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異世界便利屋「茜」  作者: ひょっとこ
3/4

急襲

忙しくて投稿遅れました。申し訳ない・・・。

俺はおっさんが派手に暴れてくれたおかげで、無事城門の中に入ることが出来た。

おっさんの剣が重い。おおよそ3歳児が持つには重すぎるので早く渡してしまいたい。


おっさんは恐らく詰所の中だ。中で暴れているのか、さっきから悲鳴が聞こえる。通るだけなのにそんなボコボコにすることもないだろうに。


俺はこっそり覗いてみることにした。

中はかなり凄惨な光景だった。おっさんがボコしたのだろう衛兵が4人程、泡を吹いて気絶していた。

一番奥にはおっさんと、おっさんに怯えて尻もちついている太った衛兵、そして桃色の髪をした非常に綺麗な女性が縛られた状態で居た。


「す、すまん。許してくれ!ほ、ほら。女は返してやる!だから命だけは勘弁してくれ!」


情けなく命乞いをするデブ衛兵は女性を解放し、どこかに逃げて行ってしまった。

おっさんが女性を縛っている縄を解くと、途端に女性はおっさんに抱き着いた。

知り合いなのだろうか。怖かったのだろう。おっさんは優しく抱きしめ返していた。

恐らくさっきのデブ衛兵は、噂の人身売買をやっている地区長なのだろう。売られそうなのを放っておけず助けたといったところだろうか。まだ、いまいち状況が掴めない。


おっさんと女性が小さな声で話し合っているが、聞き取れない。

すると途端におっさんと女性がキスをした。え、何で?


どういうことだ?おっさんと女性はどういう関係だ?

夫婦、というには歳の差があり過ぎる気がする。明らかにおっさんは40歳を超えていそうだ。

対する女性は凄く綺麗で若々しい。十代といっても余裕で信じるだろう。実際、十代なのかもしれないが。


とはいえ、男女のキスシーンを他人が見すぎるのも良くない。

二人きりにして、一通り終わったのを見計らって声をかけよう。



―――――――――――――――――――――――――



「おっさん、剣落ちてたぞ。」


俺は女性と二人で手を繋ぎながら外に出てきたおっさんに声をかけた。


「ん?坊主、付いてきてたのか。

それとその剣、拾って持ってきてくれたのか。ありがとう、思い出の品なんだ、それ。」


おっさんは俺から剣を受け取って満足そうに腰に差した。


「あなた、この子は?」


「スラム街の子供だ。ついさっき、たまたまそこで知り合ってな。馬鹿な俺に大事なことを気づかせてくれた恩人だ。」


「ふーん。」


女性は俺の前に座り込み、俺の頭を優しく撫でてくれた。


「ありがとう。君が家の夫を焚きつけてくれたのね。君が居なかったら、もう私達は二度と出会えなかったかもしれない。本当にありがとう。」


俺の頭を撫でるその顔が、優しさに満ちていて見惚れてしまった。歳の差はあるかもしれないが、これでも中身は結構な歳なので大人の女性が好みではある。


というか、今大事なことを言った気がする。


「夫?」


「そうよ。ゲオルグは私の夫よ。」


・・・えええええぇぇぇーーーーーーー?

歳の差あり過ぎない!?

