4/5
零-Ⅳ
「…分かりました」
「…大丈夫。必ず戻って来るから」
ふわりと微笑んだ想子はファイルを片付けリビングから出る。と廊下で足を止めると、もう一度陽向を呼びかけた。
「そうだ、陽向。万が一よ、私が5日経っても帰って来なかったら、私の部屋に置いてある手紙を開けてみてね」
「…手紙?」
「そう。…私があなたに伝えたい事、全てが書かれているわ」
最期の笑みを、陽向は見逃さなかった。
黒く、淡い、死の情景。浮かぶ、想子の屍とそれを見下ろす空っぽの自分。
何故無理にでもついて行こうとしなかったのか。
運命を変えようと、動かなかったのか。
自室に戻る想子を引き止めもせず、何も言えず、ただ陽向はその背を見送る事しか出来なかった。
そして想子が巫部島に向かってから5日が経った。
想子は帰って来なかった。