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ほんわか天使とツンデレ堕天使の人界散策  作者: 碧衣玄
第一章 天使と堕天使
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第21話「人界の天使」

 辺り一面に草原が広がる場所に到着したマオは「成功!」と頷き、ネルガとカムアは息を飲む。吹く風は温かく、地面からは草の匂いを感じる。

 そんな長閑な場所に建つ家々。そのうちの、赤い三角屋根がアリサの住む家であった。タタタッと玄関まで走りノックをすると、赤ちゃんを抱えた女性が出てきた。


「マオマオ!?」


「昨日の今日で驚いた?」


「もしかして姉貴に追い出された?」


「違うよ。ちょっと配達を頼まれて」


「そうなの。ま、立ち話もなんだ。ジュースでも飲んでいき」


 マオが通されたリビングには、三人がけのソファーとテーブルが置かれており、隣の部屋にはベビーベッドが置かれていた。が、それよりもマオが目を惹いたのは――。


「――昨日の今日で驚いた。おもちゃがいっぱいだよ」


「マオマオが出発してすぐに。積み木やらおままごとセットやら――パズルに折り紙……まだ生後一ヶ月なのに。早速の親バカ始まっちゃって」


「英才教育!?」


「勉強なんて基本さえできればいい。けど、子どもの将来を狭めることはしたくない」


「しっかりしてるよ、アリサさん」


「言ってくれちゃって! マオマオのくせに」


「きゃは!」


「この子も笑ってる。うかうかしちゃってると、あっちゅう間にこの子に追い抜かれちまうね、マオマオ」


「あはは」


 アリサと赤ちゃんを交互に見て同時に見て――自分と母親に重ねるマオ。幸せな画を羨ましく思いつつ、アリサが出してくれたジュースを飲む。


「可愛いです~! 見とれちゃいます~!」


「ネルガちゃんは、赤ちゃん見るの初めて?」


「わたしは一人っ子ですけど、赤ちゃんの面倒見たことあるです」


「アタシもあるわ」


「お前には訊いてないよ」


「うっさい。言っただけでしょう」


「きゃは! きゃは!」


「どうしたん? マオマオがおかしいのか」


 ソファーに座るマオを見て赤ちゃんが笑っているのだが、目線が少しずれている。


「赤ちゃんは色々と見えてる(・・・・)言うから。きっと面白いのが見えてるのだろう」


「きゃは! きゃは!」


 赤ちゃんが腕を伸ばした先にはネルガが立っていた。


「わたしが……見えるです?」


「きゃは!!」


「かーわーいーですー!!」


 赤ちゃんの笑顔に萌え死にそうなネルガ。頬に両手を当てて身体をくねらせる。

 そうこうしているうちに赤ちゃんの興味はカムアへと移る。赤ちゃんが腕を伸ばした方にアリサが向かうと突然、赤ちゃんが力み始めた。


「アタシの前で何なの」


「うー! うー!」


「な、何なの」


「うー! う~! きゃは~!」


 力んでいた赤ちゃんが再び笑い出す。それはそれは幸せそうに。


「おや、この臭いは。気持ち悪くて泣き出す前に取り替えるって」


 アリサは赤ちゃんをベビーベッドに寝かせると、慣れた手付きでオムツを取り替えていく。


「きゃは!」


「新しいオムツは気持ちいいでしゅかー?」


「きゃは!!」


 笑顔でおでこを突き合わせる親子の光景は、見ているだけで癒されるもの。それはマオだけでなく、ネルガとカムアも同じであった。


「かーわーいーですー!!」


「癒されるけど納得できないわね。どうしてアタシの前で大きいのを」


「堕天使だからじゃないか?」


「な、納得できないわね! ……で、できないけど――」


 ムスッと赤ちゃんを見るカムアだが、自然とどうでもよくなっていく。


「――許してあげるわっ!」


 神界の天使たちも、人界の天使には敵わないのであった。

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