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私はポジティブになろうとした


 弓に矢をつがえて弓を引き絞る。ギリギリと音をならししなる弓を引き続けるのはとても力がいる。私にはとても辛い作業だ。


 使っている弓は子供用でそれに練習用の玄が弱い弓だ。これで腕がプルプルしているのだ。これ以上の力が必要な実践用の弓何て引ける気がしない。


 的に狙いを定める前に力尽きて的から大きく逸れて木に刺さりもせずに地面に落ちた。



 私は今、ギルドに敷設されている訓練所にて弓の練習をしている。その成果は見ての通り惨敗だ。私には弓を引く以前の問題だった。



「ここまで非力とは・・弓はまだ無理か」


「ここまで非力な冒険者は前代未聞ですよ」



 それはすまないな教官達よ。でもこれが全力なのよね。武器と言えるものも解体用のナイフ位しか持ったことがない。


 そして1ヶ月近く訓練所に通った結果。無事私には弓の才能は無いことが立証されてしまいましたとさ。


 笑い事じゃない。



 最低でもDランクになるためには武器が使えないと、クエスト内容次第では行けない場所がある。今よりもちょっと深い場所に行かなければ取れない植物とか有るのだ。モンスターと闘うことは想定されていないにしても、自衛のためには武装しないと入れない場所がいっぱいある。

 これではDランクなんて無理だ。年齢制限がなくなっても無理なのだ。



 これが剣の才能なら「無いなら仕方ないねー」で済むのだが、その他の才能も軒並み無しの太鼓判を押されてはどうしようもない。


 ここまで才能がないのは呪いの類いではないかと教官達が疑ったがヒーラーや司祭に見てもらっても何の以上も無しとこれまた太鼓判を押された。むしろ祝福されているとまで言われる健康体でした。



「これは困った事態になった」


「いえ、今は無理でも成長すれば弓は引けるように成やも・・・」



 つまり問題なく成長すれば弓は引ける(上手くなるとは言っていない)位にはなるのではないかと今のところは結論を出した。


 しかし、私のような下手くその射手は味方の邪魔になるのではないだろうか? 誤射はしたくない。



 気落ちするなと、きっと健康的な生活を続ければ力も付くと教官達に慰められた後、少し肩を落としてトボトボと家に帰ったのだった。




 家に着いて直ぐに自分の部屋に入るとベットに座り項垂れる。



 どうしたら武器を扱えるようになるのか考えてみたものの、思い付いたことと言えばカタログを見るという事だけだった。



 スキルに頼りすぎるのもどうかと思うが、私はマトモに稼ぎたいのだ。いつまでもここにお世話になる訳にはいかない。いつかは一人立ちして、あわよくば独り暮らしして自立したい。そして恩返しもしたい。つまり、いつまでもEランクだと金銭的に難しいのだ。世の中やっぱり金なのか・・・世知辛い。



 もう、冒険者としてではなく何か仕事を見つけた方が建設的かとおもう。少し仕事のリサーチもしておこうと思う。



 カタログに「金剛の籠手」という金ぴかキラキラの宝石が付いた防具を見つけた。しかし「岩をも砕く」の文字に誤爆してドアノブを破壊する光景が浮かんだので装備は見送った。だってうっかりで誰かの腕とかぶつかっただけでバキッってなったら嫌でしょ?

 次に見付けたのは「弓の名手の籠手」だった。説明には「弓の名手が付けた━━━」で名付けられた系の防具だったので論外。防御力の向上には良いかもしれないがもう不自然なほど高いので見送りにした。



 気分も沈んでいるのでいるので探すやる気も失せてしまう。こういう時は甘いものを食べると良いと思いリュックから昨日の戦利品のお菓子を取り出して食べる。



 そろそろ太る事を気にしないといけない気もする。いくら今は痩せすぎだとしてもお菓子の食べ過ぎは身体に毒だ。ご飯はバランス良く用意してくれるお陰で栄養は取れていると思う。後は不摂生に気を付けて生活しないと。

 子供の時からある程度は健康に気を付けないと後悔するのは中年に差し掛かってからだと前世の父が言っていた気がする。あれ?叔父さんだったっけ?



