと運が平均よりも可笑しいほど高い点。それにしても他が全部平均以下とは。

 更に言えば、この『ドレスコレクション+』の『+』とはなんだろうか?私の誕生時のステータスの書類には『+』なんて書かれていなかったと思うが。


 そう思いながら、視界に浮かぶステータス画面の『ドレスコレクション+』の部分を触る。触ると言っても、目に見えているだけで触れるものではないとおも━━━





 『ドレスコレクション+』


 『ドレスコレクション+』とは。通常の『ドレスコレクション』を使い続ける事により、スキルアップしたことによって変化した『ドレスコレクション』の上位版。

 項目から好きなドレス(衣類、防御、宝飾品、エトセトラ)等を選び着用できる。



 うん、説明画面だね。



 本当にゲームみたいだ、と思いながら、説明画面をスクロールする。この時の私は色々と吹っ切れていて、何やらおかしいことも受け入れていたのだと思う。色々とおかいしと気が付いたのは結構後になってからだ。




 『ドレスコレクション+』内のスキルを修得出来ます




 ステータス画面の上の方に「!」マークと共に表示された。本当にゲームかよ。


 その画面をスクロールしていると




 ・ワールドカタログ『new』!

 ・重ね着上手『new』!

 ・絶対領域『new』!

 ・節約家『new』!



 なんだこれ。そう思いつつも、私は上から順に説明文を出して読んでみた。



 まず、「ワールドカタログ」から。これは、何だかぶっ壊れ性能な気がする。この世界に存在する衣類を、性能なども完全再現して取り出せるスキルらしい。ただし、『ドレスコレクション+』自体の性能で他人への譲渡不可な為、これでお金は稼げない。出来たとしても、世界に多大な影響を与えかねないのでしないが。


 次は「重ね着上手」だ。これは、何枚でも色々な服を着られるスキルの様だ。つまり、防具等を、着膨れさせず能力の重複等を可能にする物らしい。寒い時に着膨れを気にしないで厚着出来るね。私は寒いのは嫌いなので、有り難い。しかも下に着た服は不可視になる━━下着や肌着は別━━らしく、例えば厚手のダウンコートの上から袖無しのワンピースを着ても、ダウンコートは着ていないように見え、肌を出していても寒くない。しかも、出している肌に触っても、ダウンコートではなく素肌を触っている触感なのだそうだ。勿論、下に防具を着ている場合、剣で斬り付けられても防具の防御力が高ければ傷ひとつ付かない。

 これは、素早さも回避もダメダメな、私のような者にとっては有り難い。


 続いて「絶対領域」。これは最初に何ぞ?と思った。説明文を要約すると、アニメとかで良くある見えそうなのに見えないスカートの中とか、いや、それ見えるだろと思うような服、戦闘しても着崩れしない着物とか。つまりは見せたくないものは見せない様にするスキルでした。ほら、防御力が高い防具って派手だし、もしかしたら、ビキニアーマーなんて何処に防御力があるのかって防具をずれないようにするとか。ビキニアーマーは絶対に着ないけどな。

 着ているものを擬装することも出来うで、これも有効か。


 最後の「節約家」は、単純に服を具現化している際のMP消費を抑えるスキルだった。便利なので、これは絶対に取ろう。私のMPの数値は高いが、消費を抑えられるなら有り難い。



 まず始めに「節約家」を取得してみると、心持ち体が軽くなったような気がした。常にMP消費は、やっぱり体には良くなったのか。とは言え、感覚だけで表示されたMPに劇的な変化はなく、変化が分かるのは明日以降だと思う。


 さて次は何を取ろうかと画面を見ると、ある事に気がついた。




 あれ?スキル取得にポイントとか消費しないの?



 この疑問は、次のスキルを取ったことで解った。



 あ、これはスキルポイントとかないわ。




 ならばと、私は全部のスキルを取る事にしたのだった。




 これは、また一歩最強に近付いたかもしれない話。




 でもまだ気付いていない、そんな私の物語です。






 主人公は抜けてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