花の前
蒸し暑いと思っていた十月が、
急に涼しくなった日、
ぼくは、コスモスの花の前にいた。
風に揺れる花は、可憐な薄紅色で、
葉の黄緑が、それを引き立てていた。
苦しいけれど、それを乗り越えて、
人は成長するんだ。
そう言った人は、誰だったんだろう。
コスモスの花はそんなことも、
知っているんだろうか。
踏まれても、また上に伸びて、
ぼくの好きな花を、咲かせている。
この世界、正しいことは、
コスモスに集まっているようだ。
目の前の、コスモス、宇宙が、
ぼくを包んでくれる。