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空想日記  作者: 旭桜
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柱の天使

 神の住まう神殿を支える十二本の柱。そのすべてが生きたままの天使であるとだれが想像しただろうか、彼らはみな神に忠誠を誓い。そのために自身の身を捧げた。

 彼らは崇拝する神がいかなる不徳に陥ろうとも柱であることをやめなかった。三日三晩あらゆる神を集めた宴をしようとも、余興に巨人の決闘を行おうとも、ただ鑑賞のために人魚を海ごと切り取って来ようとも、彼らは誓ったのだから、かの日の主に。志高く、勇気と潔癖さを持ち、力に支配されなかった彼らの主に。

 神が堕落してから数千年がたったのち、神殿を悪魔の群衆が襲った。神の怠惰によって滅んだ数多くの町や国の元住人達が悪魔に堕ちた姿であった。神は力衰え、軍は腐敗し、彼らの力となった天使たちも堕天していた。彼に残ったのは一番最初の天使のみ、神は柱にすがった。今こそ汝らの力を見せる時だ。誓いに従い、私を助けよ。

 彼の叫びに、古い時代から柱として神の住む神殿を支えてきた天使たちは、なにも返さなかった。彼らは自らが愛した神の堕落に耐え切れず。目を塞ぎ耳をつぶし、ただ柱として勤めたのだ。彼らのそれは反抗ではなかったのだが、そんなことが堕落した神に通じるはずもない。

 神は迫りくる悪魔も気にせず、声高に天使を罵った。長い年月の間に感謝の気持ちも天使たちと過ごした日々も忘れてしまったのだろう。あまりにもひどい物言いであった。その場に居合わせた悪魔たちは、敵を目前にした状態であっても、彼のそのあまりに天使をないがしろにした物言いに嫌悪の気持ちを追い抱いた。そして、神は罵倒の最中このように吐いたらしい。

 貴様らの態度には呆れかえった。もういい、お前たちは初めから私の天使たちではなかったのだな、私が堕落するのをじっと待ち、最後の最後に今までの献身を取って返すような所業で私を裏切り、あざ笑うのだ。消え失せろ、この薄汚い悪魔め。

 その言葉が神の住まう神界に響き渡り。少しすると柱の天使たちが目を開き、神を見据え、こう口を開いたという。

 あなたが私たちの献身を裏切り、悪魔と呼ぶのなら、もはや容赦は致しません。あなたの言う通り私たちは悪魔となり、あなたをあざ笑いましょう。それで、今までのあなたの所業の一切を水に流しましょう。

 驚くべきことに天使たちは神に対して慈悲を見せたのだった。天使の信頼を裏切り、怠惰であり淫蕩にふけり暴飲暴食を行い、あらゆる欲望を抑えず民をないがしろにした神を、天使は許したのである。

 悪魔どもは天使のそのやさしさに感銘を受け、目覚めた天使に跪いたという。

 その後、神は排斥され、柱の天使たちは十二柱の慈悲深き神として、長い間、民に信仰されたという。

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