私は備えた
最強になかなかならない主人公。やる気が違う方向に向かっているせいですね。
時は過ぎて、この街に来てから明日で半年。時が経つのは早いものだと染々おもう。
私の一日は日課の素振りをしてから朝食を皆で食べる。仕事で居ない人は一緒には無理だけど家にいるなら基本皆で食べるのがこの家の暗黙の了解。
食べ終わったら仕事の日はクエストを貰うためにギルドに。たまに訓練所に顔を出して鍛練したり。街から出るときは平原でモンスターに遭遇してからはリンクさんと一緒に行動することが多い。二人とも子供なので固まってある方が保護者は見守りやすいそうだ。
そしてクエストを受けない日は専ら錬金術の練習をしている。
大体こんな感じに生活していた。
急がなければ間違わずに作れる位には調合も上手くなったと思う。・・・一応本に載っている作り方のポーションも何度か作っている。このポーションどうしよう?
材料が無くなれば直ぐに取りに行けるこの街の立地は錬金術にはとても良い土地に思うが、あまり需要が無いのは不思議でならない。・・・もしかして売っているのは(-)の方なのかと思い冒険者御用達の道具屋に見に行ってみた。
すると売っているのはやっぱり(-)だった。私の絶望がご理解いただけるだろうか?
つまり、作らなければこの青汁を飲まないとダメなのだ。中級ポーションは流石に青汁ではなかったものの、白い沈殿物がビンの下に漂っている。なにこの消費期限の過ぎたお茶みたいな物。
怪我をする予定もする気も無いけれど、何かあったらこれを飲むの? え、嫌なんですけど。
もう、こうなったらアレだ。自分で使うヤツは自分で作らなければダメだ。試しに鑑定を置かれているポーションにしてみる。
あ、お店の人にはきちんと断りを入れてから鑑定するからね。まぁ商品を無断で鑑定しても怒られないけど、人に向けて使うのは御法度ですよ勿論。無断で鑑定は無断で他人のスマホを覗き見る位の犯罪ですぞ。
中級ポーション(-)
いまいち素材の効力を引き出せていないポーション。渋く不味い。加熱の時間を間違えた失敗作。効果・多少の怪我を治癒するはず。
状態 良
えー。売ってるレベルで失敗作って出てるんですけど。冒険者御用達の店でこれなんですか?
これはベルさんに色々と聞いてみないといけないな。
そして私はこの世界の変なところを知るのだった。
せっかく店が立ち並ぶ通りに来ているのだからと、ベルさんオススメの雑貨屋でビンを補充しておく。100個買っても200ギルって安過ぎるのですが。
その他の物も買い足して家路についた。前ほどクエストには行かないので無駄遣いは出来ない。お菓子は諦めよう。ちょっとだけ後ろ髪を引かれるが我慢だ。
家に入るとリビングでベルさんはお茶を飲んでいた。どうやらまだジンさんとリンクさんの二人は帰っていないらしい。お昼過ぎに帰るのは希なので当たり前か。
私に気がつくと私の分のお茶を注いでくれた。私はさっき店で鑑定したポーションの疑問を質問した。
「さっきお店でポーションを鑑定したんです」
「あ~、なるほど。だからそんなに腑に落ちない!って顔をしているのね」
「はい。・・・そんなに顔に出ていますか?」
「んーん。私の場合は勘よ勘。・・・で、店にあったポーションを見たのね」
「はい。何で「失敗作」と鑑定で出ているのに売っているんでしょうか?」
私は正直に自分の疑問を述べた。だって失敗作を普通売るのか? ゲームなら石ころだろうと燃えないゴミでも1円で売れても気にしないけど、ここ現実なのよ! 品質管理がなってない。
「・・・そうね。ねぇ、昔この辺りで戦争があったと話したのを覚えている?」
戦争? あぁ、この街の成り立ちについて聞いたときのか。
私は頷いた。
「あの時の戦争で人間の国々の技術がかなり失われたのよ。錬金術もその一つ。一説では怨みを晴らすためにエルフが魔術で人々の記憶から消し去った、なんて言われているけど眉唾よ。」
お茶を一口飲んでからこう続けた。
「戦争中、真っ先に狙われたのが人間達の国の中心部だった。そこには王立研究所もあったの。その当時は魔法も錬金術も国が独占していた技術でその知識を保有する人々が軒並み戦死した。そして資料も燃えて何も無くなったのよ」
「━━━でもそれなら他の種族の人たちが知識を持っているはずですよ。」
「そうねぇ。でも不思議なことに、他種族が作り方を教えても何故か製造法方が定着しないのよ。この街に住む人間以外の種族もいまいち作り方を覚えないし、みんな大雑把で教える気も失せるわぁ~」
ため息をつき頬に手を当てて「お手上げよね」と言うともうひとつため息を吐いた。
つまり、皆さん大雑把過ぎて覚える気がないと?
