私は拒否した
貴族の青年が飛び出してきた!
ライトは「逃げる」をつかった。しかし貴族からは逃げられない!
・・・はい。どうもこんにちは。ライトです。
ただいま私はギルドでクエストを受注しておりました。いつもの採取クエストです。ようやく保護者からクエストを受ける許可を貰えたのでルンルン気分で受付さんにクエストの紙を見せて、さあ出発! と思った矢先の出来事でした。
勿論リンクさんというお守りは健在です。本当にご迷惑お掛けして、え? そんなことない? そうですか?
因みに私はまだ声がガラガラで、喋るのは我慢しております。本当にあの風邪はたちが悪い。これも保護者二人を心配させる要因なんですよね。
おっと、考えに浸りすぎて肩をトントンされました。すいませんリンクさん。私は話せないので事前に決めた通りの対応をお願いしますね。
「ん」
分かったそうです。本当にこの人人の心が読めるんじゃないですか? 恥ずかしいので程々にしてくださいね。
「・・・この子は喉の調子が悪いので、後日ご用件をお聞きします」
そうそう。今回は遠慮します。後日っていつ? 知りません。
これには相手も仕方ないと引き下がってくれ━━━
「いや、直ぐに済む」
ませんでした。やっぱり貴族って自分が中心だと思っていらっしゃる? そんなことない?
そんなこんなで、今ギルドの一室を借りて各々席についております。会議室の様な部屋に真面目な表情でこちらを見つめる貴族の青年は一向に口を開かない。開かないというよりも、開けないのだろう。何せ私の両脇にさっきから青年を厳しい目で見る保護者二人が居るのですもの。
二人は丁度、ちょうど!(ここ重要)ギルドに居たので呼ばれました。本当に、ご迷惑お掛けしてすみません。
青年にはお付きの人(多分護衛も兼ねている?)が付いていてその方は無表情でこちらを、と言うより虚無を見つめているようだ。視線が会わないようにしているのか?
それはいいとして、保護者二人の殺気?がスゴい。ベルさんの隣のリンクさんに目線でヘルプを頼むも
「(無言の否定)」
と無理だと首を振られました。リンクさんのご両親でしょ!どうにかなりませんか?
「(無表情+諦めの境地)」
だめでした。もう私たち子供に出来ることなど無いのです。
大人達の(青年も大人と仮定して)無言の攻防は続きます。攻防と言っても私にはにらめっこをしているようにしか見えません。どちらが喋ったら負けだとでも言うのでしょうか?
そろそろ終わってくれないと私のお腹の時計が正確に時を告げてくれるでしょう。
こんな他人の前で奏で━「先の件はすまなかった」
唐突に私のお腹の時計問題はどうにか解決しそうです。
青年が謝罪をしてきた。それもテーブルに頭を付けそうな位の深い謝罪。これはどう対応するべきですか?
「頭を上げてください。時期当主様に頭を下げられたら、許す以外の選択肢がないではないですか」
ニッコリ。今日もベルさんは怖いもの知らずでございますね。
これには私と貴族の青年側が固まった。それはもうピシッとヒビが入るからいには固まってました。固まると言うよりは凍るかな?
「その、お二人にはご迷惑を━━」
「あら、私たち夫婦だけでなくうちの子達も迷惑でしたよ」
きっと誤解があったのね~。そう言って笑うベルさんは毒のある綺麗な花の様に美しかったです。そしてジンさんは一言も話さず沈黙したまま相手を睨んでいます。
もう、私帰りたい。帰って良いです?だめ?ダメですよね。
こんな態度をしている二人に貴族側の対応はなにかに怯えるような感じがする。護衛は直立不動で何を考えているかは分からないから論外。あ、護衛の他にも居たよ。その人はかなりベルさんの毒がある笑みとジンさんの睨みに怯みすぎて使い物になっていない。
人選ミスか?いえ、この保護者二人が別格なのです。
何とか持ち直した青年はどうしたら許してくれるのかと小難しい言葉で聞いてきた。難しすぎて私の頭には「どうしたら許すの?」のニュアンスしかし入ってきませんでした。
するとベルさんは、ニコッと笑いながら
「あら、だって私たち貴方に自己紹介されてないわ。いったい何の用で来たのかも分からないのに、許すもないんじゃない?」
ね? と私たちに同意を求めてくるのは止めてもらいたいのですが。それに同意するのはジンさんだけで━━あ、リンクさんも頷くのね。
味方が居ない。何かこのままこの態度を続けていたら不敬罪で捕まりそうだ。い、胃が痛くなってきた。
静かに冷や汗をかいて胃を痛めていると青年が今更━━━改めて自己紹介を始めた。
「私はこの土地の領主の息子、ガラディともうします。」
「ご丁寧にどうも。私はベル。こちらは夫のジン。息子のリンクと後見人をしているライトです。」
あ、自分で自己紹介をしないといけないかと思ったらまとめてしてくれた。良かった。リンクさんは一応会釈をしたけれどジンさんはそのまま無言。・・・貴族が嫌いなのだろうか?
