目覚めた歴史
なろう小説の書き方が迷子なう。
歴史の授業をした。
歴史の授業は大好きで、特に五限目の時間帯が1番良い。 ポカポカと温かい日の光をあびて大好きな歴史を受ける。
私は特に “仮面” が関わっているとされている歴史が好きで、独自に調べたりしている。
高校に入る時も数少ない歴史を専門的に習える場所にした。
高校に入るために勉強に勉強を重ねて、やっと入れた。 この高校は私の理想だった。
週に少なくとも4回。
多い時は週に7回もある。
もちろん、他の教科の勉強もあるがなにより社会。 歴史は最優先。
中学校で習う歴史だけではもう足りない。
そんな子達がこの高校に入っている事だろう。
「パパ〜、美術館行ってくる〜。」
「あいよ。 あんまり遅くなるなよ? 閉館時間の2時間前には帰るように。」
はーい、と適当に返事をしておいた。
サイフの中に入館料ピッタリ金が入っていることをチェックしてからカバンの中にサイフをしまう。 自転車のチェーンを外し、他人の迷惑にならないようにお行儀よくこぐ。
まばたきをするたびに仮面の姿が見える。
初めて美術館で見た。
人混みの中でぶあついガラスの中、赤く高価そうなクッションの上で佇む仮面。
見るだけで魂を取られてしまいそうなほど美しかった。
世紀の芸術家『ハングリミオ・リッペン』。
彼の作品の中でも、あの仮面は一部の層に大人気だ。
とある話ではあの仮面は付ける者を選ぶらしい。
仮面は誰かに付けられていないと落ち着かず、人々に呪いをかけてでも誰かに付けてもらいたいのだ。
その癖、面食いで好みの顔しか付けられようとしない。
しかも、気に入った顔から外されると怒りをあらわにして主人の目を奪ってしまう。
恐ろしい。
こんな話があるくらいだ、本来なら壊してしまうぐらいが丁度いいのかもしれない。
でも、持ち主が不幸になるぐらいの逸話を持つものの方が人々に好まれるのかもしれない。
首もあった大きく赤い宝石が良い例になるだろう。 女王から有名な女優へ。
人々の手にわたる度に持ち主が死亡している。
それでも欲しいのだ。
人と言う存在は、時に利益が無くとも感情論にふり回されてしまう。
私もそうだ。
何時間、何日見続けたって今ガラスをへだてる向こう側にある仮面が欲しい。
「お前につけて欲しい。」
そう、ねだられている気がする。
「もうすぐ夜だ、さあ、私を付けてごらん。 君もそれを望んでいるんだろう?」
そう、語られているような気がする。
なんて耳ざわりの良い甘美な声なんだろ。
私は人生で未だかつてこんな声を聞いたことはない。 絶対に。
「私だ。 私の声だよ。」
仮面は続ける。
「君の疑問を答えたんだ。 私の質問にも答えておくれ。」
私は思わず口を開き、声は発しようとするが声は出ない。 というより、出せなかった。
ここで1つ今の私の心境を分かりやすく言うと『音楽の実技テスト中、凄く歌が上手な子のあとに自分の順番が来る。』そんな所だ。
自分より格上の存在のあとに喋るのを本能が拒んでいる。
仮面はそんな心境を知っているせいか、それとも口をあんぐりと開けている私が滑稽なのかは知らないが、実に愉快そうに大声で笑う。
「そうかそうか。 声が出ないか、それなら“YES”と捉えるよ、良いかい?」
その質問には縦に頷く。
良かった、このぐらいは出来る。
今この胸の中は尊敬の念と切望の念が入り交じって息苦しい。
質問に答えた瞬間、ガラスにヒビが入る。
近くに居た警備員はそれに気づくと無表情のままガラスケースの側から離れた。
その顔は安堵の表情だった。
まるで肩の重い荷物が下がったような。
そんな。 そんな。
体が勝手に動く。
「おはよう、私。」
言葉を発したのは私。
高ぶった心が、徐々に落ち着いてくる。
だが、はしっこで何かがくすぶっている。
くすぶっているものが大きく広がる。
なんだろう、この感覚。
これじゃない。
これは一時期の高ぶりなんて、生優しいものじゃない。
頭の中で延々と生ぬるい熱が広がり、支配する。
だが違う。
少しこすってしまえば発火してしまうような、
手が、仮面に触れる。
ヒンヤリとしたこの仮面特有の冷たさ。
夢のような時間だ。
ガラスはもはや存在しない。
周りのざわめきも聞こえない。
いや、きっとこれは夢だ。
夢でなければなんになる。
仮面を見て懐かしいだなんて。
まさしく今。
かぶろうとしている今。
───今。
時間は7時。
夜をつげる鐘が鳴る。
人が夢を見る時間は終わった。
影という影から化け物が出てくる。
現在、魔物が世界をしてから124年。
そして30年ぶりにおめがねになった少女に乗りうつった仮面は今夢を見始めた。
「なあ、私が夢から覚めて何年たった?」
声をかけられたゴブリンは跪き、仮面をまっすぐに見つめ、答える。
「ちょうど30年目の夜になります。」
「そうか、それなら良かった。 夜に夢を見なければ目覚めが悪いのでね。」
ふむ。 と少女は考える。
「私の下僕は?」
「禁忌の芸術様のお屋敷です。」
「よろしい。 さがれ。」
少女がそう声をかけるとゴブリンはすっと立ち上がり、元美術館だった建物から出て行った。
もうその場には誰もいない。
1人、立ち続ける。
ピンと伸ばされた姿は美しい。
仮面から覗く目は白銀に輝き、すさんだブロンドの髪はまっすぐに伸び背中にまてとどいてしまう。 ズボンをはいているような男姿は女のような見た目と反してよりいっそう美しい。
絶壁に例えられそうな胸も、また良い部分の一部だ。
「まずは家に戻ろう。 この姿で何をするかを考えるのはそらからだ。」
少女は急ぎ足で歩き、楽しそうにそう呟いた。
疲れたび...。