歳の差結婚にも限度があるでしょ。明らかに20歳は離れてるように見える。


「おい。セリカに見惚れるのは分かるが、何だ、その驚いた顔は?」


「いやだって、あの、セリカさんは何歳ですか?」


「あら、どうしたの?急に。私は19歳よ。」


「おっさんは?」


「22だ。」


「冗談はよくないでしょ。本当は?」


「22だ。」


「・・・いやいや、おっさんはもっと歳いってるでしょ、明らかに。ありえないって、22は。

セリカさんに聞けば本当の事すぐばれるのに。馬鹿だなー、おっさんは。セリカさん、おっさんの本当の歳はいくつですか。」


「おいコラ。」


「疑ってしまうのも分かるわ。彼って本当に老け顔だから。でも残念。彼は本当に22歳よ。」


・・・俺はしばらく固まって動けなかった。それほどおっさんは老け顔なのだ。

あまり、人のコンプレックスを弄るものでもない、そっとしておこう。


俺はその後、おっさんに握り拳で側頭部を挟まれ、ぐりぐりされた。この世のものとは思えないほど痛かった。

もう二度とおっさんの前で歳の話はしてはいけない、そう誓った。






もう日も落ち欠け、周りは閑散とし始めてきていた。


「おい。お前はこれからどうするんだ。」


おっさんは俺の事を心配して聞いてきてくれた。


「いや、特に当てはないよ。」


実際、どうするべきか迷う。スラム街を脱せたはいいが結局、行く当てが無い事には変わりがない。

このまま生きていくのは3歳児には無理だろう。


「そうか。とりあえず家に来ないか。飯ぐらいは食べさせてやるぞ。」


「マジで!いいの?」


「マジ?マジって何だ?」


「それ真面目にいってんの?って意味だよ。」


「喧嘩売ってんのか。」


「いだだだだっ!ごめん、ごめんなさい。」


おっさんは俺の頬を丸ごと掴む勢いでつねってきた。痛い。


「あなた、子供相手に怒らないの。」


「う、すまん。」


おっさんは素直に聞き入れ、離してくれた。奥さんには頭が上がらないようだ。セリカさんめっちゃ優しい。


「えっと、行くところもないから、今日だけでも泊めてくれると嬉しい。」


「全然いいわよ。部屋も一個余ってたし。そこに布団でも敷いてあげるわよ。」


「マジ!?ありがとう!」


こういう時は子供らしく喜ばんとね。中身はいい大人だけど。


「ええ、マジよ。」


すると、セリカさんは微笑みながら、覚えたてであろう言葉でお茶目に返してくれた。可愛い。

今日の寝床を確保できるのは最高だ。流石にこのままこんな治安の悪い所に放り出されたら碌な人生送れなさそうだ。


「じゃあ、日も暮れてきたしそろそろ家に向かいましょうか。」


「そうだな。」「そうだね。」


―――――――――――――――――――――――――


家路に向かう途中、と言っても俺の家ではないのだが。

俺は疑問が浮かんだ。ある程度、栄えているであろう通りを歩いているのだが、誰ともすれ違わないのだ。

あらゆる店、家が戸も扉も締め切って一切、顔を見せないのだ。

まだ日が暮れ始まった頃でここまで人を見ないのは異様な光景に思えた。


「なあ。おっさん。ここはいつもこんなに人がいないのか。ある程度栄えているように見えるんだけど

。」


「ああ、そのことか。お前にはさっきも話したが、これは心臓狩りのせいだよ。」


心臓狩り。さっきおっさんと話したシリアルキラーか。若い女性ばかり狙って殺しを働き、心臓をくり抜いていくめっちゃ危ない奴。思い出しただけでも吐き気がしてくる。

日本に居た頃も死体を見る機会は何度かあったが、あれほどグロいのはそうそう見なかった。

そいつの噂が出回っているから誰も外に出ないのか。


「でも、女性だけだから襲われるんじゃないか。男も一緒にいたら襲い辛いんじゃ。」


「それがな。心臓狩りは恐ろしいほど腕が良くて、目撃者は老若男女問わず、皆殺しにしていくんだよ。

おかげで暗くなってきたら誰も通りを歩かなくなった。相当腕に自信があるやつ以外はな。」


「恐ろしいな。おっさんは?」


「俺か?俺はこう見えても元金級冒険者だ。変態殺人鬼に何ぞ遅れはとらん。

いざとなったらセリカだけでも逃がすからな。」


おっさんは恰好つけてセリカさん言ったがセリカさんは納得いかないようだった。


「駄目よ。あなたが死んだら頑張って探した意味がなくなるじゃない。

死んでも逃がすなんて私が許さないから。」


「何言ってんだ。俺はお前だけには生きていてほしいんだよ。」


おっさんがそういうとセリカさんは声を荒げた。


「まだ分からないの!?そう思ってるのはあなただけじゃないの。私だってあなただけには生きていて欲しいの!また、一緒にご飯を食べて、お出かけして、またあなたが冒険者として楽しんでいる姿が見たいの。」


最後の方は切なそうに言った。本気でおっさんの事が好きなんだな。


「セリカ・・・。」


「また離れ離れなんて・・・嫌よ。」


セリカさんはそう言っておっさんの首に手を回した。

おいおい、人気ないって言ってもめっちゃ大通りのど真ん中なんですけど!?一応、純粋(っぽく見せてるつもり)な少年もいるんですけど!?


「あ・・すまん。」

「あ・・ごめんね。」


ここがどこかと俺の存在の事を思い出したようだ。

いちゃいちゃするのは二人だけの時にして欲しい。



―――――――――――――――――――――――――

(おっさん視点です)



「ちっ、まずいな。本気で暗くなってきやがった。」


もう月明かりと街の明かりのみとなってしまった。心臓狩りが得意としてるのは夜だ。今までの犯行は全て夜に起きている。早めに帰らないとまずい。


そう言えばこんな夜に、独りで我が子は大丈夫なのか気になった。


「ギルは大丈夫なのか。」


「ご飯は作り置きを食べておくように言ってあるわ。家に誰が来ても居留守するように言ってあるし。もう何度も同じことしてるから大丈夫よ。」


「そうだったか。すまんかった。」


「謝らないでよ。私も悪かったから。」


明らかに今回の事件の発端は俺なのに、俺が悲しまないようにと気を遣ってくれる優しさが素直に嬉しかった。


セリカ、それと坊主っぽくない坊主と他愛もない話をしながら家路に向かっていた。その時だった。

話しながら微笑んでいたセリカの顔が急に青ざめた。


「っ危ない!!」


俺はセリカに突き飛ばされた。何だ、何が起こったんだ!?

すると次の瞬間、暗闇から声が聞こえた。


「おやおや、男の方を先に殺せれば楽だったんですけどねぇ。まさか気づくとは思いませんでしたよ。」


人を小馬鹿にしたような腹が立つ喋り方をする男の声だった。


「あなたはその女性に感謝した方がいい。無くなるはずの命を拾ってくれた恩人なのだから。」


俺はその男の話を聞き、咄嗟にセリカの方を見た。


「セリカッッ!!」


セリカの方を見ると、セリカの肩口から体を縦斜めに貫くように、どす黒く馬鹿でかい剣が突き刺さっていた。




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