私は絶句した
「もう出来たの?」
少し驚いた様子で私が差し出した2つの低級ポーションを受け取る。出来立てホヤホヤの低級ポーションを見比べて暫くすると、
「うん、加熱しすぎると出来る白い濁りも無いし、綺麗な色と透明度ね。キチンと計って作ったのね。・・・こっちは本の通りに作ったのね。うん。お手本通りのポーションだわ」
どっちも合格とお墨付きを貰った。しかし、見ただけで中身や品質は分かるものなのだろうか?
その疑問は側で本を読んでいたリンクさんが解決してくれた。
「・・・母さんは鑑定スキルを持っているから、見れば良し悪しは分かるよ・・知ってたから見せに来たんじゃないの?
あと、その青汁が一般的な低級ポーションだよ」
店で見たことないの?そう言っているリンクさんの口は見たことのないほど歪んでいた。それほど不味いんですね。珍しいリンクさんの苦悶の表情である。
「いえ、知りませんよ(二重の意味で知りませんよ)」
「そう言えば言ってなかったかしら?」
なにそれ初耳なんですけど。青汁ポーションのことも。
私は錬金術の先輩として見てもらおうと思っただけですけど。まあ結果的に作ったポーションがちゃんと効果のある物だと知れたのは良かったけれど。
「・・・ライトのスキルなら鑑定も使え━━・・・使えないの?」
「あ、」
「(これはライトちゃん忘れてたわね)」
なんてことだ。自分のスキルを活用することをすっかり忘れていた。これではなんの意味もない。まさに猫に小判、豚に真珠、私にスキルだ。・・・すっかりポーションを作ることに夢中になって考えもしなかった。
思い付いたら即行動。とばかりにカタログを出す。ここはリビングなのでいつもの様に暖炉前に座りカタログを開いた。
「・・・ねぇ、いくらスキルを知っていると言っても、ここで堂々と使うのはどうかと思う」
「え? そうですか?」
「そうねぇ。私達は口外しないけど、リビングでスキルを使うのは少し無防備過ぎるわね・・」
そう指摘されて私も納得した。どうもこの人達の側は安心しきってしまうのだ。私は部屋に戻るために立ち上がり階段に向かおうとリビングから出ようとした。
「・・・・「鑑定の指輪」」
「へ?」
突然の事で変な声が出た。振り返り声の主を見る
「「鑑定の指輪」と言うアイテムがある。ギルドの受付がつける指輪・・名前が分かれば探しやすいと思う」
「確かに。ありがとうございますリンクさん」
うん、確かに名前を知っていれば格段に探しやすいだろう。何せ私のスキルは私の経験を反映させる様な気がするのだ。マップの名前表示とか諸々心当たりはある。
「さっそくその名前を探してみます!」
「(あの子は欲がないのかしら。それって名前が分かれば伝説級の危ない品まで取り出せるって事よね。まぁ、あの子は悪用なんて考えてもいないようだし、言うのは野暮ね)」
スキップしそうになりながら階段を上がって部屋に戻る。階段でのスキップは危険だ。転んで落ちたら頭を殴打して打ち所が悪ければ死ぬ。あ、スキルで強化してるからスッゴく痛いだけで済みそうだね痛いの嫌だけど。
「さて、探しますか」
この部屋に1つだけあるイスに座りカタログをもう一度出す。普段はベットに座るが今はイスの気分。それにしてもこのイス木製だからかお尻が痛い。後でクッション的な物を敷こう。
さて、知ったアイテムの名前を・・・
カタログを開いて気がついた。元のカタログの中身は装備の名前と効果が簡単に書かれているだけの物だった。確かに絵は付いているものもあったが大体は名前と効果だけだ。
それが今、図鑑の様に写真のように詳細まで細かく描かれたカラーの絵と名前、詳しく書かれた説明文。それまでなら見やすくなったなぁで済むが、問題はそこではない。
皆さんはネット等で何か調べたいことを検索したことはあるだろうか?
私はある。多分あれは気になったゲームを調べた時だ。そのサイトは大百科と銘打っていて絵と細かい説明をしてくれる頼れる私の味方だった。とは言え、知名度の低い物は2、3行の説明と絵は無しの扱いはあったけど・・・いやいや、その話はいつかまた。
そのサイトのページの上の方に細長い四角のが有るだろう。その細長い四角に調べたい名前やら入れて検索するとサイト内で該当する物を検索してくれる、そんな場所がある。あったはず。
朧気な記憶なので多分そんな感じだったとしか言えないが。
そう、何でそんな説明を入れたかというと・・その検索機能がこのカタログの目次のページに現れたのだ。
もう驚いて二度見したよ。こんなに綺麗な二度見はそうそう無いって位の二度見だったよ。
もう一度見て見間違えではないことを確認して深呼吸する。
うん、落ち着いた。落ち着いたけど、冷静になるとどうやってこの検索機能の場所に文字を打ち込むの?
