私は食べる事が好きだ
食べるのが好きだと体重が心配になる
私は食べる事が好きだ。牛に豚に鳥に魚、特に鶏肉が好きだ。野菜も好き嫌いなく食べる。嫌いなものなどないほど食べる事が好きだ。
好きな料理はスープ全般的。味噌汁なんかも好きだ。もう飲めないかと思うととても残念だとおもう。スキルでどうこう出来るなら私は味噌を一番に所望するだろう。後お米と醤油も。
とにかく食べるのが大好きだ。
前世の食べ物はとても魅力的な物が多い。たまに見る夢はいつもお腹の空く夢が多かった。きっと満腹になりたい願望が夢になったのだろう。
そう、私は物心く前から食べ物を充分に与えられなかった。所謂ネグレクトだ。それでもお婆ちゃんのお陰で何とか生きていける分は食べることはできた。
でも、成長に必要な栄養は常に不足していた。
そんな私が今、とてもお腹が━━━
「お腹いっぱい」
そう、お腹いっぱいに食べられる環境に居るのだ。ここは天国かと呟くと真剣な顔で「死んでないから。熱でもある?」とリンクさんにおでこに掌を当てられ熱を確かめられた。もちろん平熱である。いたって健康です。
この家に居候させてもらってはや1ヶ月。採取クエスト初日に予想しなかったモンスターとの遭遇から数日の内は大事をとって来るときに採取はおやすみしていた。もちろんどこも怪我などしていない。森が落ち着いて安全と確認するまでは森に行くことを保護者二人に禁止されていたのだった。
そして漸く森に入ることを解禁されて採取を再開したのが一週間後の事だった。
その間に色んな事を見たり聞いたり、色々と勉強したり。たまに近所の同じくらいの子供と喧嘩になって相手が怪我したり。あれは相手から殴り掛かってきたのであって私は避けられなかった為に起きた事故である。
次の日にはその子の親が子供とお詫びに来ていた。その時の石女と罵られたことは一生根に持ってやるからな糞ガキ。
っと、色々あったが無事に最初の採取クエストを完了させ、その後も次々とクエストを達成させていった。とは言え身にあったペースでの達成である。あとリンクさんも同じEランクなので一緒にクエストをこなしたのが効率的に良かったのかもしれない。
クエスト中にベルさんと森でばったりあったり、獲物を担いだジンさんばったり遭遇して驚いたり、リンクさんが歩きながら眠っていたりして二度見したり色々とあった。
そんな風に1ヶ月が過ぎていった。
そんな私は今街の中のある区画に足を運んでいる。しかも一人でだ。
最初は一人だった私はここ最近は一人になることがまるでない。誰かが必ず側にいる状態がつづいている。不思議と息苦しさはないが、たまには一人で出掛けたくなったのだ。もちろんきちんと断りは入れてある。どこへ行く予定かも話している。
私の目的地、それはこの街で一番屋台の集まる場所━━公園に向かっているのである。
朝御飯が美味しくてお腹いっぱい食べしてしまったが、それはそれこれはこれ、食べ物が売られている屋台を見て回るだけでも楽しいのだ。もちろん買うが。
街の中央近くにある公園は大きな広場があり、そこにところせましと食べ物をうる屋台が立ち並んでいる。私から見たら宝の山に等しく屋台がキラキラと光って見えた。もちろん見えた気がするだけだけれども。
串に刺さったいい匂いに焼かれた肉、味の濃そうな煮込み肉、ビーフシチューの様な具がゴロゴロ入っているスープ、つくねの様な肉にベーコンを巻いた焼き鳥の様な肉。お菓子の甘い匂いも漂ってくるのでお菓子の屋台もあるのだろう。わくわくが止まらない。
先ずは串に刺さった肉を見てみる。匂いは焼き鳥のタレの様な気がする。と言うことは醤油が存在するのかと思った。この際魚醤でも構わない。旨味は大事です。
「いい匂い・・」
「おお、坊主。分かってるなぁ」
「おじさんこの肉1本頂戴」
串肉の屋台のおじさんは私の呟きに嬉しそうにして串肉を手渡す。結構な肉のでかさに思わずにっこりだ。お値段もお得な10ギルだった。あれ?10ギルって安い方だっけ? もう完全にこの街の規準に使ってしまった様です。あの村では絶対もっと高かった気がするたぶん。絶対とはと何だったのかとどうでも良いことを考えるがお肉を豪快に噛む。すると肉汁が口いっぱいに広がり至福の時を楽しんだ。
一心不乱に店の前で食べていたことに気が付いたのは全部食べ終わってから。周りの目線が気になったので早々に次の屋台へと移動する。
去り際おじさんに手を振ってまた食べに来ると言い次は見たことないベーコン巻きの屋台に行こうと考える後ろで串肉の屋台に客が殺到した事は気がつかなかった。私の関心は今は全て食べ物に向いているのだ。
肉巻きベーコンはハンバーグにベーコンを巻いたような味だった。デミグラスソースが抜群に美味しくてもう1本食べたかったが朝御飯が美味しくて食べすぎていた為にこの時点で既に限界は過ぎていたのだ。もう少し朝御飯を控えめにすればよかったかとも思ったが後悔はない。それに今日だけで観光と言うわけではないのだ。ここに住んでいるのでまた来る機会はあるのだから今は食べれなかったと後悔する必要かない。
美味しいものがいっぱいある街にすめるって幸せだ。
胃袋の限界が近いので公園に設置されているベンチに座り少し休憩中。
手には食べ過ぎに効果のあるお茶を飲みつつも次はどの屋台を見ようかと考える。しかしこのお茶美味しいなぁ。お腹の不快感がスーっと消えていく感じがする。これならお菓子くらいなら摘まめるかな。
そう思いお茶をの飲み終えて目指すはお菓子エリア。意気揚々と向かうのだった。
しかし食い意地はってるよね私って。
屋台の集まる広場はレンガで舗装されていて歩き続けると若干足が痛くなるが雨など天気が悪い日は足元が汚れる心配をしなくて済むのはとてもありがたいだろう。洗濯の必要がないスキルの服を着ていた頃はそんな心配がなかったので懐かしい感じがした。
泥跳ねを気にして自転車に乗ったのはいい思い出。
お菓子エリアから漂ってくる甘い香りとバターの匂いは肉や野菜の焼ける匂いとは違った至福の香りがした。
カラフルな綿飴にべっこう飴の様な色のキラキラした飴細工。飴でコーティングされた様々な果物にクリームたっぷりのクレープの様なスイーツ。あ、マカロンにそっくりな物まである。氷のような器に入ったかき氷の様なスイーツは器が溶けないのか不思議だ。
あぁ!? あれは愛しのアイスクリームではないか!? それにあっちにあるのはドーナッツではないか!!!
