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私は剣の存在を思い出した

皆様覚えていますか?


 思い出したのは突然だった。



 私は日課の素振りも錬金術の練習も素材の収集も全て終わらせ暇な時間を堪能していた。


 ベットでゴロゴロしながらお菓子を食べるのは至福の時間だと力説したい。怒られて出来ないことをやるって楽しいな。でもこれ以上お菓子を食べるのはダメだ。ぽっちゃり待ったなしだ。


 ベットに溢れたお菓子のクズを払い除けてついでに床のゴミも掃除しておこう。こまめにしているのでベット下も埃が溜まっているなんて事はない。

 錬金術は清潔な場所で行わなければならないと口を酸っぱく言われたのだ。口にするものを作るのだから当たり前なのだが。この世界の衛生面は信用できないと思い始めたのでベルさんの指摘もわかる気がする。


 そう言えばベットの下ってどうして隠し場所に選ぶ人が多いのだろう。そして見付かったら危険なものがお母さんにバレるんだよね。ほら、エロい本とか薄い本を見付けられてベットの上に並べられたとか。アレってホントに有るのだろうか?

 前世の私は隠すような物を持ってなかったので分からない。だって興味がゲームの方に向いててそっちに使うお金も時間も無かったんだもの。



 あ、何か落ちてる。・・・・ペーパーナイフか。何でこんなところに落ちて━━━


 何故落ちていたのかを考えていると突然ある記憶が頭を過った。



 何かを引きずりながら歩いていた。うん、確かに布で巻かれた長いものを引きずっていた気がする。


 そこまで思い出すとあとは一気に鮮明に思い出した。


 あ、腹痛で倒れる前に拾った剣どこにいった?



 と。


 私は数ヵ月後に漸く剣の存在を思い出したのであった。


 どうして訓練所で思い出さなかったんだよ。




「え? ライトちゃんが倒れたときに持っていた剣?」


「持っていたと言うか、引きずっていたと言うか」


「引きずっ━━━ああ、あれね」


「(引きずるってなんだよ)」



 聞いてみると以外な言葉が返ってきた。



「持ち主に返すようにギルドに依頼しておいたわよ」



 ・・ギルドって割りと何でもやるのね。


 別にあの剣が欲しかったわけではない。何故か拾った方が良いと思ったから引きずってでも持っていたのだ。でもあの剣は名前が彫られていたけれど、掠れてて最後まで読めなかったはず。誰のものかギルドの力で判明する事を祈っている。


 そんな風にもう終わったことだと思っていた私に剣の持ち主と証言する人物が訪ねてきたのは二日後の事だった。








     ※※※※※※※※※





 剣の事を思い出してから二日後のある日。


 私は自室で低級ポーションを量産していた。たまに味見をして2本飲んだのはご愛嬌。慣れてきて一気に10本づつ作れるようになっていた。

 丁度20本作り終わった時だった。



『ドンッ! ドンッ!』



 家のドアを叩く様な音が家中に響く。何か聞こえたらマップを確認する癖がついた私は直ぐに右上のマップを見て何があったのか確認する。

 実はマップ機能は格段的に向上している。地中のモンスターをスイカ割りの如く仕留めた辺りからモンスターと人を区別出来るようになった。前はどれも▼だったが、モンスターの表示が▲になって見やすくなりました。


 さて、今の音の正体は人みたいだ。▼が家の玄関外で立ち止まっている。色は・・・ん? 色が青で赤でもない。黄色だった。



 初めての表示の色に戸惑う。だが、こんな色をチラッと見たことがあるような?

