第32話「崩れる心」
「どうやら、穏やかじゃなさそうだね。私にできることもなさそうだ」
ジャンのお姉さんは申し訳なさそうにした。
マオは精一杯お礼を伝える。話を聞いてくれる人がいたことで冷静になれたのだから。
「オレ、ネルガちゃんを捜します。そして話を訊きます」
「見つかるといいね。微力ながら応援しているよ」
「はい。オレの話を信じてくれてありがとう!」
マオはレストランを出て走り出した。
※ ※ ※
「駄目です! わたしにはできません!」
マルギアを歩くネルガ。必死に耳を押さえながら声を遠ざけようとしている。
そんなネルガのことなどお構いなしに語りかけている神様。その声は優しさを含みながらも鋭いものである。
「わたしが人界に来たのは、カムアちゃんの無事を確かめるためです! わたしを通してカムアちゃんを殺させるためじゃないです!」
うずくまるネルガに対し、「人界と神界のためだ!」と言い放つ神様。次第に声色から優しさが消えていく。言葉のひとつひとつを棘にして突き刺す。
「か、神様は……カムアちゃんのこと……好きじゃないです?」
苦しみながら神様に問いかけるネルガの精神は追い込まれていた。大好きな神様が、大好きなカムアを殺そうとしている事実を受け入れたくなかった。
しかし、そんなネルガの想いも届いてはいなかった。「堕天使に興味などない。その存在は悪だ!」と言い放ったのだ。
「そんなの……酷いです」
神様の言葉で心が崩れていく。神様はカムアを殺すために自分を利用した――大好きが大嫌いに変わった瞬間、ネルガの身体にオーラが纏う。
「世のためだ。許せ」
ネルガを支配した神様の視界に、ネルガを捜していたマオとカムアが映る。
「ネルガちゃん!」
「待って! なんだか様子が変だわ」
マルギア・ベルの前で再会した三人。それは最悪の再会でもあった。