 小さな一口のチョコを1つだけ食べて後はしまう。時間経過半減のリュックなので悪くなる前には食べきれると思われるが、これだけ食べればきっと生活習慣病まっしぐらなので今夜にでもジンさんとリンクさんにお裾分けしよう。

 実は昨日からジンさんはクエストの関係上留守にしているのだ。リンクさんは居たけれど、ジンさんを仲間外れにすると後で拗ねるから明日一緒に渡してくれとリンクさんに説得されたので渡せずにいた。

 ベルさんにはもうお土産として渡してある。山賊風のオッサン達を踏みつけ佇む姿に何故か何かを献上しないといけない気がしたのでその時渡してしまった。我ながら何やってたんだろう。


 ちなみにお婆ちゃんから貰ったリュックは洗濯して大事にしまってあります。今は使うことはないが、捨てるなんて出来ないのでリュックのこやしになってもらおう。



 口の中に広がるカカオの香りに心が満たされる気分になる。少しほろ苦いが甘味とのバランスが抜群に良く何個でも食べたくなる、まさに悪魔の食べ物。チョコを考えた人は罪深いと思うよ。



 チョコ口の中で少しずつ溶かすことによって堪能していた私にノックの音が聞こえた。



「もうすぐご飯だって」


「わかりました」


「・・・お菓子は程々に」


「・・・チョコ一個です」


「そう」



 そう言ってリンクさんは下に降りていったのだろう、マップでは一階にいる表示になっている。このマップは学習機能がついていて知らない場所でも建物でも地図や見取り図を見れば問題なく表示してくれるのだ。ホントに便利。


 廊下に出てドアを閉めた辺りでマップにジンさんの名前がが家に接近中だと表示された。帰ってきたようだ。



 階段を下りるとベルさんは鍋をテーブルの真ん中に鍋敷きを置いて鍋を置いていた。リンクさんはパンの入ったバスケットとスープを入れる器を持ってキッチンから出てきた。

 その丁度皆がリビングに集まった瞬間に玄関辺りで元気な声で帰ったことを告げた。




 この家の食卓はとても賑やかだ。私とリンクさんはもっぱら聞き手にまわっているが、話が尽きることはない。特に私は食べるとこに集中しているので聞いてはいるが話しはしないスタンスである。

 今日の食卓も賑やかだ。ジンさんはクエスト内容を話せる範囲で面白かったところなど驚いたことなど面白おかしく話してくれる。ベルさんはそれに相づちを打ちつつ、気になった点を質問したり、自分の出来事を話したりと楽しそうに会話している。

 これできちんと料理が減っているのは不思議でならない。いつ口に入れているの? 食べ方も綺麗に食べているし。不思議だ。


 そして話題は私の訓練所の結果に変わったのだった。



 保護者と言うことでジンさんはクエスト報告の帰りに立ち寄ったギルドで結果を聞いたそうだ。しかし彼の表情には落胆は浮かんではいなかった。



「人には向き不向きがある。」


「何で語り始めるのよ」


「まだ語り始めてないって」


「でも始めるんでしょ?」


「何でわかったし」


「何年の付き合いだと思っているの」


「もう二十年以上は経ってますね」


「もっと経ってるわよ」



「・・こうなると語り出して長いから、聞き流しても良い」


「・・ソーナンデスネ」


「二人とも酷い(泣き)」


「もう早く語んなさいよめんどくさい」



 少し涙めになったジンさんももう見あk━━見慣れてしまったので黙って語り出すのを待っていると涙を拭う素振りをしてから語り始めた。涙目にはなっているが泣いていないのはもう見抜いた。それで私の同情を引くのはもう無理ですよ。



「人には向き不向きがある。さっきも言ったけどそういうものなんだ。俺だって弓の才能はからっきしだし?」


「昔私の弓を勝手に使って壊した位には才能が無いわね」


「その節は大変申し訳なく・・」



 もう見慣れた何時もの二人のコントを横目にパンを食べた。このパンバターが少な目なのか少しパサついているが、スープに浸けると大変美味しい。スープの味を邪魔せず、しかしパンの香りがうま味を引き立てて大変に美味でございます。



「オホンッ━━だから弓が使えない位で落ち込むことなんて無い」


「他の武器も試してみるのもいいと思うよ」


「そう。俺も剣以外では全く扱えなくてな。よく壊すんだよなぁ」


「扱う以前の問題ね」


「ごもっともです。それでも稼げるくらいには闘えるから良かったけどな。それにこの街周辺はモンスターも少ないし、住民全員が闘えないといけない訳でもない。平和な仕事に就いても誰も文句なんて言わないさ」


「文句を言うヤツが居たら言ってね。説得しておくから」



 説得(物理)ですねわかります。



「大体ねぇ、12歳の時点で人生が決まってるなんて誰が決めたのよ。いろんな事に挑戦してから決めてもいいと思うわ」


「ギルドの方針上Dランクからは武器を扱えないとダメだからなぁ。ここではそこまで危なくないとは思うけど、あの遭遇した出来事を考えるとそれも言っていられないと言うか」