もう私の頭はスイーツでいっぱいになって結局お昼はスイーツ三昧になってのでした。皆は真似しちゃダメだよ太るよ。
もうすぐ夕方になりそうな時間帯。私は満腹感に満足して家に帰る道を歩いていた。お値段が良心的な屋台が多くてついつい衝動買いしてしまったが、手荷物は少ない。何とベルさんにアイテムポーチなる便利アイテムを貰ったのだ。
これがあればどんなかさ張る荷物も楽に持ち歩ける優れもの。しかし容量制限あり&容量が小さいので結構な良心的な値段で市場に売っているタイプなのでそれほど珍しくないらしい。これが容量無限に時間停止も付いたら伝説のアイテムになるそうです。
カタログに載っていたのは内緒にしておこうと心に刻んでおく。
そしてポーチだけでは足りないこともあるとジンさんには容量中の時間経過半減のリュックを貰った。これはジンさんのお下がりなので気にするなと笑って渡された時には「何言ってるのこの人」と本音と建前が逆になるハプニングもあった。
普通に高価なものなので息子のリンクさんに譲る物だと抗議したが、それよりも良いものを貰っているとリンクさん本人に説得されたので仕方なく受け取ったのも今ではいい思い出、か?
子供が持つには高価過ぎるのでスキルで隠しておいた。スキルで出したもの以外でも隠せると新たな発見をした。これは結構な収穫だった。
なのでただの子供がホクホク顔で道を歩いているのだ。マントのフードを被って目元が見えにくい格好ではあるが、別に怪しくともない・・筈の格好である。それのに━━━
「おう、坊主。良いものを持っているな」
「そいつをこっちに渡してくれれば痛い目見ずに済むぜ」
げへへへへ、と笑うオッサン共が私にカツアゲをしてきたのだ。
これが都会で噂のカツアゲか。しかもいい歳の大人が子供一人に複数で囲むって恥ずかしくないのか?
そして男物を着ている私は男に見られているので坊主呼びだ。
オッサン達の目も見ずにどうしようかと考える。コイツらこの街の出身じゃないな。だって装備がボロボロで手入れもされていないのだ。これではモンスターとマトモに闘えるかも疑問だ。
ベルさん達に教わった事がある。装備がボロボロな輩は大体が山賊だという事を。恐ろしいモンスターよりも力のない人間を食い物にするので防御力など無くても何とかなるならないとか。
つまり、装備がボロボロな人はモンスターとの死闘明けか悪いヤツだというのだ。あ、貧乏な地域から来た新人さんは論外。
そんな山賊予備軍のこのオッサン共には私はさぞや美味しい鴨に見えたのでしょう。コイツらの装備にアイテムポーチなどの便利アイテムなどは持ってなさそうに見てるので私の物に目をつけたのだろう。
しかしヤツらはこの街を甘く見ているようだ。
ギルドカード等の身分を証明するものがない場合銀貨5枚を払う理由、それはその支払い手続きの間に手配書等の確認の為でもあるのだ。そして明らかに怪しい人物は町全体で見張るのだ。
そう、コイツらには見張りがついているのだ。
「おい聞いているのか!」
「こいつビビってんですよっ」
「頭の顔は怖いっすらねぇ」
ガハガハと笑うヤツらは私が怖がって固まっていると思っているようだ。うん、怖いよ色んな意味で。未だにデカイ、強面、大きい声は苦手だ。苦手だがあの豚頭と比べてしまえば多少怖くはない。それに今からコイツらは地獄を見ることになるのだから。
おいおい、後ろ後ろ。アンタらの後ろに鬼神がいるぞ気お付け━━━━
「うちの子に何かご用?」
何か壮大な重低音のオーケストラの奏でる曲が流れるようなそんなオーラを纏って仁王立ちする私の保護者の姿がそこにはあった。
それからはただの蹂躙だった。
打ち出される拳に山賊予備軍のお頭は無情に地面に沈んだ。その一瞬の出来事に唖然とする子分たちは何とか現実に戻り反撃を試みるも、無情に拳が吸い込まれるように子分たちに叩き込まれ次々と倒れるのだった。
後に隣の領地から豊かな土地を求めて流れてきた山賊一派の撲滅に繋がる事件として長く語り継がれる事になったのだった。
これは多少食い意地の張った子供と怒ると鬼神となる保護者の怒りが爆発する話。
せっかく楽しい気分で家路についていたのに最悪だ。
結構ライトは豪胆な性格のようだ。
主人公は成長期なので多少のおやつは贅肉にはなりません。多分。そして保護者は両方とも敵に回すと厄介です。
休みなので土日は更新が多くなりそうです。




