第15話「お風呂」
マオは服を脱いで浴室へ。心地いい温度のお湯を身体に浴びながら「フゥー」と一息つく。顔を洗いながら今日一日を振り返る。
「今日は疲れたよ」
五年振りのマルギア。堕天使カムアとの再会とキスに憑依。天使ネルガとの出会い。十歳の少年が疲れるのは無理もない。
マオは髪を洗ってスッキリし、身体を洗うべくスポンジに手を伸ばす。が、なんだか気配を感じて振り向いた。
「きゃあああ!?」
「うわあああ!?」
振り向けばやつがいた――顔を真っ赤にしているカムアが立っていた。振り向いたマオに反応して背を向ける。
マオはとっさに身体を丸める。大事なところを手で隠して慌てている。
「何をしてるんだよ!?」
「好きでいるわけじゃないって! オマエが浴室に向かった途端、アタシの身体も浴室に引っ張られたの!」
「何でだよ!」
「こっちが訊きたいっての!」
カムアは恥ずかしさで身体を震わせる。神界にいたころにはなかった羞恥心が芽生えているため、異性の裸にも敏感になっている。
「そのままでいてよ! オレが『いいよ』って言うまで!」
恥ずかしいのはマオだって同じだ。両親が亡くなってからは、一人でお風呂に入るのが当たり前になっていた。それが今になって、同い年の少女と一緒に入っている。恥ずかしがるのは無理もない。
「……まだなの?」
「まだだよ。カラスの行水じゃないんだ」
シャワーで泡を洗い流して浴槽に浸かり『いいよ』とカムアに告げた。
「アタシがいるのに冷静ね」
「これでも動揺してるよ。あー、心臓に悪いよ」
「それはアタシの台詞。アタシは服を着てるけど、オマエは裸なんだから」
「当たり前だろう。お風呂に入ってるんだよ」
「そりゃそうだけどね」
「もしかしてオレ、お前と離れられないのかな」
「えっ!? じょ、冗談よね?」
「オレが浴室に向かった途端、引き寄せられたんだろう? そうとしか思えないよ」
「じょ、冗談じゃないっての! オマエがお風呂に入るたびにアタシも一緒なわけ!?」
「それはオレの台詞だよ! お前が一緒じゃ落ち着いて入れない」
二人はガクッと肩を落とす。マオの体温は上昇しているが、果たしてそれはお風呂のせいなのか? それとも恥ずかしさのせいなのか?
「逆上せてきたよ――」
「は、早く出なさい!」
再びマオに背中を向けるカムア。彼女の背中は、ほんのりと赤く染まっていた。