「その、我が家の問題に巻き込んだこと実に申し訳無く」
「そうね」
「つきましては、こちらから━━」
そう続けようとしたが、ベルさんに途中で割ってはいられる。足を組み直し青年に向ける笑顔はもう厳しい顔つきに変わっていた。美人の真顔と怒ったときの顔は怖いとは本当らしい。
「単刀直入に言うわ。何も要らないからもう関わってこないで」
「しかし、」
「貴族の慇懃とかそんなのは私たちには関係ない。貴方の問題をさっさと片付けなかった貴方の落ち度よ。それが私たちに何かを渡したところで、落ちた信用は戻らないの。ハッキリ言うわね。貴方の言葉を信頼なんてできない。こちらからキチンと意志を伝えたはずよ。「こちらに関わらなければこちらも批難などしない」と。それを自分の罪悪感を払拭したいという理由で関わってくるなんてどういうつもりなの。私たちは今後一切関わらない。そちらに不利な噂を流したりもしない。信じられないのなら書面で書きましょうか? いい加減私たちをそっとしておいて。もう貴方たちにはうんざりなのよ。分かる? 小さな子供が貴族に頭を下げられる恐怖。許したくなくても許さないという選択肢をさせない。それは謝罪なの?貴方の独り善がりの━━━」
「ベル」
「━━━━はぁ。つまり、もう許しますから目の前に立ったりしないでくれます? 特にこの子たちには関わらないでください。どれ程貴族が無力な者にとって恐ろしい存在か知るべきです。
もしも、今の忠告を無視したならば私は報復いたします。
分かりましたね」
まるで捲し立てる声はピアノの端から端まで鍵盤を撫で続ける様に滑らかに、内容が物騒でなかったなら子守唄にでもなるような声だった。
シン、と静まった室内で「ぐーうぅ」と場違いな音がなった。
私のお腹の時計は本当に正確で、場所を選んでくれませんでした。
私のお腹の時計の音だと気が付いたリンクさんが
「そろそろ終わりにしないと、また(ライトが)胃を痛めるよ」
「それは大変!直ぐに帰りましょう!!」
「うんそうだね」
さあ帰ろう。そう言って私の手をとってさっさと扉まで誘導するベルさんとリンクさん。しかし先程からベルさんを諌める位で喋る事なく睨み続けていたジンさんは未だに座っている。
それを私は見つけたがリンクさんにちょっと強引に部屋から連れ出された。ベルさんは胃薬を持って「大丈夫?薬飲む?」と私の横でわたわたしていた。彼の時のベルさんとは似ても似つかないのであの時は夢でも見ていたのかと思うほどだ。
「これに懲りたらもう関わろうとするな」
「━━━はい」
「お前たちに俺達は協力しない。爵位を継ぎたいなら自分でどうにかしろ。俺は━━お前ら貴族に協力なんてしない。それはお前らが一番良く知っていることだろう。次はない。あいつは優しいから命までは取らないだろう。そう踏んでたんだろ?
俺は躊躇しないからな」
そう言って彼も扉に向かう。ノブに手をかけてもう一度彼らに聞こえない声で
「二度と、貴族に協力なんてしない。 ましてや王族なんて以ての外だ」
その時の顔は怒り以外の感情を全て落としてしまったかのような、壮絶な怒りの表情を浮かべていた。
その男が部屋から出ると護衛の男は脂汗をかいて膝をついていた。無表情でいたわけではない。護衛は当てられた殺気で動けずにいたのだ。
貴族の青年は後悔した。自分はとんでもないモノを敵にまわすところだったのだ。
これは私の知らないところで貴族の青年を恐怖のドン底に落とした話。
「胃が痛い時はカボチャかな?それともニンジン?俺はニンジン嫌いだけど、必要なら俺はニンジンを食うことも厭わない!」
「ライトちゃんが理由でなくても食べなさいよ。それともピーマンも付けましょうか?」
「調子に乗りました。ピーマンは肉詰めか味付けの濃いものにお願いします!」
「胃が悪い子に味付けが濃いものを出すわけないでしょ!」
「(え、胃が痛い時は薄味オンリーだと!?)」
「・・・・今日も平和」
全く怖そうに見えないジンさんに私は何があったかも気が付かなかったのでした。
胃が弱っているときは油物と塩分と消化に悪いものは控えようね!地獄を見るよ。




