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私は過保護というものを知った

 主人公はもう一度自分を鏡で見た方がいい。


 居候をさせてもらっているベルさんの家に帰ってきて早めのお風呂━━この街ではお風呂は一般的になっているそうでとても嬉しかった。この街はつくづく生活基準が高いと思う━━に入り、美味しい晩御飯も食べてフカフカのベットに潜り込む。


 もう幸せだ。今日は格別いい夢を見れそうな気がする。



 ・・・・いや、ちょっと待て。



 ガバッと上布団を引き剥がして起き上がる。まだ寝る前のステータス確認をしていない。あの状態異常事件で私は小まめにステータスを確認することを誓ったのだ。特に朝起きた時と夜寝る前は必ずするように心がけるつもりだったのだ。

 それをすっかり忘れるところだった。三日坊主にもならない早さで忘れるとこらだった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 名前 ライト


 種族 人間


 性別 女


 レベル 1


 状態 正常


 HP:80/100  MP:1446/1450


 ▼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 まあ、レベルは上がっいないよね。何もしてないし。


 あれ? 何でHPが減っているんだろう。そしてMPも前よりヘリが少ない?


 前はもう少し減ってたよね? 4しか減ってないなんておかしくないか? これも「節約家」のおかげ?


 気になったのでスキル「節約家」の項目を見てみると最初に見た時とは変わっていた。



 

 「節約家」


 全てのスキルや魔法によるMPの消費を1にする。HPの減りも半減する。継続消費を無しにする。毒や怪我による出血による継続ダメージも半減。眠ればHP、MP完全回復。




 もしかして私攻撃受けてました?




 恐くなった私は常にマップを表示させるようにし、状態異常完全防止の装備を追加してから眠るのだった。



 ・・・ちょっと待って、もう1回待って! 完全回復って何だよ!!


 これはバレたらまずい。非常にまずいです。





 悩んだところで自分ではどうすることも出来ず保留にするしか無かった。そし目が冴えて珍しく寝不足を経験する私であった。






 そして夜が明けて次の日



 私は今の人生では初の寝不足というバッドステータスを目の下に拵えて階段を下りた。するとベルさんとジンさんが挨拶をした後に二度見をして驚き、リンクさんは半分開ききっていない目で私を凝視した。


 暫くの沈黙の後に三人は何があったと私に駆け寄りワタワタと慌て、昨夜は寝付きが悪かったと説明するとベットや枕が合わなかったかと聞いてきたのでそれはないと否定はした。

 初日は何ともなかったのだからそれはないだろうと三人に言うと安心して逆に眠れなくなったかと聞かれたのでそれも否定する。この人達には安心しているけれどスキルがバレたら捕獲されると思い心配で眠れなかったとはとてもじゃないがまだ言えない。もう少し信頼されてから打ち明けるか決めたい。




「寝不足は万病の素だよ。気を付けてね」


「今日ははじめてのクエストだろ? 眠れなかったのはそのせいじゃないか? 俺も初クエストの時は楽しみでよる眠れなかった」


「遠出が楽しみな子供はアンタだけでしょ」


「でも分かる気がする。俺もそうだった」


「はぁ、この親子は」



 それ私も分かる~。遠足の前日はワクワクして眠れなくて当日に寝不足でもはしゃぎすぎて翌日に疲れて熱が出たことあったわ前世で。その時はお母さんに呆れられて━━━



「(お母さんってどんな顔してたっけ?)」



 思い出そうとしても朧気で霞がかかったようにぼやけてしまう。ちょっと気の強い母親と少しおっとりしていて優しい父親とやんちゃ盛りの弟が居たことは覚えているが、顔や声が思い出せない事に今さら気がついた。気がつかなかった方が良かったように思えて仕方ない虚無感に襲われるが、



「で、結局どのクエストを選んだの?」



 テーブルに置かれた良い香りの鍋からスープを器に盛りつけ私の前に置きながらリンクさんは話を切り替えてくれた。



「薬草の採取クエストだよ」


「ふーん、母さんも付いていくの?」


 目の前に置かれたスープに気が向いていた私に代わりベルさんが答えてくれた。リンクさんは未だに眠いのか目を半開きで質問する。私よりも眠そうですけどダイジョブか?



「保護者だし一人ではライトちゃんは外に出られないからね。付いていくよ勿論」


「・・・俺も暇だからついてく」



 と、リンクさんが言うと続けてジンさんもついてこようとするが、



「採取クエストに保護者は二人もいりません。それに今日は依頼の指名があるでしょ」


「そうでした」


「しっかり稼いできてね」


「しっかり稼いできます」




 と、一刀両断されていた。



 その光景を見ていた私にリンクさんが



「別に仲が悪いとかそんなんじゃないから。あれがいつもの二人だから安心して」


「すごい仲が良く見えます」



 そう素直に答えるとふんわりとした笑顔で「俺もそう思う」と答えて席につき、朝御飯を食べ始めた。

 私も食べて良いと言われたのでベルさんとジンさんの会話をBGMに食べ始めた。暫くすると二人も何事もなく食べはじめて各自の今日の予定を話し、朝御飯を終える頃にはもう家族の顔を思い出せないことが少しだけ悲しくなくなっていた。



 我ながら薄情だと思いつつもこの家族の雰囲気に馴染み始めた事が嬉しく思う私であった。








 そして採取クエストのために街の外に向かう私たち三人に自分だけ仲間外れだと駄々をこねるジンさんにベルさんが鉄拳を打ち込んむという珍事があったが、その時のリンクさんの「いつもの事だ」の一言で片付けていたので遠い目をしながら若干涙目になっているジンさんを見送るのだった。


 その時の私とリンクさんの顔を絵文字で表現すると(  ̄- ̄)だったとここに記しておこう。




 この街はお大きい割りに四方を森に囲まれているためにどの方角から外に出ても薬草等が採取出来るので比較的モンスターが出ない南側から出る事になった。


 因みに私が来た方向が南側だった。地図では方角が書かれていなかったのでわからなかったのだ。あの地図正規品ではない安物であったことが発覚した。貰い物だし、くれたらお婆ちゃんも旅慣れてはいなかったので方角の重要性は考えてなかったのかも知れない。コンパスもこの世界無いからね。どうやって方角を知るのか。


 そう思いつつ表示されたミニマップ━━縮尺を変えることも可能な優れもの━━を見るために視界の右端を見上げる。ここで少し表示の説明をしよう。



 前までは敵は赤い▽、敵意のないものには青い▽で表示されていた。しかしベル達の名前を知った後は▽の上に名前が表示されるようになった。しかも家を出る頃には三人とも▽が緑色に変化していた。これは仲間という事だろうか?


 色で区別できて名前まで表示出来るとは便利になったなぁ。




 これははじめてのクエストに出かける私と過保護ぎみな人達の話。



 そしてモンスターと遭遇しにくいという言葉はフラグだという事を痛感する出来事の後日談。




 主人公のライトちゃんは本人が思っているより痩せすぎています。ギリギリ健康を保っていますが、見た目が保護欲をかきたてます。

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