そう思って細長い四角を指で触ると━━━
「(タッチパネル? これスマホのキーボードしゃん)」
触れて現れたのは昔は見慣れていたスマホのキーボードだった。なのに触った感触は紙なので頭が多少混乱する。滑りが悪いと思った直後、直ぐにガラスの表面のようにツルツルになって私はもう一度固まった。
え、私のスキル物分かり良すぎない?
当初の予定より幾分過ぎてしまったアイテム探しはカタログの新機能で一発で終わった。
名前から検索するのは勿論、能力、効果から始まり、装備の種類など検索機能は多岐にわたり何と並び順まで細かく変えられるなど機能が格段的に向上した。と言うよりもスマホ化した。
通話やメール等は出来ないが、イメージ的にはそんな感じ。
検索機能で直ぐに見つかった「鑑定の指輪」を取りだし装備してみる。説明欄には「鑑定のスキルが使えるようになる」とだけあったので他の効果はないと判断する。デメリットが怖いので今度からきちんと説明を読まないと。
実は前に何気無く装備した品々の中にちゃんと説明を見ずに装備していたものがあったのだ。それで知らぬ間に補正値が+されているのに最近気がついた。最近気がつく事多すぎるぞ私。いったい何れだけ間抜けなんだ私。
閑話休題
で、試しに色々鑑定してみようとおもう。
先ずは一番目につくベットにしよう。タンスの次にこの部屋で大きいものだし。
「安眠の寝具」
安らかな眠りに誘う寝具。安らかな眠りをあなたに。
うん、なるほど。確かにこのベット寝心地が良かったね。ただのベットじゃなかったの?
うん、次いってみよう。
そして次々と部屋にあるものを鑑定していったら流石に疲れた。情報量が多すぎで私のお粗末な頭では処理仕切れないのかもしれない。ちょっと車酔いの時の不快感と同じだ。
目を閉じて掌を瞼に優しく乗せてベットに仰向けになる。目が疲れたわけではないと思うが何となく目も疲れた気がした。眼精疲労には目を暖めるのがいいと聞いたことがあるので掌で温めてみる。強く押したりしたらダメだよ。
暫くそうしていると車酔いの様な不快感は消えたので今度こそあの自作の低級ポーションを鑑定してみよう。
低級ポーション(-)
雑な作り方をしたポーション。ポーションと言うよりは薬草の生搾り。すごく不味い。効果・掠り傷が直りやすくなる
状態 優
お、おう。薬草の生搾りか、飲みたくない。しかも説明にすごく不味いって書いてるし。決めた。私これ絶対飲まない。
気を取り直して次。
低級ポーション(+)
正しい分量できちんと計量して作られたポーション。清涼感のあるシュワシュワ。不思議な味。効果・掠り傷がすぐさま治る。
状態 優
おう。全然効果違うじゃない。なにこれもう詐欺ってレベルよこれ。それにこのシュワシュワってなに? ビンに入れる時そんな音してた? それともビンに入れた瞬間微炭酸にでもなったの?
気になったので低級ポーション(+)の方を怪我もしていないのに飲んでみた。
━━━━ポーションがラムネの味がするって聞いてないよ。
美味しかったから良かったけど。薬草の要素どこ行った?
錬金術とは不思議なものであると実感した私だった。
あれから本来の正しい方の作り方(+の付く方)を何度も繰り返し作った。慣れれば作り方が疎かになると指摘されたのでいつも分量通りを心がけた。
基礎を確りやらないときっと後々後悔すると自分に言い聞かせて黙々と量を計った。
昔、好きだった漫画で「錬金術は台所から生まれた」という台詞があった気がする。確かにその通りではないかとこうして秤と睨めっこしていると分かる。
お菓子作りと似ているのだ。分量を少しでも間違えるとスポンジが膨らまなかったり、クッキーが岩のように固くなったり。きちんと料理本の通りに作らないと初心者は失敗する。
かく言う私も過去にクッキーを岩にしてしまった事がある。歯をかけさせる気かと弟に怒られた記憶がうっすらとある。あれはかき混ぜすぎで小麦粉に含まれるグルテンがかき混ぜすぎたことによって増えてしまった?ために固く焼けてしまったと弟に言われたはず。たしかそんな話だった? 肝心なところが虫食い状態な記憶だ。
まあ、何が言いたいかと言うと、正しい分量、正しい手順で作らないと初心者は失敗するぞってこと。応用編の本は貰ったけどまだ読んではいない。だってまだ低級ポーションしか作ってないもん。そんな初心者がすっ飛ばして応用編なんてやってみなさいよ、失敗する。確実に失敗する。
だからか数をこなして身に付いたと思ったら次は初級編の違うポーションや薬を作っていこうと思う。
うん。堅実に行こう。
これははじめて錬金術に挑戦した私の話。
それにしても(-)の方ポーションって錬金術って言うよりも調合に近いのでは?
いや、あの青汁は料理の方かもしれないと思う私だった。
自分のスキルを活かせない主人公です。