 どこだったか・・・・あ、



 私は昨日の出来事を思い出したのであった。


 あれは昨日のお昼過ぎの出来事だった。私は一人であの事件(モンスターのスイカ割り事件と呼ぶ)の後森に入るのは危険だと止められていたのだが薬草が諸事情のため(ついついポーションを飲んでしまったため)に森の浅い場所に来ていた。

 勿論武器である槍を装備していたし、マップは最大限に縮尺を縮小して索敵範囲を最大に広げて警戒しながら採取していた。


 そんな時にこの黄色い▼が此方に接近してきたのだ。私は二度と同じ思いをしたくなかったので、何も深く考えずにすぐさまマップの黄色い▼から距離を取ったのだ。

 移動しているうちに黄色が青に変わっていたので深く考えることもなく忘れていたのだ。我ながら楽天的と言うか。


 さて、家の前で立ち止まっている表示は未だに黄色い。この間も叩き続けているので私が出るべきだと思ったが、それはやめた。保護者二人に家に誰も居ないときは居留守を使いなさいと言われているのだ。

 この街の治安は悪くはないが変なのがたまに居るので用心しろとこれも口を酸っぱく言われている。


 それにしても今日はベルさんが家にいるはずだが・・


 と、思っているとドアの開く音がしたので客に気がついたベルさんが対応に出たのだろう。


 私の部屋は玄関に近く、真下と言ってもいい位置にあるため、大声で話すと結構聞こえてしまうのだ。たまに煩くも感じるが、これはこれで誰が来たのか直ぐに分かり便利だ。


 話の内容はギルドの依頼に関した事らしい。客は男で、かなり興奮している様子だ。対してベルさんは落ち着いて話しているので聞き取りづらい。


 うーん、この客の興奮状態からさっきの▼の黄色は怒りか興奮している事を表しているのではないかと仮定する。モンスターは最初から敵意剥き出しだったから赤で表示されていたのかも知れない。

 考えてみればマップ機能を使い始めてから出会った人たちはみんな━━ではないけど、いい人たちだった。酔っ払いや山賊風チンピラたちは私に怒りの感情や興奮(していたら危険だよね犯罪的な意味で)する前に保護者二人に地面に沈められていたので分からなかった?

 いや、スイカ割り事件以降は絡んでくる輩は皆無だったので気がつかなかったのだろう。


 難しいことはいい。怒りや興奮状態が黄色ってことでいいや。



 最近は細かいことを気にしない性格になりつつあると自分でもわかる。錬金術では分量をきっちり計る事が癖になっているのに不思議なことだ。もしかしてひとつの事に集中すると他が大雑把になるのだろうか?

 このままではこの街の人々の様に大雑把になってしまうのか?この街に住むと皆さん大雑把になるのかと嘆いていると



「この家にいることはわかっている!!」



 大きな声に一気に現実に戻される。怒鳴り声の主は「盗人を出せ!庇い立てするのか!?」と続けざまに怒鳴っていた。


 はて、盗人ですか? うちにはそんな人居ませんが?



 怒鳴り声の主は暫く大声で捲し立てていたが「ゴッ!」と軽くはない鈍い音がしたと思ったら、声が聞こえなくなった。多分ベルさんがキレて地面とお友達になったのだろう。



「頭を冷やしてから来なさい」



 静かな、それでいて凍えるようなブリザードを纏ったかのような声がはっきりと聞こえた。そんなに大きい声ではないのに響いて聞こえた気さえする。


 騒ぎ(と言っても男が一人で騒いでた)の最中もマップから目を離さずに見ていた。気絶したと思われる男は▽が白くなっていた。気絶は白くなるのかぁー。新たな発見ですな。


 そうしている間に遠くの方から数人の反応が此方に接近中だった。数は3人。全員が青の▼だったので安心する。まぁ、赤でも最強のセキュリティが現在も玄関前に居るので安心だ。長引いても今日はジンさんも早く帰ると息巻いていたのでもうすぐ来ることだろう。

 心配などこの家には無いのである。


 偉そうに私が言うことではないけどね!







 そしてリビングに呼ばれ行ってみると・・・



 ロープで巻かれた男が床に転がっていた。ジンさんではないよ。ベルさんでも旦那さんにそこまでしない・・と思う。まだ夫婦喧嘩をしているところを見たことがないので知らんが。そこまでしないよね?



