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「感情」がない俺と、「姿」がない君  作者: へーがたくちくかん
2/2

二通りの選択肢

「幽霊?」

「うん。信じられないでしょ?」

そういうと、少女はその場でくるくると回って見せる。なるほど、確かに浮いているのか。

というかそもそも足が見えない。

「いや、まあ……信じてはいなかったけどさ。見ちゃったからな」

「話変わるけどさ」

もう一周して。

「ちょっと笑ってみて」

口を、弓なりに歪める。

「やっぱりかあ……。目が死んじゃってる」

彼女はがっくりと肩を落とす。

「本当に、感情がないんだね君。……にしても困ったなあ……明日以降私が見える可能性は100パーセントじゃないし。てか、感情って教える物じゃないよね……」

一通り独り言してから、彼女は言う。

「ちょっと待ってて」

「? わ、わかった」

何をするんだろうか。彼女は森の中に入っていった。


三十分経過。まだ彼女はかえって来ていない。

「遅いなあ……」

がさ、と音がした。

「ん?」

「だーかーらー! あんた長生きしてるんじゃん! この子に――」

「長生きしてるからって、何でもできると思うなぁ!」

彼女と、もう一人、何かがいた。

「君か? 感情がないとかいうのは」

「はい」

「まあ、この流れからしてわかるだろうが、俺も、『幽霊』だ。『幽霊』になってから、まあ、ざっと200年ってとこか」

「200年?」

さすがに長い。てか、人間よりも長生きなのか(生きているというかは別として)。

「とはいえ、感情が、ない……か。まあ、おそらく俺たちが見えているのは、あまりにも君が『人間』離れしているからだろう」

「はあ」

まあ、そうなのかもしれない。

「一応、二つの選択肢があるの」

少女が、今度は俺に話しかける。

「『感情』を身につけ、『人間』として生活するのか。それとも――私たちと、同じように『幽霊』に、なるか。そこは君の自由」

幽霊になれるのか。ああいやそうじゃなくて。

「感情って身につけるものなのか?」

「……多分、生まれた時から持ってるものだが――最初は、『うれしい』と『悲しい』くらいで、成長するにつれて増えていく。まあ、だからこそ、感情は教えられるんじゃないか、ってことだ」

なるほど。わかったような、わからなかったような。

「で、君はどうするんだ」

じっと彼に見つめられる。

俺は、どうするんだ? 感情を身につけて、それだけでいいのか?

幽霊になっても、彼女らを見る限り、感情を身につけることはできるだろう。

どうする?

俺が、最初に求めたのは、『感情』。だが、その先になにがあるのか。

そこまでは考えてなかった。

多分、ここが俺の未来を決めるターニングポイント。


そして俺はすうと、息を吸って。

「『幽霊』には、なりません。俺は、『人間』として生きます」

彼は、瞬きすらしなかった。

「ま、そーだろうな。っても、お前。これからどうするんだ?」

「どうする、とは?」

「あーその、なんて言うかな……俺の力が強大すぎて、俺が『視えた』やつはここから出られなくなるんだ。俺が、『視えている』限りは」

なんだそりゃ。

「まあ、その、なんだ。少し頑張ってくれや。そう簡単には死なせねえからな」

そう彼はいい、森の奥へと進む。

「ついてきて」

俺は彼らの後ろをついて歩いて行った。

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