「そうねぇ。特にポーションで治そうと考えていないと言うか、治癒術を掛ければ万事解決って思っているのよね。病気は治癒術では治せないのに。」
「それは、なんと言うか」
つまり、治癒術あるからポーション飲む必要無いと皆さん考えていると。そう言えば職業図鑑にもそれっぽいこと書いてたかも。
閑話休題
自分の部屋に帰ると作業机に買った物も合わせて材料を乗せる。
今日は初級編の麻痺消しポーションと鎮静剤を作ろうと思う。麻痺はポーションと着くけど何故鎮静はつかないのかとどうでも良いことを考えながら道具を用意していた。
どうしてこの二つかと言うと、どうにも最近不穏な噂をよく耳にするのだ。たしか三日前から急に森で怪我をする冒険者が増え始めたのだ。しかも原因が新種のモンスターによるものらしい。
その新種は麻痺攻撃を仕掛けてくる種類らしく、麻痺の対策をしていなかった━━ここら辺のモンスターには状態異常の攻撃を仕掛ける物は毒以外居なかったため━━ので怪我人が増えた様だ。
ベルさん曰く、
「どんな状況でも想定するのは冒険者として当たり前。この街の冒険者はちょっと平和ボケしているわね」
と嘆かわしいと仰っておりました。そして私が初めて見た豚頭のモンスターが森の奥で出没し始めたとギルドで注意をしていたので鎮静剤も用意しておきます。いつ森から出てくるか分からないからね。もう今までの常識はモンスターに関しては信用できなくなってきた。
さて、今から作る低級麻痺消しポーションにと低級鎮静剤について説明しよう。
先ずは、低級麻痺消しポーションから。
低級麻痺消しポーションはその名の通り麻痺状態を解除してくれるポーションだ。例の如く、本の通りに作ると「麻痺を治してくれるかもかも」と鑑定出るのはもう何も言わない。味は両頬が吊るような酸っぱさで噎せた。
正しい手順で作れば「麻痺を治す」と明確に出る。麻痺の度合いによっては低級では治せない事もある。低級だからね。色は濃い透明な黄色。麻痺消し草が黄色い稲科の様な細長い見た目なのでこの色が出ると予想する。粘りはなし。
味の方はレモン味の炭酸でした。後味スッキリ、甘さ控えめ。ちなみに材料は麻痺消し草と水です。作り方も材料が違うだけで手順は毒消しポーションと同じだった。もうポーションは炭酸飲料だと思う。
次は低級鎮静剤。
鎮静剤は前に飲んだことがある。お世話になって初日の朝に発覚した状態異常でお世話になった薬だ。それは錠剤で水なしでも飲める物で噛まなくても効果が早い優れものだが、これから作るのは低級の物で液体だ。飲めば心が落ち着く。何かヤバイ薬みたいな感じかするが副作用、幻覚症状、依存性等の作用は一切ありません。
本通りなら「妙に目が冴える気がする味。」と鑑定結果が出たときはどうしようかと思った。目が冴えるって鎮静効果無いよね。気付けにはなるかもしれないけど。味はキシリトールの味がした。あれだ、歯みがき粉の味。色も白いのでまさに水に溶かした歯みがき粉だ。・・・これで歯みがき粉作れば良くない?
正しい手順だと「爽やかさと優しい味が心を落ち着かせる。混乱状態を治す」となる。無色透明で味がミントとカモミールの匂いがほのかに感じる程度。炭酸ではなかった。炭酸だったら逆に飲み辛いのでこれでよかったのだろう。
正直に言うとミントとカモミールの匂いがする水。薬だからね、味に美味しさを求めたらダメよね。
結果練習も兼ねて各10本ずつ作ったので日頃の感謝を込めてリンクさんに5本ずつプレゼントしました。ベルさんとジンさんにはお菓子詰め合わせを贈呈。
だって二人はEランクの私たちと違って高ランクだから低級程度のポーションでは間に合わないでしょ? ベルさんの作った中級ポーションの方が良いでしょ、と言うといじけていました。
そんなにポーションの味が好きだったのだろうか。
うん、確かに低級麻痺消しポーションは美味しいよね。
「多分違うと思う。」
リンクさんが私の思考を読んでツッコミを入れていたがポーションの味が好きだと勘違いをした私には聞こえないのだった。
これは痛い思いをしたくないためにポーションを作り備える私の話。
それならと夜更かしをしてからポーションを大量に作ってジンさんに渡したのだが、それが功を奏したのはもう少し先のお話。
あ、夜更かしがばれて怒られました。
これが役に立つ日はいつになるやら