「ん゛ーーーーん゛ん゛!!」



 私がリビングに入ると此方に気が付いたのか暴れだした。何か言っているが布を噛まされているので何を叫んでいるのか不明。


 私以外の3人はすでにリビングにいたので私が最後な様だ。


 玄関前の騒動後、私は気にせず部屋で読書をしていた。その間にジンさんとリンクさんはマップに表示されているのを確認していたので家にいるのは確認済みだ。



 ジンさんは呆れて男を見下ろしていてベルさんはにっこり笑って笑顔が恐い。目が笑っていない。対してリンクさんはいつも通りに眠そうな目をしている。


「ちょっと聞きたいことがあるのよ。ちなみに晩御飯のメニューはハンバーグよ」


「え、マジで! やったー・・すみません静かにしてます」



 オメェーじゃねぇーよと幻聴が聞こえそうな冷たい目でベルさんに睨まれて大人しくなる。これで二人は仲が良いので不思議なものだ。私には男女のあれこれはよく分からない。



「ちなみに付け合わせはポテトサラダよ。でもその前にこの問題を片付けたいの」



 ポテトサラダのくだりでベルさんの後ろでガッツポーズを静かにしているジンさんは放っておく。ポテトサラダ私も好きですけど今は置いておきましょう。ベルさんの目が恐いからね。


 足で蹴るなどの事はしていなかったが目がとても冷たいですベルさん。玄関先での騒動がそれほど癇に障ったのか。すごい怒っている。怒りが一定を超えると笑いながら怒る。めっちゃ恐い。


 話を聞いてみると、玄関先で叫んでいたこの男は私が盗人だと主張していて私を出せと騒いだ。ベルさんは冷静にどういう事か事情を聞こうとしても聞く耳を持たず、ベルさんを押し退け家に侵入しようとしたので捕縛されたそうだ。不法侵入はダメでしょ。


 それより私が盗人って何さ。私は人様の物を盗むようなことはしていない。誓ってもいい。この世界に唯一存在すると言われる神に誓って盗みなどしていない。



 自分の無実を主張すると男は暴れだしてベルさんに睨まれた。動きをも封じるその眼力流石です。



「勿論貴女が盗人なんてこいつの勘違いなのは知っているのよ。でもこいつは納得していないようだから見つけた経緯を知りたいのよ」



 見つけた経緯経緯(いきさつ)? 最初なんの事かは分からなかった。



「ええ、貴女が見つけた剣の事よ」



 え、剣? ・・あぁあの剣か。この前思い出したあの剣についてか。ん?この人この剣の持ち主なの?


 どうやらあの剣には色々と事情があるらしく、疑われたくもないし、別に隠しているわけでもないので正直に拾ったことをあのときの状況も説明した。ホントなんで茂みの中に落ちてたのやら。あ、もしかして隠してあったのか?



「そうだったの」


「茂みの中に・・・な」


「隠してあったのか・・よく見つけたね」



 やっぱり隠してあったのか。見つけない方がよかったかと聞くと



「いいえ。良かったのよ。だって持ち主に返されるのだから」


「モガモガッ!!」


「お前の主張は撤回されるな」


「モガっ!?モガッ!!」


「あー、うるさいって」



 仕方ないだろ、お前短気で直ぐに怒り出す性格なんだから、とジンさんが言っていたがなんのことだろう。

 男はモガモガと暫く大声で唸っていたが疲れたのか静かになった。


 どうやら私が拾った剣はこの男の家の家宝らしく、その剣を持つ者が家を継ぐ権利があるのだとこの男は言っているらしい。しかし、保護者二人曰く、剣を持っているだけて継げる訳ねーだろ。とのこと。うん。私もそう思うよ。



 これはとあるお家騒動に巻き込まれそうになる私の話。



 暴れた男はギルドに連行され家族に引き渡されてこっぴどく叱られたそうです。


 後日本当の剣の持ち主にお礼を言われるのだがそれはもうちょっと先の話。



 今晩のハンバーグが楽しみだ!




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