「あの事は結局有耶無耶にされたあげく「無事だったので今回の件は特異例として処理しておきます。災難でしたね(笑)」とかワケわかんないことを言われたときには━━」


 そんなことを言われていたとは知らなかった。相当頭に来ていたのか顔付きが━━いえ、何でもないです。



「つまりだ、気にするな」


「それを早く言いなさいよ長すぎるわ」



 確かに長かった。リンクさんは2杯目のおかわりをしているくらいには長かった。



「そもそも弓矢ってのは玄人向けの武器だ。中々扱いは難しいもんだ」


「使いこなせるまで時間がかかる武器だよね」


「うん。これは無理だった━━━でだ。」




 ジンさんは1度二階に上がると何やら細長い布にくるまれたものを持ってきた。



「素人でも使えそうな武器と言えば剣だが、槍だって結構使いやすいぞ」


 そう言って私に渡してきたのはシンプルな作りの木製の槍で全てが木で出来ている竹槍の様な物だった。

 槍全体に蔓のような模様が彫られたものでインテリアとして立て掛けていても違和感がないかもしれない程にきれいな作りだった。



「槍は突くだけではない。上から叩きつけるだけでも結構な威力が出せる。突くにしてもリーチがある分敵に近付かれる前に攻撃できるのも利点だな」


「でもその分接近されると接近戦では不利になるけれどね」


「その時は槍を手放してナイフで闘うしかないな」


「それは武器を壊した時の貴方の対処法でしょう」


「ナイフは接近戦では有利なんですぅー。だからこれも持っていような?」



 槍の他にも刃渡り十数㎝ほどの小ぶり?のナイフを渡してきた。何の変鉄もないただの鞘に収まる短剣だ。


 短剣と槍を手に取り眺めている私にこう説明してくれた。



「その槍とナイフは実は特別製でな」


「使い続ければ武器に付与されたスキルを修得出来るのよ」


「・・・俺が言いたかったのに・・」


「もったいぶって中々言わないでしょ」


「うぅぅ、図星だけに反論できない・・・っと、修得出来るって言っても人によってかかる時間はバラバラだからどれだけかかるかは分からない」


 それでも良いのなら使ってみてくれ。そう言って笑うジンさんは輝いて見えた。あなたが紙か、いや、神か。

 なら自分で使えばいいと思ったのだが「俺はすぐ壊して修得する以前の問題だったから宝の持ち腐れだったんだよなぁー」と笑ながら言っていたのでありがたく受け取ることにした。


 こういう装備品は大して珍しくもないそうで、グリューンの様なダンジョンを四つも保有する街では腐るほど手に入るので壊れるのは気にせずに使えばいいと言っていた。


 それでも修得の装備品は珍しい部類で、今の私では手が届かない値段だったことはここに書いておこう。ジンさん達上位の冒険者(Cランク以上の人達)にはそれこそ腐るほど手に入るのだろうかと思った。


 しかも槍に付いていたスキルは「槍術」という槍使いならもう持っているであろうスキルなので私のような適性のない人しか需要がない。しかもそういった武器のスキルで人気なのは「剣術」や「体術」で「槍術」は不人気らしくあまり売れない。

 なら何故私に槍術のスキル付きの槍を渡したかというと、


「だって接近戦は不得意だろ?」


「それに接近戦は危ないもの」



「「近付かれる前に殺れ!」」



 と、力説されてしまった。ちなみに短剣に付いているスキルは不意打ち防止でした。これって不意打ちを防止するって事だよね?

 あと、本当は剣も用意したかったのだが急な納品依頼が続いた為に今は品薄で手に入れるにはダンジョンに潜って粘るしかない。でもそれでは時間が掛かるので今回はこの二つだけになったそうです。

 他の武器も集めてこようか?と聞かれたので丁重にお断りしました。だって気が引けるんだもん。貰いすぎて。



 こうして私はもう一度訓練所でこの二つの武器を訓練することになった。うん。何とかなりそうで良かった良かった。もうずっとポジティブに考えよう。何とかなる何とかな・・るよね?




 これは振り回すよりも振り回されている私とやっぱり過保護過ぎる保護者との日常のひとコマの話。



 私達が話している横でリンクさんは三杯目のおかわりをしていました。わ、私の分がなくなってしまう!?


 今日も私は食に貪欲でした。





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